宇宙からのメッセージ(1978年・日本) バレあり感想 楽しめる映画って良いよね!!!!!!!!!
1977年、『スターウォーズ』(EP4/新たなる希望)が全世界で公開されました。
この当時スターウォーズが与えた衝撃というのは本当に凄まじく、その後世界中でスターウォーズにインスパイアされた作品が多く制作される事になります。
映画作品だけに限らず、小説、造形、アートの世界、或いは玩具業界とかなり広範囲にSWは影響を与えました。
ちなみに僕が未だに大好きで隙あらば金つぎ込んで集めてる『ゾイド』という玩具も、
初期のシリーズにはこのスターウォーズの影響が色濃く反映されていたりします。
そういった背景がある時代に作られたのが本作です。
まだ本作を視聴していないでこの記事を読む事になる方もいると思うので最初に書いておきますとこの映画、
スターウォーズを観ていた方が色んな意味で楽しめるぞ。
■あらすじ
遠い未来、遥か彼方の銀河系で…
惑星ジルーシアを騒乱が襲った。
邪悪なガバナス帝国は武力で惑星ジルージアを侵略し、星そのものを大規模な戦闘要塞に変えてしまう。
この激動の中、ジルーシア人の大酋長キドは星の救世主となる勇者の元に訪れるリアべの実を8個宇宙へと放ち、奇跡の元勇者が現れる事を願った。
リアべの実が選んだ勇者を迎え導く為に、キドの孫娘エメラリーダと戦士のウロッコは惑星ジルーシアを発つが、帝国軍の戦艦に発見されてしまうのだった…
折角だから本家(?)のオープニングクロールのオマージュであらすじ書きました。
ヤバい映画だぜこれは。
■登場人物
・シロー
宇宙暴走族というロマンあふれる団体に所属する機械オタクの青年。
リアべの実に選ばれた勇者の一人。
演じてるの真田広之だぞ!!
ちょっと観てみたくなりませんか。
僕は真田広之さんが出てるって点がこの映画を観ようという決断の最終的な後押しになった節があります。
・アロン
シローと同じく宇宙暴走族とかいうロマンあふれる団体に所属する青年。
というか宇宙空間には大気が無いので音は聞こえない……。
暴走族のアイデンティティを考えさせられる。
リアべの実に選ばれた勇者の一人。
作中で葛藤が描かれたり、恋心が描かれたりシローよりも主人公っぽい。
いやもしかしてこっちが主役なのか?
・メイア
良いところのお嬢さん。
リアべの実に選ばれた勇者の一人。
作中一番外宇宙での戦争参加に乗り気。
しかしヒロイン的ポジションに居ながら、いてもいなくても物語にはあまり支障が無い。
・その他の有象無象
和製レイア姫とか宇宙軍の元将軍とかチンピラとか後半になって裏切りが発覚する戦士のおっさんとかいろいろいます。
■感想
・SF映画としてのオリジナリティ
この映画、酷評されまくりな事でも有名なんですが、
実際に観てみた印象としては、70年代の和製SFにしては悪くないというのが正直なところでした。
悪くないってのはつまり、絶賛できる訳でも無いって事でもありますが……。
たしかにSWと比べたらそりゃ劣りますよ。
というかスターウォーズのクオリティが異常に高すぎるだけなんですよ。
本作もSWの影響と衝撃を受けて制作された映画の一つではありますが、
設定部分や物語の進み方なんかは、単純なSWのパクリでは無く、むしろオリジナル要素がかなり多いです。
まず明確に未来の地球および銀河系を舞台にしているという点。
地球人類は宇宙に本格的に進出しており、高度な文明社会を築いています。
この点、物語世界の立ち位置としてはSWよりも『スタートレック』に近い作品です。
また、リアべの実が選んだ8人の勇者たちが集い、悪の権化に立ち向かうという物語の構図。
これ『南総里見八犬伝』のフォーマットそのものですよね。
他には『七人の侍』なんかにも非常に近似したフォーマットです。
とてつもなく日本的な要素がここに引き継がれているという事がわかります。
言ってしまえば、SF要素を取り入れてリメイクした里見八犬伝みたいな映画です。
だからと言って、これが面白さに直結するとは限らないんですが。
日本的要素をふんだんに取り込み、オリジナリティを明確に発揮させているにも関わらず、本作のストーリーそのものが面白いとは僕はあまり思いませんでした。
なんというか、8人の勇者が集う過程の描き方が雑すぎ。
この手の話って、ここが結構楽しめるポイントだと思うんですが、雑。
ぽっと出てきて謎に大活躍する、追放されたガバナス帝国の王子とか、
ロボコンのOSを無理やり捻じ込んで、クソで煎じたR2-D2みたいなロボットのベバ2号とか、
戦士ウロッコを騙して殺しかけ、ついでにメイアを売り飛ばして小銭稼ぎするジャックとか、
キャラクターの個性が先行していて、彼らが合流していく過程の楽しみとかそう言うものがあまりありませんでした。
日本の古典作品のフォーマットを取り入れたのなら、そこにある面白さももっと使っても良かったのではないかなって思います。
・特撮、メカニックデザインについて
当然ながらCGはまだ存在しない時代の映画なので、全て現物を作って撮影してます。
登場するマシンのデザインは実はかなり秀逸なものが多いです。
SWには登場しない、合体機構を持つ宇宙戦闘機とかも出て来たりオリジナリティもあります。
もしかしたら玩具展開なんかも視野に入れていたのかもしれません。
ところどころSWからの影響は見られるものの、デザイン面でも意外とオリジナリティが発揮されています。
この帆船型宇宙船とか中々いい味出てます。
特撮シーンのクオリティそのものは結構ばらつきがあります。
極端に雑なシーンもあれば、かなり迫力のあるものもあったり、リアリティを重視して実寸大の模型を組んだであろうシーンとかもあったり。
合成部分や、ビームなどの描画はこの当時の特撮のクオリティとしては十分すぎるレベルです。
また、後半の戦闘シーンの多くは予算がかなりつぎ込まれてるのか火薬をたんまり使って豪勢に描いていて、特撮らしいダイナミックな楽しさもしっかりありました。
ただ、戦闘機同士の格闘戦や、チェイスシーンなんかはスピード感が全く無く、テレビ特撮レベルのクオリティのシーンが殆どです。
時代や予算の関係とかももちろんあるんですけどね。
この辺りはどういう観方でこの映画を楽しもうとしてるのか次第で評価が分かれてそうですね。
僕はミニチュア特撮目当てで観た部分もあるのでこんな評価になってる感じです。
・スターウォーズからの影響
これが本題みたいなところある。
まず、あらすじの項目でもキャプ貼ってますが、これね。
この、画面上部からゆっくりと艦船がフェードインしてくるという構図はまんまep4冒頭のスターデストロイヤーが初登場するシーンのパk、オマージュです。
ただこの構図、本作では合計3回も出てくるってのが。
巨大感の演出とかには確かに良いんですけど乱用しすぎ。
こういう、ep4で印象深いシーンはだいたいトレースオマージュされてます。
まずガバナス帝国の最終兵器がなんちゃってデススターだし。
この惑星要塞を確実に破壊する為には、動力炉を破壊しなければなりません。
その為にシローたちは惑星表面に小型戦闘機で向かい、動力炉に繋がる細い道でドッグファイトを繰り広げます。
やっぱep4だろこれ。
キャラクター面で言えば、R2-D2とC-3POに明らかに影響を受けたこんなロボットがでてきます。
ただこいつはかなり日本的なコミックロボットですが。
SWの人気要素をなんとか取り込もうとしていたんだと思います。
その上で、当然と言えば当然なのですがSWの下位互換のシーンが多数散りばめられた不思議な映画にはなってしまっていますが。
だからこそ、SWファンは楽しめる映画だと思います。
上記したのは一部のオマージュだけで、他にもいろんなところにオマージュが見え隠れしていて面白いんですよ。
つまりこの映画は真面目に観たらだめって事だね。
・ツッコミどころ
宇宙なめんなよ。
マスクだけしてれば宇宙空間がオーケーって事は無い。
しかも彼らが居るのは、放射線廃棄物が大量に破棄された場所。
そんなところにマスク一つで泳ぎに出かけるこの勇気。
最初は、超極薄のフィルム式宇宙服とかをインナーで着用してるのかとか頑張って脳内補正しましたが、メイアが素手で宇宙蛍(放射性廃棄物の塊です……)を掴むシーンがガッツリ存在し、僕は考える事をやめた。
なんなら凍死するんじゃねえかこの状況。
■まとめ
SF映画としては、日本らしいオリジナリティがしっかり盛り込まれていて、
ストーリーも決して悪くないです。
粗が目立つ部分はたくさんあるにしても、そう言った部分すら楽しめるのは今の時代だからこそかもしれません。
楽しみ方のスタンスとしては、個人的にはですが物語に没入するのではなく、
ある種の粗探し、ツッコミどころ探し、みたいな感じで観る方が楽しめる映画だと思います。
制作陣の意図したものとは違うんでしょうが。
なので、その手のスタンスの映画に慣れてる人は観てみたら面白いと思います。
『ファイナル・デスティネーション』シリーズとかね。
日本特撮が好きな人、バカ映画が観たい人、SWの類似品を探している人、
是非一度観てみてください。
ではまた。
ガバナス帝国軍人はどんな気持ちでこの軍服を着てるんだろうね。