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リトル・ミス・サンシャイン(2006年・アメリカ) バレあり感想 観た後の清々しさが凄まじい。そして、悲しい出来事を上手く笑いに繋げていて楽しい映画でした。

 

良い……。

 

 

 

リトル・ミス・サンシャイン』(原題:Little Miss Sunshine)

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画像出典:

リトル・ミス・サンシャイン - 作品 - Yahoo!映画

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 ■ストーリー

 

ニューメキシコ州アルバカーキ

フーヴァー家は夫のリチャードと妻シェリル、ドウェーンとオリーヴの二人の子供、そしてヘロインを使用した事で老人ホームを追い出されたエドウィンが共に暮らしている。

 

そこに、シェリルの兄であり、自殺未遂を図ったゲイのフランクが居候することになる。

 

ある日ふとしたきっかけでカリフォルニアで開催されるミスコン「リトルミスサンシャイン」への参加権を手にしたオリーヴ。

 

シェリルは家族を強引に説得し、ニューメキシコから遥か遠くであるカリフォルニアにあるミスコンの会場を目指す。

旧式でボロボロのマイクロバスに家族が乗り込み、長い旅が始まった。

 

 

 

■感想

 

各自問題を抱える家族が、ミスコン会場を目指す為の旅の道中で様々な出来事を通して

お互いを理解していくといったような、この手の映画に求めている物が全て詰まったような清々しさがある映画でした。

 

ロードムービーであり、同時にコメディとしても作られていて、普通なら少しシリアスな空気の漂いそうな状況が発生してもそこにはシュールな笑いが内在していて、笑いや脱力感を上手く演出しています。

そしてホームドラマとしても良質なんじゃないかと思いました。

 

 

キャラクターが良いですね。

各登場人物のそれぞれ抱えている問題(或いは目指している夢)とその結末が映画内では描かれていきます。

 

フーヴァー家の夫のリチャード自己啓発系のビジネスで一発当てようとしている人物です。

しかし家族の中で一番柔軟性が無く、相手の気持ちを考える事を苦手とし、更に短気な性格です。

 

フーヴァー家の妻シェリは登場人物の中で一番まともです。

抱えている問題もどちらかというとフーヴァー家そのものに対してのものです。

 

長男のドウェーンは、空軍のパイロットを目指す15歳の少年です。

その夢を実現させるためにニーチェの沈黙の誓いを実践し、9ヶ月間言葉を発する事をやめています。

ドウェーンに関しては、物語の中盤で唐突に問題を突き付けられるポジションにいて、同時にそこからの脱却もはやく、登場人物中で一番内面がしっかりしています。

 

ドウェーンの妹であるオリーヴは、ストーリーの軸となるミスコン会場への旅という部分のきっかけを作るキャラクターです。

個性特化で問題だらけのキャラクターの中でバランスをとるためのイノセント枠。

 

エドウィンはリチャードの父であり、ヘロインを使用した事で老人ホームを追い出されフーヴァー家に住んでいます。

口汚く、思った事は殆どの場合ストレートに相手に投げかけるという、起爆ポジションのキャラっぽいですが、それは家族に対する気遣いの裏返しであると言った感じの、いわばおもしろおじさん。

 

そして最後に、そんなフーヴァー家にフランクがやってきます。

フランクはシェリルの兄であり、ゲイであり、作家プルーストの研究の第一人者です。

 

 

こんな感じのキャラクター達で物語が進んでいきます。

ホームドラマとしての、家族の関わりという部分よりも、それを軸にして夫々のキャラクターの顛末が描かれていくという所に面白さがあるのかなって思いました。

それをコメディとしてまとめていて、視聴後の後味の良さが凄く良いです。

 

コメディ映画であるという部分は本当に重要だと思います。

下手にシリアスな、苦悩が過ぎるようなパートをいれてないお陰で軽快さが物語全編に渡って持続しているように思いました。

 

例えばリチャード、自己啓発ビジネスに失敗した上、その翌日には実父であるエドウィンが亡くなる訳ですよ。

もう散々。

ですが、映画ではそういった部分での苦しみをフォーカスするのではなく、そこから旅の目的を通じて家族と一丸になるという部分を中心に据え続けています。

 

また、エドウィン爺さんの死という要素から重さを排除する為にコメディシーンを徹底して入れている、なんなら爺さんそのものをネタに使うくらいの勢いで凄く軽快です。

 

 

ゲイで自殺未遂者のフランクも、そもそもゲイで自殺未遂者って段階で出オチ的に悲惨なキャラではありますが、彼もまたこの旅を通して一つ吹っ切れていきます。

そしてその吹っ切れのきっかけになるのはいずれもコメディシーンとして配置された部分ばかりです。

他のキャラクターもそうですが、解決や結果の要素がコメディシーンの中に配置されていて、個人的に凄い上手い見せ方だと思ってビックリしました。

 

オリーヴが最終的にミスコンに出場して、そこで披露するエドウィン爺さんと練習した渾身のダンスがまさかのポールダンスで、

会場はもうヒエッヒエですがフーヴァー家はそこで結束を見せ一丸となってエロダンスにいそしむみたいな。

絵面が最高に面白いシーンですが、同時にこのシーンは映画で描かれたキャラクター達の一つの結末を描いてもいるという事です。

 

ドウェーンに関しては、物語半ばで自身が色弱である事が発覚し、唐突にパイロットへの夢が途絶えてしまい、思わずニーチェの誓いを破って叫び声をあげるというシーンがあります。

ここはこの映画厨数少ない真剣なパートだと思えますが、ドウェーンが色弱である事を知った直後の、誓いのせいで声を出せないながらもうそれが我慢の限界まで来ているという描写の流れが結局コメディシーンだったり。

 

また、この後からドウェーンは普通に話すようになりますが、それすらちょっとした面白要素です。

 

 

この手の映画わりと見てる方だと思うんですけど、

全てのオチを一つにまとめるというよりも、各々のキャラクターの顛末を笑いの中に入れながら、且つ物語としてのオチもまた用意して視聴後に気持ち良さを残すような映画はあまり見たことが無い気がします。

そういう部分も含めて新鮮でした。

 

 

■まとめ

 

なんというか、気軽に観られる映画です。

バカ笑いするようなタイプのコメディではありませんが、映画としての空気感は凄く調子が良いです。

 

実は結構悲しい事であったり重い事が起きているんですが、それを笑いに包んで描写していて、更にそれらの出来事を通じて問題を抱えた家族がどんどん前に進むといった具合の映画です。

 

つまりこう、楽しい映画なんですよ。

或いは辛い事や悲しい事の中にある不思議な面白さとか楽しさにフォーカスを当てた映画という捉え方もできるかもしれません。

 

とてもおすすめです。

 

 

ではまた。