ザ・プレデター(2018年・アメリカ) バレあり感想 いまいちパッとしない。けど好きな部分もある。
いまいちパッとしない(明度的な意味で)。
『ザ・プレデター』(The Predator)
■ストーリー ※ほぼネタバレ
実はプレデターは地球を侵略して新たな母星にしようとしていた!
そんなわけで人間は絶滅危惧種だ!
地球人全滅に反対した裏切り者のプレデターは追手から逃れて地球に降り立ったが、
妙な人間の組織に囚われたので、仕方なく人間を殺して回っていたら、
追手であるアサシンプレデターに脊髄ぶっこ抜かれて死んだ。
アサシンプレデターは裏切り者が乗った船を爆破してついでに人間狩りでもしようと寄り道的に人間に喧嘩を売ったら逆襲にあって死ぬ。
裏切り者が置き土産してくれたプレデターキラーと呼ばれるスーツを着てこれからは俺達地球人も狩る側に回るぜ!!アーハー!!!!
今回のプレデターはそんな感じの映画だ!!!
■感想
ちょっと複雑な気持ちになる映画でした。
・アクションがちょっと分かり辛い。全体的に画面が暗いです。
純正プレデターシリーズとしては第四作目に当たる本作。
これまでのプレデターシリーズってどれも微妙に作風が違っていたんですけど、
今作は流石にもう四本目なのもあってプレデターらしいアクション映画として作られていた印象でした。
最もこのアクションの部分がちょっと惜しい気もします。
暗いんですよね、AVP2に比類するくらいにバトルシーンが暗い。
施設の中で暴れるプレデターのシーンと、ラストバトルのシーンくらいしか明かりある中で戦わないですし。
暗いのに加えてアクションシーンのカット割りがかなり丁寧に切り刻まれてるので、これが結果的に空回りしていて何かしらが起きている事がわかる程度になってしまってました。
大画面で観るべきアクション映画なのに大画面なのが災いしてエライごちゃごちゃしてる気がしました。
あと、裏切り者のプレデターVSアサシンプレデターの戦闘シーンはもう少し長く観たかったです。
究極の存在であるアサシンプレデターが如何にヤバい奴なのかを描く為とは言え、プレデター同士の戦いって地味にシリーズ初ですし、もう少し色々あっても楽しめたかと思います。
そんでやっぱりこの二者の戦闘シーンもちょっと暗くてよくわかりませんでした。
宇宙船同士のチェイスシーンや戦闘機と宇宙船の戦いなども、これまでのシリーズには無かったアクションシーンですが、ここ等辺も余り濃く描く事はありませんでした。
最もこの辺りに関しては、そもそもそういう類の映画ではありませんし問題は無いんですけどね。
最後のアサシンプレデターと主人公クイン・マッケナとの戦いも意外とこう、あっさりしていたように思います。
究極のプレデターでも、晒した頭に弾丸何発も撃ち込まれたらそりゃ敵わんぜ。
今作のアクションに関しては、大画面では無く、むしろパソコンやテレビの画面で観た方が楽しめるかなって個人的には思いました。
円盤発売を待て。
・ところどころで笑わせにくる。そんで笑える。
本作、ユーモアで溢れてます。
プレデターシリーズは昔からこの辺りの要素は強かったと思います。
「キャンディ食べる?」とかもそうですし。
ただ、それらのジョークみたいなものって、相対的にプレデターの不気味さを引き立たせる要素としても出てきてた部分があると思うんですけど、
今作では物語の緊張緩和の為にそういったジョークが上手く用いられていたと思います。
切り刻んだ人間の腕にグーサインさせるプレデターが個人的にフェイバリット。
ただ少ししつこい部分もありました。
プッシ―問答の辺りとか。第一作へのオマージュなんでしょうけど。
また、主人公クインと行動を共にする軍のはぐれ者の皆さんの掛け合いもなんとも言えない面白さがありました。
彼らにフォーカスの当たるシーンは、そのまま笑いに直結する要素が含まれている事が殆どでした。
映画全体のメリハリがしっかりしていて、最終局面では一切そういったジョークシーンみたいなものは無くなり、戦いの緊張感が味わえます。
ここは個人的にかなりこの映画の好きなポイントで、終盤に至るまでの雰囲気が非情に"楽しい"んですよね。
楽しいんです。
バカな要素がたっぷりあって、アクションでど派手にやって(暗くてよくわかんないけど)、でも最後にはしっかり締めますし、それなりにゴアゴアな事も起きてるみたいな。
その辺りに関しては、凄くプレデターっぽい映画だなって思いました。
ぽいも何もプレデターの新作だったわこの映画。
・後付け設定で空回るのだけはやめて。
今作で、プレデター達が地球に来訪する理由や彼ら自身に関して、新たな設定がいくつか加わりました。
まずは、地球に来る理由。
端的に言うと、プレデターの皆さんが次の母星として地球を狙っているみたいな事でした。
そういうのは違うと思うんだ。
プレデターって、宇宙を舞台に狩りを楽しんでいる種族だからこそ魅力があると思うんですけど、
侵略要素が加わると一気にそこいらの映画の異星人となんら変わらなくなる気がしました。
それに過去の作品でもあくまで狩りを目的として地球に来ているって散々やっていたわけですし、今更ここに新要素は要らなかったんじゃないかと思います。
また、プレデターが狩りを行う理由そのものについて。
各惑星の支配種のDNAを採取して異種交配させて究極の生命体を生み出そうとしていたみたいな感じでした。違ってたらごめんなさい。
今作のアサシンプレデターが正にこの交配種な訳ですけど、
皆さんはこれ、どう思いましたか。
俺は結構萎えたよ。
キャラクターとしての魅力の根幹だったと思うんですよ、狩りの要素って。
とてつもない文明と技術を持っているのにやっている事は蛮族のそれっていう、そういう部分に惚れていたんですよ。
ところがここに極めて理性的かつ合理的な要素が付加された事によって一気に彼らの魅力が薄れたと思いました。
あくまで個人的な見解ですが。
そして何より、『プレデターズ 』の舞台だった狩りの惑星の存在意義が分からなくなる気がしますし。
狩りは好きだけど、DNA採取も目的にしているって感じなんでしょうか。
矛盾とかはしないですけど、なんかそれは……。
・クインの仲間達、ルーニーズ特殊部隊の死に様について。
終盤で一気に皆死んでしまいます。
どれも壮絶ですし、各主要人物の死に様もとてもしっかりしたシチュエーションが用意されています。
リンチとネットルズの二人は事故だと思って諦めるしかないですが。
しかし、いささか後半に詰め込み過ぎじゃありません?
かなり悲しいんですよ。
中盤までこの映画の緊張緩和に一役買っていた一同が死んでしまうんですから。
でも、後半、それも最終盤に一気に皆死に始めるわけですよ。
ハイペースすぎんかと。
ただ、個人的にはこれはアリかなとは思います。
サバイバル的な方向では無く、しっかりボスキャラと対面してから一気に皆死んでいくという展開は、それまでの空気感と一気に空気が変わって非常に緊迫します。
いわゆる主人公補正やメインキャラ補正みたいなものも感じられませんし。そういう意味でリアリティのある死に方です。
このギャップ差を狙ってのものなんでしょうか。
ルーニーズ特殊部隊の方々はこの映画のサブキャラクターでもありムードメイカーでもあっただけに、正直全滅するとは思いもしませんでしたが、その死に様はかっこいい感じで描かれていて、しっかりとキャラクターのケアをしているんだなってちょっと感心していました。
ただ、上にも書いたようにリンチとネットルズの二人はちょっとかわいそうな死に難しましたね。
特にネットルズ。
リンチはアサシンプレデターに唐突に殺されました。
これはもう、そういう映画に出てくるキャラクターとしてはむしろ正攻法的な死に様です。
ネットルズに関しては、ギャグとシリアスの狭間に引き裂かれたような死に方でした。
最終盤、アサシンの乗る宇宙船がフォースフィールド、エネルギーシールドのようなものを船体に展開します。
クイン、ネブラスカ、ネットルズの三名はこの時船外、というか船体にしがみついています。
そしてフォースフィールドが三名の元まで達します。
クインはフィールドの内側、つまり船に接触できる側に逃げる確定演出を、
ネブラスカはフィールドの外側、そのまま船が加速したら滑り落ちて死ぬ側に、
そしてネットルズはフィールドに上半身と下半身を切り離されてそのまま船体から吹き飛ばされてフェードアウト。
「あわーーー」みたいな感じで、落ちていくんですよ。
絶対シリアスなシーンなんですが、なんか彼の死に様だけ雰囲気が違う気がしました。
『バイオハザード 』のレーザーネットに特殊部隊が切り刻まれるシーンとかにも通じる、フィクションの中にあるシュールレアリスムが不思議な笑いを生み出しているのかも。
とにかく、サブキャラの皆の扱いとその末路も投げずに描いてくれたのは個人的に好きな部分です。
唐突に死ぬ系の恐怖描写に逃げてない。
・プレデターキラーについて。
映画のラスト、裏切り者が残していった置き土産をドクター山田とかいう人物と一緒に確かめるクイン。
中から出てきたのは如何にもヒロイックな見た目のスーツに変形するガントレットでした。
如何にも攻撃的な見た目をしていて、名前が名前ですからプレデターを倒す為に人類に裏切り者が残した切り札なんでしょう。
これを見たクインが「このスーツ俺が着る」みたいなこと言ってドヤ顔かましてエンドロールって感じなんですが、
このクリフハンガーのパターンはまずい……。
恐らくはこの置き土産であるプレデターキラーというものが次回作で重要な位置を占めるのかと思われます。
そもそも次回作があるのかどうかって話になりますが。
正直、プレデターキラーが出てきたシーンそのものは好きなんですが、これの登場によってあるのかもわからない次回作に期待が持てるかというとそこは微妙です。
狩られる側から狩る側に、っていう作風の変化は狙えそうですが、それってプレデターシリーズの良さがいよいよ死ぬ気もしますし。
『インデペンデンス・デイ:リサージェンス 』みたいに音沙汰無くなるのが一番怖いぞ!!
・個人的に気になったところ。
アサシンプレデターが、宇宙船を爆破させるシーン。
「人間同士の殺し合いを堪能させてもらったよ」みたいなことを翻訳機を介して伝えてきます。
今作、言語に関してやたら描写があったように思います。
地球の言語(特にアルファベット)とプレデターの言語は対応している設定は前からあったそうですが、今作ではここが全面的に押し出されていていました。
実際に翻訳されるシーンがあったり、わざわざ第四の壁の向こうの存在である観客に向けた字幕までプレデター文字になっていたりしました。
世界観を味わっていけ。
また、船を爆破する際に「一般人は逃げていいぞ。ただしマッケナ、テメーはダメだ」といった具合にアサシンプレデターがマッケナに喧嘩を売るシーンがあります。
マッケナは人類の上に立つ存在だから、みたいな理由も仰るんですよ。
有能な戦士だ、みたいな事も。
そんなわけで主人公のクイン・マッケナも覚悟を決めて終盤にアサシンプレデターに勝負を挑みに行くんですが、
アサシンの真の狙いはクインでは無くその息子のローリー・マッケナの方でした!おめーの席無ぇから!!みたいな事態になります。
アサシンはマッケナ呼びしかしてないのででミスリードを誘ったんだよって事なんでしょうが、なんというか全く腑に落ちません。
絶対途中までクインの事を指名していたでしょ。
ただ、それまでもこのローリー少年が天才である描写は嫌という程あり、急なストーリー変更なんかでも無さそう。ストーリー的に、息子が捕らわれないと山場作れ無さそうだからそうした感が物凄く出ている気がする場面でした。
■まとめ
個人的には劇場で観るよりもレンタルとかで楽しむと良いと思いました。
いかんせんバトルシーンが分かり辛いです。
大画面である事がマイナスの要素になっています。
ギャグシーン的なものはかなり豊富で、適度なテンションブレイクのバランスになっているので観ていて疲れませんし楽しい映画ではあります。
あくまでプレデターシリーズとして、プレデターというキャラクター像を前提として創られた作品といった印象でした。
少なくとも『プレデター』『プレデター2』と繋がりのある世界の話なので、シリーズを観ている人ならとりあえず観てみてもいいのかなと思います。
ではまた。