レディ・プレイヤー1(2018年・アメリカ) バレあり感想 VRと現実世界の関わりを凄くポジティブに描いた作品。そして小ネタが多すぎて周回必須。
『レディ・プレイヤー1』(Ready Player One 原作『ゲームウォーズ』)
■ストーリー
2045年、世界は荒廃し、人々は現実世界の再興を諦めていた。
人々の生活の中心の殆どは、オアシスという仮想空間に費やされていた。
オアシスの設計者であるハリデイは、自身の死後、オアシス内にイースターエッグを隠した事を公表した。
イースターエッグに繋がるヒントを得るには、3つの課題をクリアして鍵を集めなければならない。それはアノラックゲームと呼ばれる。
アノラックゲームを攻略し、イースターエッグを見つけたものにオアシスの全権を委任するという遺言はオアシス全体を熱狂させた。
だが、ハリデイの死後から5年経っても未だに第一の課題すら誰一人攻略することが出来なかった。
貧民街で叔母とそのヒモの男と暮らすウェイド・ワッツもまたオアシスに人生を見出した若者の一人だった。
オアシス内での彼はパーシヴァルという名を付けたアバターで仮想空間を満喫していた。
パーシヴァルはオアシス内で知り合った仲間のエイチ、ダイトウ、ショー、そしてレースで出会ったアルテミスと共にアノラックゲームに挑む。
■感想
なんというか、80年代の頃のポップな空気感漂うスピルバーグの作風に回帰した感じが強くて、凄く好みの映画でした。
とりあえず大まかな映画の流れがわかりやすくて何度でも見られる楽しさもあります。
冒頭
最初はオアシスという仮想空間そのもののシステムや仕様、世界中の人々がこの空間にアクセスして現実逃避しているという部分の紹介から映画が始まります。
また、設計者によってイースターエッグが隠され、それを見つけた人がオアシスの全権を引き継げるという、本作のストーリーの中心になる設定についてもついでに説明があります。
この冒頭の説明パートみたいなところに結構時間を割いています。
同時にオアシスという空間の魅力や、文字通りなんでもありな世界であるという事を描いてました。
引き込み方がとっても上手いですよねこれ。
停滞しがちな説明パートをオアシスの世界のビジュアルや、容赦なく惜しみなく冒頭から投入される版権キャラクターの応酬で相殺してる感じ。
おさんぽしてるキティちゃんとか。
そして主人公のパーシヴァルことウェイド君やそのお友達の紹介、そしてヒロインのアルテミスことサマンサちゃんとの出会い辺りまでキャラクター描写が中心に描かれます。
IOIという、オアシスの全権を得る為に全力を出している大企業の存在など、ここまで含めて映画の概要とオアシス内での日常を描いてる感じです。
現実世界とオアシスの世界を最初に露骨に対比させてたり、テーマ描写も怠らないあたり流石スピルバーグ。
物語の概要と映画そのもののスタンスをここで一気に見せて消化してるおかげで、後はまぁ楽しいこと尽くしですよ。
第一の課題はレース
諸々の処理が終わって、いよいよ本編が動く感じです。
第一の課題はレースであり、ハリデイの遺言から5年経っても誰一人として攻略者がいないという代物。
ウェイド君はハリデイ資料館でこのレースの攻略法を見事見出し最初の攻略者となります。
その方法は、全力で逆走するというもの。
デバッガー経験ある奴とかが真っ先に試してそうな気がしなくもないと最初思いましたが、そんな事も無いかもしれないですね。
オアシス内にはキャラロストが存在します。
アバターを失うと課金アイテムも何もかも全て一気に失うという、キャラロストに対してわりと凶悪なペナルティが付与されています。
そんで、このレースのスタート位置のすぐ後ろは壁になっていて、全力でそこに向かって自慢のカスタム車突っ込ませるやつなんて早々居なかったんでしょう。
というか「僕は誰とも組まない」と言って一匹狼に勤しんでいたのに、最近出会ったばかりのアルテミスちゃんや、お友達のエイチ君なんかにもすぐさま攻略情報を流してあげるウェイド君。わかるよその感じ。
彼女出来ない奴が「いや俺出来ないんじゃなくて作らないだけだから、必要ないから」とか言って強がるアレと同じやつね。俺。
そんな事よりこのレースシーン最高すぎやしねえか。
ライセンスとかそんなの関係ねぇ!を地で往く凄まじい版権モノ祭り。
版権のバーゲンセール。
レースに参加する車両は『AKIRA』で金田が乗っていたあの朱いバイクや『バットマン』のバットモービル、『マッドマックス』のインターセプター、他にも恐ろしくたくさんの車両が参加していて、もうホント惜しみない。
パーシヴァル君も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ライクなデロリアンに乗ってますし。
そしてレースの障害物枠でTレックスやキングコングが大暴れしているという……。
これもうこの時点で周回視聴決定しましたよ僕は。
何周かしないと小ネタ拾いきれないよこれ。
レースの描写自体もかなり迫力のあるものになってました。
ズームや主観気味な視点からの手ぶれが多用されていたり、オブジェクトが画面側に向かってくるシーンも多く、モロに3D推奨な感じしますね。
2D字幕で観ちゃったんですが、この時点でそれをかなり後悔しました。
そんだけ凄いレースシーンでしたよ。
パーシヴァル君とアルテミスちゃんのパート
第二の課題のヒントを紐解く過程でパーシヴァルとアルテミスの距離も縮まっていきます。
それを見てエイチが「外見はあくまでアバターなんだからあんまりのめり込むなよ」といった趣旨の忠告をパーシヴァルにしてるんですが、
後にエイチの中身というか生身が判明してから改めてこのセリフを考えると、ちょっと嫉妬してんのかとか思えてきて色々可愛いです。
一方のパーシヴァルはもうアルテミスに完全に惚れきってしまい、アルテミスに気持ちを伝えます。
仮想空間なら大胆になれるオタクあるある。わかる。
しかしこの時のパーシヴァルは突然本名を名乗ったり、そのせいでIOIの襲撃を招いたり結構な炎上芸かましてます。
ネット初心者なの?
そんなこともあってか、アルテミスは「現実の私を知らないくせに」って感じで怒って帰っちゃいます。
主人公の苦悩パートでもありますが、同時に本作のテーマの一つに繋がる部分でもあると思います。
アルテミスちゃんかわいすぎない?
なんかアメコミ風作画で最初は慣れないアルテミスちゃんのアバターが、この辺りからすっごく可愛く見えてきます。これ萌え映画じゃんってなる。
現実世界パートもこの辺りから活性化
アルテミスちゃんとのあれこれに続いて、現実世界でも話が動き始めます。
これまではあくまでオアシス内での出来事が中心でしたが、ここからIOIによる本格的な悪事が始動し、リアル世界では貧弱なウェイド君に現実が襲い掛かります。
第一の課題までは仮想空間をひたすら中心に持ってきていた一方で、第二の課題からは現実世界での出来事も比重が高まり、映画のメリハリがしっかりしている印象があります。
仮想現実での出来事のはずがどんどんリアルに干渉が始まって、リアルでも頑張らないといけないみたいな。
結局頑張るのは自分自身みたいな。
リアルで再開したパーシヴァルことウェイド君とアルテミスことサマンサちゃん。
お互い生身で初顔合わせですが、この辺りの雰囲気もとても良いですね。
一見するとご都合主義っぽい感じもしますけどね。
叔母さんもろともクソみたいなヒモ男が死んだあと、サマンサちゃん達反乱軍に保護されたウェイド君。
サマンサちゃんは顔に大きなあざがある以外は普通に美少女という。
ラノベ。
と思いがちでしたが、ウェイド君は本当にサマンサちゃんの内面に惹かれたという事がよくわかるシーンでもありました。
VR内恋愛という部分から始まった関係ですが、それをネガティブに描く事は無く、むしろガワは関係ないんだよってところに話を持って行ってますし。
映画的にも嵐の前の静けさ演出として効いてる気がします。
第二の課題は『シャイニング』まんま使い
このパートホント好き。
VRの遊びの可能性の提示みたいな部分もある気がします。
映画シャイニングの世界まんま使いという豪華さと、映画の世界をVRで体験できたら面白いよねっていう提案の両立的な。
第二の課題の攻略方法を思いついたサマンサちゃんによって再び仲間が集まり、第二の鍵を手に入れる為にスタンリー・キューブリックが監督した映画『シャイニング』の世界に5人がダイブします。
ヒントの読み解きの流れも面白いです。
が、それ以上にこのシャイニング体験パートのインパクトはもう色々と面白すぎます。
なにより、何でもあり感をここでより強く演出している気がします。
映画シャイニングの舞台をまんま使いし、その中で5人がヒントを求め探索を始めます。
ここに関してはもはやどういう撮影技法使ったのかまで気になります。
『シャイニング』を観ていない人にとっては単にセカンドステージとして捉えられるように描写されているとは思いますが、これに関しては絶対にシャイニング見ておいた方が楽しめると思います。
エレベーターが真っ赤な液体をお漏らしするシーンもタイプライターのシーンも迷路での逃走劇も、バスルームの女性も、アホみたいに強調されるハンドアックスも、全て面白い。
ジャック・ニコルソンこそ出てきませんが、キューブリックのシャイニングの印象的なシーンを短い時間(劇中時間では5分)に詰め込んでます。
そして最後には死霊の盆踊りに巻き込まれたモロー夫人とアルテミスがダンスして鍵をゲット。
ライセンスとかホントどうしてるんですかねこの映画……。
この後もっとハチャメチャな事になりますし。
リアル世界で出会う仲間達
第二の鍵を手に入れたものの、サマンサちゃんがリアル世界で捕らえられIOIに連行されてしまいます。
するとウェイド君の前にエイチ、ダイトウ、ショーの本体が現れます。
あのアバターの中身こんなやつなんか!を楽しむパート。
仮想現実を基にした作品あるあるもしっかり回収していくスタイル。
オアシス内ではクソごついアバターで、且つ修理や建造技能に優れているエイチの正体はヘレンという女の子。
シャイニングパートでのビビり具合を思い出すと、ヘレンちゃんかわいいが加速する。
武将みたいなアバターのダイトウの中身はトシロウというイケメン。
そしてショーの中身は11歳の少年ゾウ。
遅効性の出オチってやつ。
このシーンでもVRに対してポジティブなスタンスは貫かれていると思います。
現実とバーチャルの対比では無く、現実での彼らとバーチャルの彼らの違いを受けても尚仲間として共に頑張るっていう。
結局人間の部分でお互い信頼し合ってるっていう。
良いシーン。出オチなんかじゃあない。
第三の課題とラストバトル
そしてリアルとバーチャルの双方で大詰めの展開に。
色々な版権キャラが登場しすぎていてとんでもない密度に。
物語としては、リアルとバーチャルの出来事が相互に絡み合っていく展開になります。
例えば、バーチャル世界でIOIが使用した絶対防護アイテム的なものを突破する為に、リアル世界でインターフェースから直接アイテムの解除方法を入手したり。
揺れる車の中にインターフェースがあるせいで、バーチャル世界で上手く動けなかったり。
また、第三の鍵を得る為にバーチャル世界でアタリ2600のアドベンチャーというゲームをプレイしてたりシュールな描写もたくさんあります。
ですがやっぱりどうしても登場するキャラの豪華さに目がいきます。
ここはもう本当にお祭りに近いパートですよね。
色々なキャラのアバターや装備なんかが登場しすぎていて一度に把握するのは絶対に無理なレベルです。
遊びが過ぎる。
年代もライセンスも色々と垣根を超えすぎていて絵面が凄まじいです。
なんせガンダムとアイアンジャイアントが共闘して、悪人風のクラークケントが操作するメカゴジラと戦うんだぜ?
正直このシーンの為だけに2000円弱払ってもいいくらいですよ。
アイアンジャイアントは元ネタの映画の中で見せていた無差別暴走モードみたいなのも折角なら観たかったですが欲張りません。
多分それやると凄まじい勢いでゲーム内クレジットを消費するんだろうな……。
エイチの操るアイアンジャイアントは最期に溶鉱炉の中に落ちていき親指を立てて散っていきました。何でそこでT800ネタなのかは全く分かりませんが、お祭りですから。
ガンダムはRX-78-2、つまり初代ガンダムが登場します。日本限定で少しだけ予告にも映ってましたが、正直ここまでフォーカスされているとは思いませんでした。
なんせめっちゃ満を持して登場しますからね。
「ダイトウなにやってんの!はやく戦いに参加してよ!」
「あーやばいやばいピンチだもうアカン!」
みたいになってからの登場ですから。
トシロウ君の「俺はガンダムで行く」までの決断の長さすら面白いから。
多分ビームライフルはクレジット消費が凄まじいんでしょう。
ダイトウの戦闘スタイル的に必要も無いですし。
そんな事はどうでもよくて、ハリウッド資本でガンガン動くガンダムを劇場で観られるっていう事がもう変な感動すらあるわけで。
そして、悪の親玉ポジションのトレントはアバターは恐らくスーパーマンベースで、ラストバトルにはメカゴジラで参戦します。
このメカゴジラは他の版権ネタと違ってデザインがかなりオリジナル色が強いものになっています。
メカゴジラはこれまで日本で3種いるんですが、それをすべて足して割ったものを、ギャレゴジ体型にリファインしたみたいな独特な感じに。
本家日本のメカゴジラは実は放射火炎使う奴は居ないんですが、本作のメカゴジラは放射火炎使います。かっこいい。
他にもフィンガーミサイルっぽい攻撃しようとしてたり、凄くアリなメカゴジラです。
というかぶっちゃけゴジュラスかと思った。ゾイダ―です。
メカゴジラの戦闘シーンではなんとゴジラのテーマまで流れます。
ガンダムも、あの有名な捕捉音が使われていたり、元ネタへのリスペクトも凄く感じられます。
もうこのパートは物語的にはとかそんなんよりひたすらバトルについて語りたくなります。
長くなるので書きませんが。ホント凄い。
他にもとにかく色々なキャラや武器や技が飛び出し過ぎていて、マジで周回必須なレベルで詰め込まれてました。
その他
やたら80年代の名曲を多用しているのは、やっぱりその辺りの世代を狙い撃ちする為なんでしょうか。
音楽やSEに関しても拘りが見える映画だと思います。
VRを上手く使った展開もありました。
トレントのインターフェースをハックして仮想現実のオフィスを形成して騙すみたいなやつとか。
VRをテーマにした作品ならではの要素も散りばめられています。
■まとめ
本質的には人間の内側の物語という印象があります。
いろいろな捉え方が出来る映画だとは思いますが、個人的には仮想現実に溺れようとも人間は人間であるっていうことを描いているように感じました。
ハリデイの最期のセリフもそういう部分が強調されていましたし。
その上でVRというものに対してもポジティブな姿勢を見せていると思いました。
様々な可能性を秘めていて、何でもできるし何にでもなれるオアシスで出会った仲間との物語でもあると思います。
底の部分ではやはりウェイド君たちも人間レベルで信頼し合っているからこそ、最後は5人でオアシスを運営するという判断をしたんだと思いますし。
しかし何よりやはり、ライセンスの垣根を超えてここまでやりたい放題している映画自体が初体験で凄く楽しめました。
とにかくもう面白すぎてもう何回か観ないと気が済まないです。
オススメです。
この映画は、下記の動画配信サービスで視聴する事が出来ます。
ではまた。