ランペイジ 巨獣大乱闘(2018年・アメリカ) バレあり感想 ちょっと懐かしい感じの大げさでバカなアクション満載
特撮ファン一本釣り狙いなのかと思いきや人間側のアクションも豊富。
80年代のバカ映画っぽい空気感が漂う、良い意味でバカっぽい映画でした。
『ランペイジ 巨獣大乱闘』(Rampage)
出典:
■ストーリー
崩壊した宇宙ステーションの中でなんとか脱出を試みようとする女性博士。
この宇宙ステーションでは動物を用いた遺伝子実験が行われていた。
だが、実験体であったネズミが変異して暴走を始め、ステーションを破壊してしまった。
博士はネズミの攻撃を受けながらも、なんとか実験サンプルと共に脱出ポッドに乗り込む。
だが、脱出ポッドの窓はネズミの攻撃によってダメージを受けていた。
大気圏に突入すると共にポッドは爆散する。
サンプルはアメリカ合衆国上空から地上へと墜落。
付近にいた動物がこれと接触してしまった。
霊長類学者のデイビスは、ある日保護区のゴリラの一頭であるジョージの体躯が大きくなっている事に気づく。
ジョージは屋内に隔離されたが、その間もどんどん巨大化を続ける。
エナジー社の元社員であるケイトがデイビスの元に現れ、巨大化の原因が大企業エナジー社の実験に起因する事を知らせる。
しかしジョージが暴走を始め、監視ルームを破壊し屋外へ飛び出してしまう。
デイビスがなんとかジョージを静めようと対話を試みるが、直後に現れたヘリから麻酔弾を受け、ジョージは気を失う。
そしてデイビスとケイトも政府に拘束されてしまう。
ジョージとデイビス、ケイトを乗せた輸送機が飛び立った頃、エナジー社のトップであるワイデン姉弟により、本社ビル屋上に建てられたアンテナから巨大化した生物をおびき寄せる為の特別な周波を発し始める。
程無くして麻酔から目覚めるジョージ。
みるみる内に檻は破られ、空高く舞う輸送機の中でジョージの暴走が再び始まった。
■感想
本作、80年代のアーケードゲームを元ネタとしたものになっているそうです。
ですが、その元ネタを一切知らなくても大丈夫、というか予告を観てもわかるように訴求先が全く別ベクトルの層に向けられているので原作のゲームを知らなくても問題がありません。
映画『バトルシップ』みたいなもんですね。
ノリもなんとなく近い気がします。
・最初からクライマックス
序盤の宇宙ステーションでのやり取りは極めてシリアスです。
凄くシリアスな入り方をします。
宇宙ステーション内で暴走した実験生物の元から必死に逃げる女性博士を描いています。
このイントロダクションだけで一本のパニックホラー映画作れそうな勢い。
初代『エイリアン』のゼノモーフを暴走ネズミに置き換えたら本作のイントロにぴったんこ。
博士は必死に脱出しようとするものの脱出ポッドは外部からロックされてしまいます。
実験を依頼していた?エナジー社のクソトップ二人組から「サンプルを回収しないと脱出ポッドに乗せてあげない」というありがたいお言葉まで通信で頂き、
それでもめげずに博士はなんとかサンプルを回収し、化け物になったネズミの猛攻を振り切り遂にステーションを脱出します。
直後にステーションは爆散、博士は一安心し深くため息をつくという。
わりともうここまでで「良い映画観たわ」感が出てきます。
ここまでまだ多分10分も経ってないのに凄い満足感。
ところが大気圏に突入すると共に、ネズミの攻撃を受け脆くなっていたポッドが博士もろとも爆散してしまいます。
なんて気分の悪いオチを付けるんだ。
しかしサンプルは大気圏突入にすら耐えられる特殊なケースに護られ、無事地上に墜落、
動物たちが近づいてきたところで都合よくサンプルが飛散、動物たちに何か異変が起こる事を分かりやすく描いて、この映画の本編がようやく始まります。
・冒頭からラッセル登場前後まではとても丁寧な作り
導入の後は、動物学者の主人公デイビスと、彼の担当する保護区に居るゴリラ、ジョージの関係性や、彼らのキャラクターなんかを描きつつ、じわじわと事件の起きる香りを漂わせてきます。
サンプルのせいでジョージに異変が起き始めてからも暫くは何か起きそうな空気感を維持しつつ、あくまでキャラクター描写を重視した展開を維持しています。
この時点で、黒幕で悪役なのがエナジー社のワイデン姉弟である事までとてもわかりやすく見せてくれるのがありがたいですね。
おかげで難しい事を考えたり予想したりする必要なく、中盤以降の本気モードになった本作を惜しみなく楽しめました。
そして、映画がグダる前に、次の展開にすぐ移行するので映画全体のテンション管理がとても上手いと思います。
この辺りでヒロインであるケイトが登場。
彼女は元エナジー社の社員で、更に今回の事件の発端となる遺伝子改造技術の開発研究者でもありました。
彼女の口から本作の設定はあらかた語られます。
難しい単語が飛び回りがちですが、簡単に言えば「エナジー社はDNA改造技術でヤバいものを創ろうとしているよ、それを止めようよ」ってだけの話。
難しい単語や専門用語の応酬はこの手の映画の醍醐味。
キャラクターを一通り見せたところで、ジョージの暴走が本格化します。
でっかくなって檻をぶち破って屋外に飛び出すものの、暴れ回るのではなくただひたすら逃げまどうジョージ。
そして必死にそれを安心させようとするデイビス。
二者の信頼関係をこの辺りで徹底して描く事で、後半の胸アツ共闘パートの盛り上がりもより増幅したように思います。
しかしジョージは麻酔で眠らされ、デイビスとケイトもついでに拘束され連行されてしまいます。
二人を連行したのは政府直属の極秘組織でした。
この後の展開を考えても、ここでオリジナルの組織を出す必要が全くないんですが、雰囲気作りって重要だから……。
こういう細かい部分での雰囲気作りが物凄く気持ちよく刺さっている映画だと思います。
大味で少しバカげている空気感を漂わせる事で、この映画がただただ楽しむ為の映画であることを間接的に伝えているような。
映画『トランスフォーマー』の第一作もその辺りがとても上手かったです。
めちゃめちゃ分かりやすいハッタリを上手く効かせて物語に魅力を出している辺りが特に。
最も、実写TFに関しては同じ手法を同じような脚本と展開で6回も繰り返した事で完全にクソシリーズと化してしまいましたが。
ランペイジに話を戻します。
エナジー社は落下したサンプルの回収を目論んで、特殊部隊に調査を依頼。
しかし特殊部隊はそこで巨大化し滑空能力まで身に付けた狼との戦闘に突入します。
一発目の本格的なアクションシーンであり、アクションを前面に押し出した本作ではいわば掴みにあたる重要なシーンだと思うんですが、この狼との戦闘シーンは物凄く出来が良いです。
三人称視点、俯瞰、更にはPOVでの臨場感溢れる視点まで入れて、徹底的に巨大化した狼の恐ろしさを見せつけてきます。
この辺り、特殊部隊が全滅するという展開含め既にモンスターパニック映画の王道を往ってます。
あと、直ぐに死んじゃうわりに特殊部隊の夫々の隊員だったり隊長だったりのキャラクターの描写もしっかりしてました。
『キングコング 髑髏島の巨神』を意識したかのようなシチュエーションとキャラ描写、を丁寧に行った上で、結果的には彼らが全滅するという結末を迎える事で、意外性が生まれたんじゃないかなと個人的に思ってます。
特に隊長は絶対に生き残ると思ったよ。
だからこそ逆に裏切られてそれがまた面白さに繋がっているように感じます。
特にモンスターパニックが好きな人にとってはベタであり王道であり、しかしちょっと以外でもあるみたいな部分でかなり好感度高めなんじゃないでしょうか。
そして場面は再び輸送機に。
デイビスたちを連れ去った組織の恐らくトップであろうラッセルという人物が登場します。
役者はドラマ『ウォーキング・デッド』でニーガン役をやってるジェフリー・ディーン・モーガンです。
ちなみに今回吹替え版で観たんですが、担当声優が若本さんでした。
ニーガンってもしかしてTWDの吹替え版でも若本ボイスになってたりするんですかね?
何はともあれ、若本ボイスが最高に合ってなくて笑いました。
駄目でしょ若本さん使うのは笑
そんな吹替え版ならではの違和感と戦いつつも、捜査官ラッセルによってケイトが既にエナジー社を解雇されている事を伝えられ、デイビスとケイトの間に微妙な空気が。
同じ頃、エナジー社は本社ビルから特殊などくでんぱを発し、巨大化した生物をシカゴにおびき寄せようとします。
彼らの算段としては、シカゴまでおびき寄せて軍に処理してもらい巨大化した生物からサンプルを摂取し大儲け、みたいな感じです。
もう面白いくらいわかりやすいです。
絶対失敗するもんこんなん。
程無くしてどくでんぱのせいで目覚めるジョージ、直ぐに機内で暴走を始めます。
輸送機の中でバカみたいに暴れ回る巨大ゴリラと実弾で応戦する捜査官達。
いつでも輸送機が墜落する準備が出来てますね。
案の定、輸送機はコントロールを失い、パイロットも死に、ついでに外装も破壊され墜落し始めます。
ジョージの攻撃で完全にKOされたラッセルを含め、デイビスとケイトはなんとか機から脱出する事に成功します。
この辺りはもうテンプレ要素がたんまり仕込まれていて、ただただ楽しくなってきます。
そして同時に丁寧に描く部分が一通り終わったらしく、大味で大胆なアクションと展開の応酬がこの辺りから遂に始まります。
輸送機の墜落までの流れははその序章として上手く機能してると思いました。
・シカゴへ集結するまで
ラッセルはどちらかというと悪役且つ第二の勢力っぽい形で登場したんですが、物語が進むごとにどんどん味方キャラになっていきます。
なんならラッセルが作中一番柔軟なキャラでした。
そして、エナジー社がやろうとしている事を突き止め、それを阻止すべくデイビスたちはシカゴを目指します。
ここまででもそうでしたが、デイビスが元特殊部隊らしく様々なスキルを発揮し続けます。
アメリカ映画の元特殊部隊はいつの時代も万能で無敵で筋肉モリモリマッチョの変態。
この辺りでようやく軍の動きも活発に。
暴走したジョージと巨大化狼は一緒にシカゴを目指しており、軍はその途中の道でこれを迎撃しようとします。
ここでもPOVが用いられていましたね。
流行りもありますが何より臨場感を演出するのには超効果的ですからね。
ただ、本作の一人称視点で個人的に凄いと思うところが、カメラの揺れ方がめっちゃ自然なんですよ。
極端なブレも無く、かと言って極端に揺れが制止されてる訳でも無い、とても自然な揺れ方をします。
YouTubeとかでイラクに派遣された兵士のヘルメットカメラの映像とか観られますが、ああいう実際のカメラの感じに本当に近かったです。
意外とここ等辺のバランスって難しいっぽくて、上手くやっている作品は余りありません。
臨場感を演出したいがためにどうしてもどこか過剰な部分が出てきちゃうんだと思うんですが、本作のそれはマジでびっくりするくらい自然です。
ちなみに軍の作戦はやっぱり失敗し、シカゴへ巨大生物の侵入を許してしまいます。
様式美。
シカゴにデイビス達や巨大生物が集結するまでは繋ぎの要素が強く、映画的にもクライマックスに向けた準備パートみたいな部分だと思うんですが、
小刻みにアクションシーンを挟んだりして上手くグダグダを回避しているように思います。
要は映画全体の流れを作るのが凄く上手いのかと思います。
テンションは維持しつつ物語はしっかり進行していきますし。
この、テンションの維持に関しても本作かなり優秀だと思います。
・そして最終決戦へ
シカゴで暴れ回りながらエナジー社の本社ビルを目指すジョージとデカい狼。
軍隊も州警察も総出でこれに対処しようとしますが全く歯が立ちません。
この辺りの怪獣映画感と言ったらそれはもう凄いものがありますよ。
というか僕はもう正直これを求めて本作を観ていました。
なんというか、本作そのものも怪獣映画や旧来の特撮映画に対する一種のリスペクトを
ところどころ感じさせてくれます。
巨大なゴリラがメインに位置している時点でキングコングへのオマージュは絶対にやるだろうなとは思っていましたが。
2頭の巨大生物が暴れ回る中、更に巨大なワニが出現。
この時点まででもちょこちょこ描写はあったものの、ここでようやくの登場です。
コイツが何故か他2頭より圧倒的にデカい。
そしてダントツで無敵感を醸し出しています。
絶対ラスボスじゃん……。
この巨大ワニ、河の中を泳ぐ姿も地上に這い出て巨大な咆哮を上げる姿も、完全にゴジラを意識してきてると思います。
もうね、たまらんよね。
というかここからは完全に怪獣映画にシフトしてます。
ビルとかすっごく無駄にぶっ壊されまくりますし。
ジョージとか何故かビルの中にわざわざ一度飛び込んでから壁突き破って再び外に飛び出すみたいな挙動を取りますし。
エナジー社に辿り着く三頭の巨獣。
ビルを這い上り電波塔まで三頭が辿り着いた頃、人間パートもクライマックスを迎えます。
デイビス達とワイデン姉弟が対峙し、崩壊を始めるビルの中で攻防が行われます。
結果的に姉の方はジョージに丸飲みされ、弟の方はビルの残骸の下敷きになって死にます。
ついでに本社ビルも倒壊、巨大生物を巻き込んで完全に崩壊していしまいます。
この終盤の展開は人間たちに物語を進めさせて、
その間に巨大生物達にはひとしきり暴れてもらって、
最後には治療薬的なものを投与して無事に元通りになって、街は崩壊したけどハッピーエンドみたいな展開になると思っていました。
しかしこの後、ジョージが正気を取り戻してからが本作で一番美味しくて面白いパートだと思います。
というか、これがやりたいがためにわざわざDNAの改造だとかエナジー社がどうとかそういう設定で物語を肉付けしたんじゃないのかってくらいの圧倒的な盛り上がり方。
・怪獣と共闘する人間
ジョージが眼ざめ、デイビスと一通りのジョークを飛ばしあった後、丁度良いタイミングで狼とワニも目を覚まします。
そしてデイビスとジョージが共闘し、ワニと狼との最終戦闘に突入します。
ここからもう、なんというか、超楽しい。
こんな面白いモノ見せられて俺の中の小学生が目覚めないわけが無かった。
もうこの辺りから先エンドロールまでは「楽しい」と「超面白い」以外の感想が出てこないです。
僕の語彙じゃこの最終盤の、ラストバトルの面白さを伝える事なんてできないわけ。
そんなわけで、劇場を出たときの満足感たるや凄まじいものがありました。
■まとめ
非情に楽しめるアクション映画であり、モンスター映画であり、怪獣特撮映画でもありました。
映画の作りも、目的は何で今何をしているのかが非常に分かりやすいです。
映画全体の雰囲気が非常にバカっぽいというか、例えば『コマンドー』みたいな、ああいう80年代的なアクション映画の空気感を出しつつも、90年代以降のモンスター映画や怪獣映画のエッセンスと複合させ、それらをより昇華させたような作りになっているのかなと思います。
そしてお約束をしっかりと投入しつつ、最後にはご褒美的な大怪獣バトルまで用意されてるという。
ところどころにオマージュやリスペクトが見られるのも面白いところだと思います。
兎に角言えるのはアクションが好きな人とモンスターが好きな人、怪獣特撮好きな人は一見しない理由が無いくらいオススメの映画だという事です。
逆に、真面目さがあらゆる部分で欠如している映画でもあるので(そこが魅力の一つだと思いますが)
そこは好みが出そうです。
この予告見てそういう層が本作を観るわけ無いと思いますが!
とにかく良い映画でした。
楽しいが詰まってる。
ではまた。