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ダンケルク(2017年・イギリス×フランス×オランダ×アメリカ) バレあり感想 ノーラン監督の作品って音に拘りがある気がする

ダンケルクの大撤退(ダイナモ作戦)をモチーフとした映画です。

史実を元にしたフィクションってやつです。

 

ただフィクションと言っても、必要以上に脚色されている事もないため、

概要としてどんな事が行われた作戦なのかを知るには十分な内容だと思いました。

そんな詳細に色々描こうとしたら映画の尺じゃまとまりませんしね。

 

そういう、映画的な纏めの意味もあっての結果フィクションとして史実を再構成し、

キャラクターを配置したって事だと思います。

 

 

ダンケルク』(原題:Dunkirk

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■背景とあらすじ

・時期的には第二次世界大戦序盤の出来事

第二次世界大戦がはじまるキッカケとなったのが、ドイツによる1939年のポーランド侵攻です。

これを機に、ポーランドの同盟国であったイギリスとフランスがドイツに宣戦布告しWWⅡは幕を開けます。

 

ドイツは次々にヨーロッパ諸国に侵攻し連戦を重ね、1940年、遂にフランスに侵攻を開始します。

ドイツがフランスに侵攻するには、マジノ線を超えるか、フランス東部のアルデンヌの森を超える必要があります。

 

フランスのマジノ線は、当時は絶対攻略不可と考えられていたほど頑強な要塞線でした。

また、アルデンヌの森はそれ自体が天然の要害であり、大規模な兵器の運搬など不可能であると考えられていました。 

 

ところが、ドイツが有する三号戦車を初めとした機甲部隊は圧倒的な走破能力でこのアルデンヌの森をあっさりと突破してしまいます。

 

そしてドイツ機甲師団は、戦車と航空戦力による一極集中投入で前線を次々と突破していき、遂にフランス・イギリス連合軍をダンケルクの海岸にまで追い詰めます。

 

つまり本作はWWⅡ序盤の、ドイツによるヨーロッパ大攻勢期の出来事を描いた作品になります。

 

・あらすじ

 

ダンケルクの海岸にはイギリスとフランスの兵士達が、脱出の為に集まっていた。

イギリス、フランスの将兵40万人をこの海岸から無事に脱出させるための一大撤退作戦、ダイナモ作戦がまさにその幕を開けようとしていた。

 

脱出支援の為に病院船が停泊し、怪我人が次々と乗船させられた。

ところが、空高くからサイレンのような音を響かせながら、航空機が次第に海岸に向か・って降下してくる。

イギリス空軍の防衛線を掻い潜ったドイツ軍の急降下爆撃機、スツーカが海岸へ攻撃を開始した。

 

■感想

・撤退戦ならではの恐怖を描いている

 

この映画、戦争映画ですが交戦は航空戦以外ありません。

これは本作が撤退作戦を描いているからなのですが、

それ故に戦争映画のそれとはまた少し違った恐怖演出がなされているのが特徴的だと思いました。

 

そもそもこの『ダンケルク』で描かれたダイナモ作戦というのは、民間船舶などを徴用して将兵の救出を行う作戦でした。

こうなった背景には、イギリスが本土決戦に向けて兵力を温存したという点があります。

 

 

故に作中で描かれる内容も、常に脱出にフォーカスが当たっています。

 

そして、「脱出できたね、これでもう安心!」とは当然なりません。

 

例えば、無事に沖に停泊していた駆逐艦に乗り込み、ようやく脱出できたと思って一息ついていたら、

ドイツのスツーカによって爆撃を受け駆逐艦ごと撃沈されてしまったり。

 

イギリスとフランスの将兵はもう逃げる事しかできないにも関わらず、

その逃げた先でもドイツの攻撃にあう訳です。

死ぬ危険性が常にあるという事を意識させる描写がかなり多かったと思います。

 

そういう、ある種のサバイバル的な要素が強いからか、イギリス・フランス連合軍の兵士達の死に様が結構ストレートに描かれていてこれが中々怖いです。

攻撃を受けたらもうなすすべもなく死ぬしかないみたいな。

 

 

 

・浜辺より沖合での死の描写が圧倒的に多い

 

僕この映画の予告を観ていた段階では、

浜辺に集められた兵士達を容赦なくスツーカが爆撃していって、そこからなんとか逃げ延びる、

みたいな部分がフォーカスされるのかと思ってました。

 

でも実際に浜辺への攻撃と死の描写は殆どありません。

またその浜辺のシーンの演出も、

どちらかというと爆撃そのものの威力と恐ろしさを観客に見せるとか、どういうものなのか認識させるための物って感じがしました。

 

ちなみに史実でも、この砂浜への急降下爆撃はあまり効果は無かったとされています。

 

 

逆に、海での描写はマジで容赦なさすぎ。

 

爆撃を受けて沈没する駆逐艦の中で艦から脱出する事も出来ずに、

溺れながら艦と運命を共にすることになってしまう兵士達の描写とか。

 

溢れ出した重油に塗れ、燃えながら海を漂う兵士達とか。

 

直接的なグロ描写というものはほぼ出てこないですが、

トラウマレベルで精神的にくる描写が多いです。

 

 

 

・ドイツ兵が一人も出てこない

 

 

 

この映画、マジでただの一人もドイツ兵は出てきません。

 

もちろんドイツの兵器は出てくるんですが、その中にいるはずの兵士達の描写は一切ありません。

イギリスとフランスの兵士達からしてみれば、ドイツの攻撃から丸腰で逃げるしかない状況な訳ですが。

その攻撃をしかける側の描写が無いっていうのは、シンプルに怖いですよ。

 

「相手も人間なんだ」的甘えを否応にも捨てざるをえません。

 

こういう表現するのはちょっと違うかもしれませんが、

ダイナモ作戦におけるイギリスとフランスの撤退待ちの兵士達って、いうなれば狩りの標的みたいなもんじゃないですか。

 

狩られる側の視点から描かれるこの映画で、ハンターの視点を一切見せない事によって、より狩られる側の恐怖感を表現しているのかもしれません。

このドイツ兵側の視点を出さないという演出は僕はかなり好きでした。

 

・BGMとSE

 

このあたりへの拘りが凄い感じられました。

スツーカと言えば俗に「ジェリコのラッパ」とも呼ばれるあのサイレン音が有名ですが、

このスツーカのサイレンが鳴る瞬間、必ずBGMが同期しているのが面白かったです。

 

逆にサイレンだけ聞こえるようにして、スツーカが爆撃しに降下している事を観客に意識させても良いのかもしれません。

 

でもそういう手法はこの映画では一切採られていません。

 

というかこの映画、ほぼ静寂がありません。

 

あらゆるシーンでBGMが流れています。

そして、雰囲気作りに多大な貢献をしてると思いました。

 

上に書いたスツーカのサイレン音もそうですが、

他にも船の汽笛音なんかもBGMと合わさってたり、ところどころなんか上手い事劇中のSEとBGMを絡めてて面白かったです。

 

まだ一回観ただけなので詳しく書けないんですが、

ちょっと次観るときはこの辺りをより意識して観たいです。

絶対もっとなんか他にも音関連で仕込んでるよ。

 

 

・割と分かりずらい劇中の時系列

 

時系列シャッフルの使い方自体は上手いですよね。

この辺りは流石というか。

 

この映画は基本的に群像劇であり、複数の登場人物達が遭遇する出来事を多角的に描いています。

それに合わせて、それぞれの登場人物の時系列もちょっといったりきたりさせているんです。

 

この演出によって、一つの大規模な事件を何度も映画内で描く事が可能になります。

 

作中では、救助の為に沖に居た駆逐艦が爆撃で沈められるシーンがこれに当てはまります。

 

まず、スピットファイアパイロットであるファリアの視点からこのシーンが描かれました。

 

次にこのシーンが描かれるのは、将兵救出の為にダンケルクを目指していた小型船に乗っていたピーター及び彼の父親と友人の視点です。

 

そして最後はトミーやアレックス達英国陸軍兵の視点から描かれます。

 

 

ただし、この演出によってストーリー全体がどうなってるのか割とわかり辛く感じました。

 

実際史実の出来事を元にしてますから、下手に他に架空の戦闘を発生させるわけにもいかないでしょうし

そう言う意味でこの演出ははまってたとは思うんですけどね。

 

海岸と空と海の三軸で、それぞれ時系列が進行するので、

観ながらあれがこうなってこれがこう繋がって……みたいな事をやろうとすると混乱します。

 

 

では、どうすればいいのか。

これ実は割と簡単な解決策があったりします。

 

 

二回劇場に足を運びましょう。

 

これ言っとくけど冗談じゃなくてマジだから。

二回観るって最強だから。

 

 

■まとめ

時系列に関しては、駆逐艦の沈没シーンを軸にそれぞれのキャラクターの動向が追えてればそんなに頭を悩ます事も無いかもですね。

 

この映画は基本的には史実を元にしたフィクションです。

そしてダイナモ作戦の一部のみを描いている為、

この映画だけでダンケルクで何が起きたのかの全容を知る事はできません。

モノローグやナレーションによる解説もありませんしね。

 

故に言える事ですが、

さほど戦争映画とか歴史に興味ない方は、単純に各キャラクターが生き残るために頑張る姿と、彼らを救うために頑張る人達の姿を観る映画として捉えてしまっていいと思います。

史実がどうとか抜きにしてね。

ちゃんとそういう映画として構成されてると思いますし。

 

 

ちなみにイギリスはこの後に起こるバトル・オブ・ブリテン、そしてアメリカの参戦による米英の共同路線により、ドイツに対して大逆襲を行うことになります。

 

もしかしたら、この辺りの史実を認識しておくと、

この映画のラストシーンで描かれたもへの反応が変わるかもしれません。

チャーチルの演説がどうのこうののあの部分です。

 

演出も結構凝ってて面白いですし、かなり上質な戦争映画だと僕は思いましたよ。

 

ではまた。