シャイニング(1980年・アメリカ) バレあり感想
原作クラッシャーとして定評のあるスタンリー・キューブリックの名作映画です!
『シャイニング』(原題:The Shining)
キューブリック監督映画の予告編って、やっぱりキューブリックが編集に口出ししてるんですかね?
完璧主義者のキューブリックの事ですから、自分の作品が切り貼りされ直すのなら自分でやってやるぜ的な感じになりそうな気がします。
あと、いつもの映画記事は一応未視聴の人に対しても意識した書き方をしている(出来ているかどうかはともかく)のですが、
今回は視聴済前提な感じで書いています。
笑えるくらい面白い映画です。
■あらすじ
教師を辞め、小説家を目指すジャック・トランスとその家族。
執筆に没頭できる環境を求め、ジャックはコロラド州の山奥にある「展望ホテル」の冬季休業中の管理人という仕事を引き受ける。
支配人のアルマンから不吉な話を聞かされつつも、ジャックは無事に採用される。
そして、展望ホテルでの生活が始まった。
だが、ホテルで過ごすうちに、ジャックに異変が起こり始める。
この映画のあらすじって、書き切ろうとすると全部書いちゃいそうになりますね。
そのくらい凝縮されているというか導入の上手さが素晴らしい事になってるって事ですが。
■登場人物
・ジャック・トランス
本作の主人公。仕事を辞めて小説家を目指している。
展望ホテルの管理人の仕事を引き受けノリノリでホテル生活を始めるものの、次第に焦燥感や孤独感、疑心暗鬼で心が埋め尽くされおかしくなってしまう。
おかしくなってしまった結果ゴーストたちと一緒になってノリノリで家族を殺そうとする悲しいピエロ。
下手なホラー映画なら最後まで生きてた。
・ウェンディ・トランス
ジャックの妻。
マジでノーマルな唯一のメインキャラ。
下手なホラー映画なら真っ先に死んでそう。奥さん。
・ダニー・トランス
ジャックとウェンディの息子。
特殊能力「シャイニング」を使う事で未来視や視界ジャックじみた事が出来る。
また年齢に対して非常に聡明で判断力が高い。
そしてトニーという見えない存在とお友達。
俺つえー系の主人公か何かか。
・ハロラン
ダニー同様シャイニングを使う事が出来る、展望ホテルの料理長。
作中で最も頑張った人なのに人気が無い。
手の込んだ自殺とか言うんじゃねえ。
・アルマン
展望ホテルの支配人。
下手な海外ドラマなら黒幕やってそう。
・ゴーストの皆さん
「「「僕たちただずっとパーティしていたいだけなんです!!」」」
■感想
ギャグ映画とホラー映画は表裏一体とも紙一重とも言われます。
この間のバランスっていうのは意外と難しいもので、本格的なホラームービーを目指そうとして結果ギャグ映画になってしまうなんて事が多々あるようです。
例えば『ファイナル・デスティネーション』シリーズ。
こちらは所謂スプラッタホラーですが、この映画で恐怖の根幹となるべき登場人物が死ぬまでの過程がひたすらにピタゴラスイッチやドミノのそれで、一躍バカ映画として名を馳せる事に。
第2作『デッドコースター』以降ではそっちの、どんな方法で人が死ぬのかによりフォーカスを当ててバカ映画として正当進化していきました。
「しむらー!後ろ後ろ!」を地で行って人が死ぬ感覚です。
ホラーなんですけどギャグ映画。
また、日本でもホラーとギャグの親和性の高さをフルに発揮した『貞子vs伽椰子』があります。
あれはホラーとギャグの塩梅がとても良かったと思っていて。
なにせ、ジャパホラ大嫌いクソ死ね!と思っている僕が最後まで楽しんで観れましたからね。
なにこのプロレス感溢れるポスター。
逆に言えば、このホラーとギャグのバランスを意図的に壊す事で訳のわからない感情を呼び起こさせるような映画も作れるって事になるのかなって思います。
僕にとってのその「訳の分からない映画」が『シャイニング』でした。
これシュールコメディだろって言っても正直全力で否定しきれる人は居ないと思うんですね。
ホラー映画として見てみると(ホラー映画なんですけどね)、あまりにも緩急が絶妙すぎて、怖いのに笑っちゃうみたいな意味不明な感情に苛まされます。
観ていて訳わかんなくなってくるというか、観てるときは怖い感覚があるのに思い返すと面白いなって感じる部分がかなりあるんですよ個人的に。
本作に限らず、キューブリックの映画って何回も観返したくなる不思議な魅力があるんですけど、
それってこういう、思い返した時の印象の違いというか全く別の感覚が味わえるような作品になってるからこそなのかもしれません。
キューブリックは僕はかなり好きなんです。
あらゆる表現を駆使して観ている人に刺激を与え続けてくれますし。
火曜日(TUESDAY)という単語だけで人を驚かせられる監督なんてキューブリックくらい。
こんなんしょっちゅう話題やネタにされてますけどね。
何度観てもこの火曜日が出た瞬間の音楽の盛り上がりと静寂の緩急やらが上手すぎます。
こういう演出の上手さは本当に舌を巻くというか、すげえなって思います。
演出で言えば、今作はカメラワークも凄い良いですよね。
あと、名前忘れましたけど、人物をカメラのブレなく追っていく撮影方法とかもふんだんに使われてますし。
カメラワークがとにかく良い。それが言いたかっただけです。
むしろ近年はこの点を変な拘りでダメにしてしまう映画が多いので、なおさらそう思う訳です。
残念なことに、近年のホラー映画やパニック映画なんかは本当にカメラワークが酷いと思います。酷いよ。
いくらブレアウィッチやクローバーフィールドが当たったからって、皆が皆同じ事やってどうすんだよ。
手ぶれ全開のカメラワークはアクション映画なんかでも多用される様になりましたが、それ見せたいもの見せられないどころか、下手したらチープさまで付加する事になるんだぞと。
上手く使えば大変効果的な手法なのは間違いないんですけどね。
それこそブレアウィッチは色んな意味であの手ぶれ糞カメラワークがメインな映画ですし。
そう言う点で、キューブリックの映画はしっかり考えられていると思います。
必要なところに必要な手法を用いてしっかり見せてくれるっていう。
それでいて、キューブリックは更に個性も発揮させるのが凄いです。
人物を正面中心にとらえて、その視線の先と人物を交互に映していく手法とか。
あれもなにか名前が付いているんですかね。
そもそも、小道具からセットから何から何まで美術的というかビジュアルが印象的なもので埋め尽くされているのが好きです。
こんなトイレ、逆に気持ちよく出せないよ……。
しかし、秋葉原の某施設にてこれに酷似したトイレに遭遇し、意外とすんなり用を足せました。
隙あらば自分を語っていけ。
ただ、一方でこれは要らないだろというか、悪い意味で個性的なシーンもシャイニングにはあります。
竿にむしゃぶりつく犬のシーン。
ウェンディ「えぇ…?」
僕「えぇ……?」
要るのかこのシーン……。
噂によると再編集版(本編時間がおよそ120分くらいにまとめられている)にもこのシーンあるらしいんですが、
要るのかよこのシーン……!!
アレですかね?
原作にこういうシーンがあったりするんでしょうか……。
にしても唐突過ぎるし、終盤の終盤でこんなの出てきたら訳わかんなくなるに決まってるじゃないですか!!!!!!
この映画、終盤はギャグとホラーのバランスを本当に本格的に本気で壊しに来てますよね。
この死に顔を一番感情が訳わかんなくなったあの瞬間に観た時の事を思い出してください。
後から見てこそ笑えるというかシュール極まりないですけど、
これ実際初見で観てた時突然凍り付いたジャックのこの場面が出てきて僕はもう本当に真顔になりました。
で、このシーンからの直通エンドロール。
これなんですけどね。
1920年代の写真にジャックにそっくりな支配人の姿がうつっているよっていうこれ。
作中のジャックの発言とかから、彼の前世(つまり写真の人をさしてそう言っている訳です)もこのホテルの支配人で~みたいな考え方をよく聞きます。
僕は個人的には、単に「2度ある事は3度ある」っていう事を揶揄ってるだけだと思っています。
展望ホテルには長い月日の間様々な事が起きたはずですし作中そう言うセリフもあります。
この写真の男性がジャックに似ているというのは映画表現的で、ある種のメタファーとして上記のことわざを現したに過ぎないんじゃないかと思ってます。
なんにせよ、この映画観終わった直後が多分一番楽しいと思います。
そして、初見視聴後の楽しさを何度も味わえる不思議な映画です。
時にはホラー映画として、或いはギャグ映画としても観られる、二度おいしい一本って感じです。
感想記事としては微妙極まりない内容ですが、この映画についてマジで書くと5万字くらい普通に超えそうなのでやめときます。
■まとめ
原作者スティーブン・キング本人監修によるシャイニングも観てみたいのですが、聞くところによると全くキャラクターやシチュエーションが違うみたいなんですよね。
キューブリックの原作クラッシュは、あくまで映画的な整合性を考えての事であるっていうのはあるんでしょうけど、そんな話聞いたらそっちも観てみて比較したくなっちゃいますよ。
が、兎に角現状僕の中でシャイニングと言ったらこの作品ですし、たぶんスティーブン・キング版を観てもこっちを気に入ったままだと思います。
そのくらいのめり込める映画なんです。
こんなところです。
この映画は、下記の動画配信サービスで視聴する事が出来ます。
ではまた。
このシーンをジャケットとかポスターに選択するって、やっぱり頭おかしいんでないか(良い意味で)