アントマン&ワスプ(2018年・アメリカ) バレあり感想 ヒーローの活躍っていうより家族の物語がメインかも。あと、最後のあれね。
「いやしかし良い映画だった。
こんなに暖かくてハッピーな映画は久しぶりに観た。
良い気持ちで劇場を出られそうだ」
と思った矢先の出来事でした。
『アントマン&ワスプ』(Ant-Man and the Wasp)
■ストーリー
かつてシールドの任務中に量子世界に行ったまま命を落としたと思われていたジャネット・ヴァン・ダイン。
ジャネットの夫であるハンク・ピム博士は、スコット・ラングが量子世界から舞い戻ってきた様を見て、ジャネットがまだ量子世界で生きていると確信する。
そして、妻を取り戻す為に新たな装置を開発する。
一方のスコットは、キャプテン・アメリカの共謀者として自宅軟禁されていた。
FBIの監視下、残り数日で自由の身になるというタイミングでスコットはある幻覚を見る。
それはスコットがジャネットの姿となり、小さな女の子とかくれんぼをしているというものだった。
その事をハンクの電話に留守電で残したスコットだが、気が付くと意識を失っていた。
目覚めるとスコットは車に乗せられていた。
ハンクはスコットの見た幻覚がジャネットからのメッセージだと捉え、スコットから情報を得る為に強制的に自宅からラボへ連れ出したのだった。
ジャネットを量子世界に迎えに行くための装置の部品を闇ディーラーのバーチという男と取引に向かうホープ。
取引が拗れ、ワスプとなってバーチの一味と戦うホープだが、そこに突如スーツを着た謎の人物が現れる。
スコットもハンクから新たなアントマンスーツを渡されワスプの援護に回るが、スーツを着た謎の人物”ゴースト”は二人の追撃を交わし、縮小化されていたハンク博士のラボを持ち出してしまう。
スコットたちはラボを取り返し、ジャネットを無事に現実世界に取り戻す為にゴーストの足取りを追う。
そしてバーチもまたラボの技術を手に入れるべく動き出すのだった。
■感想
マーベルシネマティックユニバースとしては大20作目、アントマン単独映画としては第2作目となる本作。
20作品も同じ世界観を共有した映画があるって、いよいよ閉じコンに片足突っ込み始めるかもしれませんねこれは。
つい最近インフィニティウォーで盛大な振るい落としもありましたしね!
前作『アントマン』では、ハンク博士の後を継ぎ二代目アントマンとなるために奮闘するスコットの姿が重点的に描かれていました。
対して今作は、アントマンとなる事を禁じられ自宅軟禁されているスコットが、FBIの目を掻い潜りなんとかアントマンとして戦う姿を描いています。
また、前作ラストで存在を匂わせていた二代目ワスプが今作ではがっつり出てきます。
その為、いわゆるバディ物のヒーロー映画となっていました。
ヒーロー映画という側面で観ると、前作と今作では上手く構造も変わっているので新鮮さがありますし、アントマンとワスプのコンビネーションプレーなんかもかなり楽しめると思います。
また、今作ではスコット達、ゴースト、バーチの三つの勢力がハンクのラボを争奪し合うという話でもあるため、敵対勢力も2つ出てくることになります。
ただ本作はヒーローがヴィランと戦う、という部分がメインでは無く、あくまで主軸にあるのは家族の物語っぽいです。
家族という要素がかなり色んな部分に絡んでいます。
まず、ハンク博士の妻ジャネットを量子世界から取り戻す為に頑張る、という部分がストーリーの中心にあります。
その主軸に、シールド時代のハンクの部下だった男の娘であるエイヴァが絡んでいきます。
このエイヴァが今回の敵対勢力その1になります。
エイヴァの父親はハンクの元を去った後、独自に研究を続け量子実験を行うものの失敗してしまいます。
その余波を受けてエイヴァは肉体が不安定な状態となり、物質をすり抜ける事が可能となりました。
ビル・フォスターという、こちらも元ハンクの同僚でハンクと仲違いした研究者がエイヴァの保護者となり彼女の身体を治療するべく頑張ります。
そしてシールドがエイヴァの能力に目をつけ、彼女にスーツを与え盗み、殺人といった裏のお仕事をさせることになります。
シールド崩壊後、ビルの元で尚も治療に励むエイヴァでしたが、先が長くないという事を知り、強硬手段に出ることに。
ハンク博士が量子世界から妻を取り戻そうとしている事を知って、その妻のエネルギー的な何かを自分が吸収して生き延びようとします。
そんな感じでスコット達と敵対する流れになるんですが、
結構この辺り強引な気もしますね。
量子世界にいるジャネットからエネルギーを奪えば何でも通り抜けちゃう身体が治るっていう謎の確信を持ってエイヴァは全力で襲ってくるわけですけど、
その具体的な理由付けとかはとくに無かったように思います。
までもそこはビル博士がそんな感じの事を伝えているのかもしれませんしあまり気になる部分でも無いですけどね。
そんでハンク・ピム博士は昔はホントどうしようも無いやつだったんだなって……。
スタークさん一家との揉め揉めも、ハンクは散々にスタークを叩いてますが、結局ハンクが悪かったんじゃないかって、そんな気持ちにさせてくれます。
そういった背景から、このゴーストことエイヴァは別にそんなに悪い子じゃ無く、むしろ悲劇の被害者そのものだったりします。
近年のMCUの作品はヴィランにも複雑で人間的な理由があるというところを結構フォーカスしてますよね。
その中でも今作のゴーストはかなりかわいそうな部類で、何というか最早ヴィランですらないです。
そして敵対勢力その2のバーチさん。
闇市場で色んな武器やらパーツやら売ってる闇ディーラーです。
ちょっと古風な悪徳業者感を見た目から性格まで全体的に出しています。
こちらはエイヴァとは打って変わって完全に悪役です。完全なワル。
完全なクズなんですが、物語的には二軍的なポジションです。
あくまで物語の盛り上げ役、掻き回し役って感じ。
何せバーチ一味が居なくても映画的には殆ど問題ありませんからね。
エイヴァちゃんが良い子すぎるので、他に何かしら悪いの出さなきゃ話が盛り上がらないのも事実。
ただ、バーチ自体はとても良いキャラしてると思います。
「ナノテクも仮想通貨も古い、時代は量子だ。量子こそビジネスの最先端だ」と豪語するバーチ。
つい1作品前のMCUの映画で、ナノテクで作られたスーツが大活躍してましたね……。
IWと今作って時系列的には今作の本編の方が少し前の話だったりしますし。
そういうわけで、バーチ一味はお金儲けの為にハンク博士とジャネットの30年ぶりの再会を全力で邪魔しに来ます。
そんな感じの三つ巴にして、ヒーロー映画らしいアクションシーンなんかを上手く絡めていました。
アクションでは今作やたらカーチェイスが多かった気がします。
でっかくなったり小っちゃくなったりを駆使してロスの街を駆け巡るシーンは中々に見応えがあります。
アントマンの映画は基本的に戦闘シーンが笑いとセットになっていて、そういう部分も今作は健在でした。
あとはゴーストとアントマン、ワスプの戦いなんかも中々面白いかったです。
サイズ変わり放題の二人組となんでも通り抜けるウーマンの戦いですし。
ヒーロー映画らしい肉弾戦をしているのにも関わらず、特性的にお互いの攻撃があまりヒットしないっていうのが中々新鮮。
でもゴーストちゃん最後はハンク博士の乗った量子世界旅できるマシーンに轢かれてノックダウンしますけどね。
それは通り抜けないんかいっていう。
あとは今作、アントマンがやたらおっきくなるというかおっきくなりすぎるところとかもあって、特撮ファンも若干楽しめるかもしれません。
あとやっぱり全体的に笑いの要素が多めでしたね。
アントマンの映画の最大の魅力だと思いますし、この辺りが健在で良かったです。
シュールな笑いからストレートなものまで相変わらず多彩な仕掛けがありました。
個人的に好きなのはスコットに憑依合体したジャネットのシーンですね。
ハンクとホープ、ジャネットの三人がおよそ30年ぶりに(フライング気味ですが)再会できた感動シーンのはずなのに、
ジャネットの依代がスコットなせいでスコットが全力で女性っぽい動作を繰り出しながら女性っぽい話し方をしてる絵面のインパクトですよ。
あとはルイス達とバーチ一味の自白剤のやり取りとかもしょーも無くて好きです。
そんな感じで、基本は家族の再会の物語という部分にありながら、そこに上手く他の勢力が絡んできて色々面倒なことが起きるよっていう、そういう構成でした。
映画の終盤でハンク博士は無事にジャネットを救出できます。
また、救い出されたジャネットは30年の量子世界での生活を経て半ば超人化しており、身体が透けちゃって悩めるエイヴァちゃんを一瞬で治療してしまったり。
一方でバーチ一味は自白剤で自分達がやった事をFBIに自白してしまいます。
そして、最後にはスコットとホープ、そしてキャシーが三人仲良く映画を観ながらエンディングになると。
とんでもなく気持ちの良いハッピーエンドですよ。
劇中で提示されていた問題は全て解決して、スコットの人間関係も改善して、ついでに傾きかけていたルイスの警備会社も大口取引の契約に成功してみんなハッピー!!
やったぜマーベル!!
日本よ、これが映画だ!!
そして悲劇が訪れる。
MCU作品の伝統と化したエンドロールでのおまけカット。
これまでもこの部分に真のオチ的な要素が挿入されることは多かったですが、
今作はあまりにあざとすぎるハッピーエンドに対するカウンターの様な要素としか思えない大オチが仕掛けられていました。
ジャネット博士の救出からおそらく数日くらいは経ってる感じです。
ゴーストちゃんの身体を安定させるために、量子世界にスコットがエネルギーを取りに向かうというもの。
ハンク博士とジャネット、そしてホープが装置を操作しながら他愛もない話をしてます。
そしてスコットが量子世界にダイブ、エネルギーの回収が完了しハンクに現実世界に戻してくれと頼みますが、ハンクからの応答がありません。
スコットが量子世界に飛び込んだ後、ハンク博士とジャネット、そしてホープの姿は装置の前には無く、代わりに塵のようなものが舞うのみでした。
そして、量子世界に閉じ込められたままのスコットの恐怖の叫び声があがり、真のエンドロールへ……。
ド鬱エンド映画じゃねえか。
いよいよやったよこれは。
やった。
指パッチンゴリラはやっぱただのサイコ野郎だよ。
IWにアントマンが出てこなかった理由とかどう繋がるのかとか、その辺り期待はしてましたが、想像以上にエグい方向性の回答が出てきちゃいましたね。
折角30年ぶりにハンク達家族が再会して、一家そろってこれから幸せな日々が待ってるって時に、一家そろって消滅って。
アントマンは指パッチンで消滅しませんでしたが、代わりに量子世界に閉じ込められちゃってますし。
強烈なハッピーエンドから一転して何一つ救いが無い!
ただ、直前でジャネットがスコットに警告していた「時間の渦(時空の渦でしたっけ)」というものが気になります。
ジャネットは、そこには絶対入るなと強く警告してましたが、これがもしかしてサノス打倒のキーとかになったりするんですかね。
スコットは現状もう現実世界に戻れそうにありませんし。なんか絶対重要な要素な気がします。
アントマンという、言わばシリーズ中最も娯楽要素担当感が強い作品のオチすらもダークなものにしてしまう指パッチン。
これからのMCU作品もしばらく悲しいオチが続くのかもしれませんね。
■まとめ
前作で好評だった要素はそのまま、今作では家族の物語にフォーカスを当てています。
本格的などす黒い悪役というのは登場しませんが、前作と異なるアプローチでヒーロー映画としても作られています。
あらゆるところに笑いの要素が潜在していて、ずっと楽しめる良い映画だと思います。
ただ、やっぱり最後の最後で一気に映画の空気が変わります。
そこだけちょっとアレですが、個人的には相変わらず楽しめる娯楽作品だと思います。
ではまた。