スラムドッグ$ミリオネア(2008年・イギリス) 初見バレあり感想
視聴直前までインド映画かと思ってました!
『スラムドッグ$ミリオネア』(原題: Slumdog Millionaire)
■概要
クイズミリオネアって番組覚えてますか?
みのもんたさんが司会やってました。
あれが題材の一つになってます。
この映画の予告を観た当時、初めてクイズミリオネアが海外から輸入された番組だった事を知ったのをよく覚えてます。
題材の一つであり、タイトルにもなっているんですが、この映画は決してクイズだけの映画ではありません。
メインテーマは主人公ジャマールの人生に置かれています。
この主人公が番組に出演した理由も、幼い頃からの初恋の相手であるラティカを探す為だったりします。
また、同時にインドの貧困層の実態を描いていて、サブテーマとして貧困層ルート的な立ち位置でジャマールの兄であるサリームの人生も描かれます。
ちなみに、ミリオネアの司会役はアニル・カプールが演じています。
ドラマ『24』のシーズン8でカミスタン共和国という架空の中東国家の大統領役をやっていた人です。
また、ジャミールを尋問する警官はイルファン・カーンが演じています。
ハリウッド映画などの出演もかなり多く、
最近だと『ジュラシック・ワールド』のヘリコプターの強引な操縦シーンが印象的なサイモン博士役だったり、
『インフェルノ』では中盤以降ちょっと良い奴になるシムズ役を演じています。
まとめると本作は、
スラム街で生きてきた主人公ジャマールが初恋の相手と再会する為にクイズミリオネアに出演し、
その人生を振り返りつつ(色々な意味で)様々な問題を攻略していく様を映画いた映画です。
もっと深いテーマがあったりしますが、その辺りは感想で触れようかと(多分触れない)。
■あらすじ
拘留され、二人の警官から問い詰められる主人公のジャマール。
彼は、スラム街出身で無学だったにも関わらず人気番組クイズミリオネアで最終問題までたどり着いた為に、不正を疑われ拘束されていた。
警察の「どんな手を使った」という問いに対して「答えを知っていた」と返事をするジャマール。
そしてジャマールはこれまでの彼の人生を振り返る。
■主な登場人物
ジャマール・マリク
本作の主人公。
幼少期と青年期で計三人の役者が演じる。
糞まみれになったり、兄貴に宝物を勝手に売られたり、目玉を潰されかけたり、初恋の女の子を兄貴に寝取られたり、警察からちょっとした拷問を受けたり、
散々な目に遭いまくるけど素直でいい人。
友達になりたくなる映画のキャラクターランキングがあったら間違いなく上位入りすると思う。
糞塗れの幼少期ジャマール
なんちゃって観光ガイドやったりして生計を立てている頃のジャマール
良い奴っぽさがあふれ出ている最終形態のジャマール
ラティカ
ジャマールの初恋の相手にして本作のヒロイン。
こちらもジャマール同様三人が演じている。
すごく可愛い。
悲惨なルートの人生を歩んでいるが、
すごく可愛い。
サリーム・マリク
ジャマールの兄貴。
一見するとダメなDQNみたいだけどずっと弟の事を思ってくれてた良い兄貴。
所謂ダースベイダーポジション。
司会者 プレーム・クマール
クイズミリオネアのインド版の司会者。
ジャマールの活躍を阻止しようと嘘の答えを教えたり警察にジャマールを引き渡したりする。
司会者的には全問正解で賞金獲得まで迫るジャマールの存在っておいしいんじゃないのかって思うんだけどどうなんだ。文化の違いか。
■感想
やっぱりインド映画だわこれ。
余韻ぶち壊し系エンディング。
日本のドラマでもインド映画リスペクトな踊っちゃうエンディング良く見かけますよね。
個人的に一番印象に残ってるダンスEDは『女王の教室』のアレです。
それはさておき、本編はとても楽しめました。
視聴前はあくまでスラム街で育った主人公がクイズミリオネアで成功を勝ち取るストーリーなんだと思ってたんですが、
実際にはクイズミリオネアは要素の一つでしかなかったのが良い意味で裏切られました。
あと、この映画ハッピーエンドっぽい匂い凄いしてますけど(最後にダンスしてるし)、よく考えるとそうじゃないんですよね。
兄貴死んでますし。
ジャマールがメインの物語ではあるんですが、
大きくとらえてマリク兄弟の物語と考えると(というかそういう作りの映画ですこれ)、
ジャマールが陽で、サリームは陰の様な描かれ方をしています。
そして二人の明暗がはっきりと最後に描かれる訳です。
劇中、ラティカがこんなセリフを言っています。
ジャミールの「何故皆こんな番組を観る?」という問いかけに対しての答えです。
これがこの映画のメッセージの全てな気がしました。
この後、実際に夢を手にするジャマール(金も女も手に入れてハッピー)と、貧困の中でのし上がるも最後には銃弾に倒れるサリーム。
言わば、ジャマールの物語は一種の夢物語として描かれているんだと思いました。
貧困から這い上がる過程であったりは兄サリームと過ごしていますが、
彼らの分岐点はラティカ救出の場面です。
ここで、物語の2つのストーリーラインが生まれます。
一方は貧困から這い上がり、勝ち上がる主人公の物語。
そしてもう一方は貧困と向き合い、その渦に飲まれた男の悲劇の物語って感じです。
こうして二人の明暗をはっきり描く事で、回想シーンで描かれた様々な出来事が単にクイズの答えに繋がっただけに終始しない深みを帯びているように思います。
この映画は様々な要素を持っています。
貧困、というよりインド人の生活の実態というか、生活そのものを描いていたり、サブテーマはかなり多義に渡って仕込まれています。
複雑に思えますが、それが本編を観ていると自然と理解できる作りになっています。
これは凄いと思いました。
更にこの映画は、ジャマールの回想シーン、取り調べシーン、クイズミリオネアのシーンの三つのシーンで構成されています。
時系列の違うそれらを上手く混ぜ合わせて、一本のストーリーとして完成させています。
二時間の映画とは思えない内容の濃さですよ。
『シティ・オブ・ゴッド』クラスの濃さです。
ていうか物語の内容もどこか『シティ・オブ・ゴッド』と似ている気がします。
兎に角、退屈する事が全くありませんでした。
でもやっぱりあのエンディングは個人的にダメでした。
「インド映画はいつでも踊られる覚悟を決めて観ろ」という言葉を昔誰からか授かった記憶があります。
ですがこれはイギリス映画。
完全にノーガードでエンディングの強烈な一撃を受けて僕の余韻は吹き飛びました。
あれ観て笑わねえ奴いないだろ!!
つい数分前に銃弾たくさんぶち込まれて息絶えた悲劇の兄貴が平然と踊ってるんですよ?
こんなん絶対笑いますよ。
いや笑うだけならまだマシかもしれません。
マジで訳わかんない感情芽生えますよこれ。
サイケデリック発祥の地の作風は伊達じゃないって事なんでしょうね……。
最も、マジなインド映画は踊りのぶち込み方が遥かに意味不明だと聞いていますが……。
きっとこれでもイギリスのフィルターでうまく緩和されているはずなんですよね。
■まとめ
本当に良い映画ですし、書きたいことももっとたくさんあったんです。
視聴中はそれくらい頭の中に様々な要素や感情がぶち込まれてくる凄い映画なんですけど、
エンディングで吹き飛んじゃいました。
最初から最後まで、クイズミリオネアを通じてジャマールの人生を回想するというフォーマットは変わらないのが良いですね。
兎に角、まだ観ていない人が居たら是非視聴するべき映画だと思います。
まだ観てないのにこのネタバレ感想記事に目を通してしまったあなたはある意味ラッキーです。
エンディングに対して心の準備出来ますし。
こんなところです。
ではまた。
クライマックスのこのお祭り感好きです。