趣味と向き合う日々

映画やドラマなどの映像作品を中心に気ままに書いています。

ザ・フューリー 烈火の戦場(2014年・アメリカ) バレあり感想 邦題がやらかしてるけど上質な戦争映画です。戦車映画としても良い出来。

 

僕達は『ハートアタッカー』で学んだはずです。

下手なノッカリ系二番煎じの邦題映画の中にも名作があるのだと。

 

 

 

『SAINTS AND SOLDIERS: THE VOID』(ザ・フューリー 烈火の戦場)

ザ・フューリー 烈火の戦場(吹替版)

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 Introduction

 

1944年。第二次世界大戦末期のドイツ。

ヒトラー亡き後も徹底抗戦を続けるナチスに対し、アメリカ軍を中心とした連合軍の戦車大隊は奇襲攻撃を決行。

最新の駆逐戦車であるM18ヘルキャットを駆るアメリカ軍、対するナチスの戦力は既に旧型のⅢ号戦車を中心としたものだった。

だが、両者の戦いは思いもよらぬ激戦を生み出すことになる。

 

 

 

 

感想

 

前々から目についてはいたものの、観る事は無かった本作。

アマゾンプライムビデオに吹替え版限定で配信来てたのでようやく観る事が出来ました。

 

如何せん邦題がブラピ主演の『フューリー』への完全被せです。

レンタルビデオ店あたりでの誤爆一点狙いのこの下品な邦題のおかげで、結果本作を観た事のある人は少なそうです。

 

言うまでも無く僕も本作を避けていました。

「どうせ碌なもんじゃねえ」とレッテルを貼り、観もせず貶していました。

 

 

それが大間違いであったという事を、まずここに書き残しておきたいです。

 

 

本作、かなり上質な戦争映画でした。

主に見どころとしては戦車戦になるかと思いますが、その中に上手くテーマを溶け込ませていて、しかもアクションもそれなりに頑張っています。

 

プライベートライアン』や『フューリー』のような、名実共に大作と呼べる戦争映画も確かに良い部分は沢山あります。

しかしそれらの大作戦争映画は、どうしてもエンターテイメント性を高めなければならないらしく、どこかに違和感が生まれます。

 

大抵の場合は作戦規模と戦力が見合わない、いわゆるメインキャラ無双状態みたいな事に(特に終盤の方は)なってたりします。

それは物語としての最大の盛り上がりを作るという点と、英雄譚としての強調の意味合いもあるのだと思います。

 

しかし、戦争映画の魅力の一つに理不尽、リアリティ、狂気の要素というのは欠かせないと個人的に思っています。

そういった黒っぽい要素っていうのは大作になればなるほど薄まるような気がします。

 

 

本作は、その辺りのバランスがとても気持ち良い作品だと思います。

ご都合主義っぽい要素もあるはずなんですが、あまりそれが表立って出ていない気がしました。

 

恐らく本作、一般的な大作映画のそれに比べたら確実に低予算です(それでも邦画に比べればはるかにお金はかかっていると思いますが、米国の市場規模的には中の下くらいなんじゃないでしょうか)

やってる事も目的も戦闘の規模もかなりショボいはずなのに、そこらの大作映画よりもよっぽど楽しめるという点が不思議です。

 

 

この映画、『Saints and Soldiers』というシリーズの第三作に当たるそうです。

シリーズはオムニバス形式で描いているようで、シリーズ間の繋がり何かは薄いらしく、結果シリーズ三作の邦題は全てバラバラで一見関係無さそうに見受けられます。

 

邦題担当大臣の悪い癖が詰まったような感じです。

しっかりした映画にはしっかりした邦題を付けた方が良いと僕は思うんですけどね。

 

ハートロッカー』に邦題を被せられた『ハートアタッカー』もこのパターンの作品です。

 

悪質な邦題とパッケージで露骨な釣りに興じた事で、悪い方向で話題になってしまった『ハートアタッカー』ですが、描いているものは全く異なり、それぞれ一線級の名作です。

 

本作『SAINTS AND SOLDIERS: THE VOID』もこれと全く同じパターンの作品です。

 

前置きが長くなりましたが、感想書いていきます。

 

 

 

 

まず、本作の時代設定はWWⅡのヨーロッパ戦線末期、1944年春です。

この時期は既にベルリンは陥落し、ナチスは軍機能が事実上崩壊していました。

 

本作の(恐らくは)ボス枠に当たるSSの指揮官が、訓練学校での教官から前線に復帰したロートルのおじさんだったり、Ⅲ号戦車が主力だったり、少年兵が当たり前のように前線で戦っていたりします。

ナチス側は正に末期という他無い状態です。

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一方のアメリカ軍は、最新型のタンクデストロイヤーであるヘルキャットを駆り、ナチ狩りに励む事になります。

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糞猫ですね。

『ワールドオブタンクス』のプレイヤーならこの駆逐戦車に対するヘイトは相当高いはず(今でもヘイト高いのか現役引退した僕にはもう分かりませんが)

 

アメリカ軍側は戦力も十分で、既に終戦したかのようなどこか気の抜けたムードすら漂っています。

 

 

映画の序盤はおもにそんなアメリカ軍を中心に描いていました。

物語の入り方としては、『Tali-Ihantala 1944(タリイハンタラの戦いを描いたフィンランドの名作戦争映画です)に近いです。

 

 

それとなく各登場人物が序盤にあらかた出てきて、それとなく序盤の物語が進んでいくような感じ。

意外とダレてないのが不思議です。

 

米軍内部に未だ蔓延る黒人差別なんかを交えつつ、少し緩い空気の中で各登場人物がさらっと出てきます。

 

各登場人物のキャラ付けがとても分かりやすいです。

長々と掘り下げるでもなく、ストーリーが進むに連れて自然に区別がつくようになります。

規律に厳しい黒人差別野郎と元糞猫乗りの黒人、ロイヤルさ漂う英国兵中尉、面白枠の装填手、とそんな感じでわりと抽象的に描かれている一方で、

実際にそういうやつは居るだろうなっていう不思議なリアリティのあるキャラクター描写だと思います。

ご丁寧にも、その他モブ枠の戦車乗り達はⅢ号戦車の砲撃で直ぐにお亡くなりになりますし。

 

 

 

そんな個性的な面々が集う米軍戦車部隊が、ナチスの残存勢力を一掃する為に奇襲をしかけに山岳地帯へ侵攻しますが、道中で逆に奇襲を受けるところから戦闘が本格化します。

 

この時点まで、ナチス側の描写はフラッシュバック以外殆どありません。

そのフラッシュバックの内容というのが、ナチスに捕らえられた英国軍兵士三人に、ナチスの士官がロシアンルーレットを強制し、生き残った一人だけを解放するというもの。

このナチスの士官が本作のボス枠のおっさんでもあります。

 

これはそのロシアンルーレットで生き残ったゴス中尉というメインキャラクターの回想シーンなのですが、そもそも実際に解放されてるのがシュール

 

 

ナチスを極端な悪として描いてます。

しかもこれ以降ドイツ軍の人物描写はほぼありません。

 

 

善悪を明確に分けてますね。

かたや抽象的なキャラクター達でいかにも人間的な組織のアメリカ軍、

かたや狂気じみたおっさんの元で機械のように命令を遂行するナチス

 

という形の、いわゆる典型的なプロパガンダ、英雄譚至上主義のようなよくあるタイプの映画

かと思いきや最後の最後、ボス枠のおっさんを倒すのがドイツ少年兵という毒付き。

 

極端な悪として描きつつも、しかし最後は人間性の話に収束させていて中々面白いです。

アメリカ軍の黒人差別という要素もそうですが、深層の部分ではかなり強く人間性に焦点を当てているように思いました。

 

 

 

 

そういったテーマの部分も良いですが、本作は戦車戦も中々魅力的です。

レストアしたものなのか改造したものなのか、その辺りはミリオタの皆さんにご教授頂きたいですが、とにかく戦車戦に対する情熱みたいなものが感じられます。

 

そもそも糞猫とⅢ号戦車の戦いをやりたいがためにこの映画撮ったんじゃないのっていうレベル。

 

チョイスが良いですね。

ヘルキャットはたしかにこの時期は新型なのですが、全面に渡って装甲は薄く58ミリ程度の砲でも正面装甲を抜く事が可能です。

その代わりに本作でヘルキャットが搭載していたのは強力な76ミリ砲です。

 

ヘルキャットは火力と脚は申し分ないですが、防御が著しく苦手といういかにもな駆逐戦車です。

 

 

一方、本作でナチスが用いているのはⅢ号戦車です。

この時点でもうティーガーパンターも実戦投入されています。

アハトアハトに連合軍がすっかり怯え切っている時期の話です。

流石に近代化改修してあるとは言え、Ⅲ号である事に変わりはないですからね。

 

 

この時代にⅢ号戦車なんて物を持ち出すしか無かった末期ナチスの哀愁たるや。

 

そしてそんなクソ旧型のⅢ号戦車にすらたやすく撃破されてしまう最新型の糞猫。

 

そういうシチュエーション的な面白さがありました。

また、新型と旧型の戦いを各勢力のお財布事情なんかと絡めて"ありえそう"なシチュエーションで描いているところが良いです。

 

細かい部分の描写も謎に拘っています。

砲塔旋回速度がⅢ号とヘルキャットで全く違っていたり。

 

そもそも戦車そのものをCGなんかで処理してない時点でかなり好感持てますけどね。

 

流石に一部の爆炎とかはCGでしたが。

しかもちょっと予算が垣間見えるクオリティの。

 

 

また、状況設定も中々に凝っていて、1両のヘルキャット対3両のⅢ号戦車という状況での奇襲の掛け合いなど、戦闘シーンや戦車の描写はそういうの好きな人にはかなり楽しめると思いました。

 

正直、邦題のパクリ元のブラピのあの映画よりよっぽど戦車戦しっかりやってます。

 

戦車戦が出てくる映画はこれまでも沢山ありますが、特に戦車戦そのものに注力したものは意外と少ないです。

バルジの戦い』とかは有名ですが、そういった戦車戦をメインに据えた映画は時代的には少し古いものが殆どであり、登場する車両もT-34あたりの余り物を無理やり改造してそれっぽくしているものが非常に多かったです。

また、シチュエーションとしても単純な撃ち合いに終始していたり大勢戦車を並べてドンパチ盛大にやったりみたいなものが大半です。

戦略大作戦や前述した『タリ=イハンタラ』なんかがむしろ異質でした。

 

 

そういう流れがある中で、本作は本当にこの戦車戦というものをこだわりを持って描いていると思うんですよ。

 

 

日本には女子高生と戦車が大好きで隙さえあれば茨城県に行ってしまうおじさんがたくさんいます。

 

だからこそ、戦車戦に注力している本作の邦題はもう少し拘ってみても良かったんじゃないかと個人的には思います。

結局ここに話が戻っちゃうんだわ。

 

 

 

まとめ

 

 

邦題に騙されずに(完全に騙す目的ですが)一度観てみてほしいです。

キャラクターも戦闘描写もテーマ性も全て申し分無い上に、その辺りのバランスも丁度良い映画だと思います。

 

正直、べた褒めしきれるかというとそうでもない部分もあります。

物語のテンポの部分で特に粗が目立つとは思うんですが、それを十分にカバーできるだけの戦闘描写への拘りとストーリー性のある映画なんじゃないかと。

 

 

オススメ度そうとう高いです。

ではまた。