咲-Saki-(2017年/日本) バレあり感想 咲を知っているか知らないかで評価が全く変わるおもしろ映画。
この映画を真に楽しむまでに踏破するべきステップは多いです。
しかしその先に待っているのは、これまでの日本の実写化映画作品に感じるソレとは明らかに異質な、かなり広義な意味合いでの漫画的な面白さです。
咲を知ってるならマジで観るべき。
僕がそんなこと言わずともファンの殆どはもう観てますけどね。
むしろ咲を一切知らないで観るとどう観えるのか気になる。
『咲-Saki-』
■ストーリー
かじゅ「私は君が欲しい」(部員獲得)
文堂「通らば、リーチ!」(振り込み)
透華「おはようのどっち」(終局)
のどっち「そんなオカルトありえません」(観測)
池田「リーチせずにはいられないな」(特大火力)
咲さん「カン!カン!もいっこカン!麻雀って楽しいよね!」(幼女崩壊)
21世紀…。
世界の麻雀競技人口は一億人の大台を突破。
我が国、日本でも大規模な全国大会が毎年開催され、プロに直結する成績を残すべく、高校麻雀部員達が覇を競っていた…。
(咲-Saki- 1巻 より)
■この映画を楽しむには
この映画、まずドラマ版が先行して存在しているのでそちらの視聴をお勧めします。
アマプラでは実写咲のドラマ版一期と今回僕が観た映画版の二つは会員特典で見放題でした。
この映画は咲の県大会決勝を実写化しているので、そこに繋がるドラマ版のストーリーは知っておく必要があります。
ドラマ版を見ることで最低限の準備は整うものの、この一連の実写化作品の面白さはまだ十分に味わえません。
咲の実写化作品は、コミックスやアニメ版への執着とも取れるほどの異様な再現が最大の特徴です。
全体的には映像作品として寄せられるアニメ版の色が強い気がします。
演者の外見や衣装、セリフ、カメラのカット割り、果てはキャラクターの声質すらアニメに寄せる徹底ぶり。
という事で、アニメ版の視聴もオススメです。
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スピンオフ作品の阿知賀編も実写化されているので、時間に余裕のある方は 阿知賀編のアニメもオススメですが、とりあえず一期のみの視聴で準備は整うはず。
原作コミックスでは県大会は一巻から七巻までの話なのでこちらもオススメですが、
アニメ版がそもそも結構エグめに原作再現をやっていた高クオリティ作品なので、一先ずはアニメ咲を観ておけばいいはず。
このアニメ版を観た上で改めて実写化された咲を視聴してみると楽しさが増すと思います。
卸したての皺一つ無い衣装に身を包んだ女優やモデル、アイドルがよく分からない演技をしながらよく分からない麻雀用語を連発していただけの実写化作品に見えていたはずが、元ネタを知る事でその裏にある原作再現の執念に嫌でも気づくはずです。
アニメ版にそっくりな声のキャラもいればまんま外見も原作キャラそのままの人もいて、おまけに闘牌シーンでの能力バトルすら丁寧な演出で忠実に再現。
しかも咲さんはかわいい。
何から何まで徹底的な再現に拘った結果、実写化映画特有の違和感を殺し切る事に成功しています。
ここまで徹底的な再現をやった作品はマジで少ないと思います。見事すぎる。
この映画、つまり原作(アニメ版でも良しです)を大前提に、
元々の咲の物語の内容やキャラクターの能力を知っている事が前提の映画となっている訳です。
それを知らないと本当に面白さが半減すると思います。
映画版で端折られている要素や改変された部分なんかも、元の作品を知ってる事が前提なチョイスだと思いますし。
要は完全に新規層獲得を無視したファン向け作品。
だから事前にドラマ版とアニメ版の視聴をオススメします。
■感想
俗世から閉じコン呼ばわりされて久しい漫画『咲-Saki-』。
その咲の実写化ドラマが放映されたのは2016年の暮れでした。
実写化の情報が解禁され、キービジュアルが公開されて直ぐに、ファンの多くはその再現度のクオリティの高さに驚きます。
そして、ドラマ自体の出来も原作やアニメのファンに向けての、それら再現ドラマのような作りになっていました。
そして、2017年に映画として県大会での戦いが実写化されました。
公開当時、僕の住んでるエリアの直近の映画館のどこもこの作品を公開していなくて血涙を呑んだ記憶があるんですが、最近アマプラで観つけたので遅ればせながらようやく視聴できました。だからこんなタイミングで記事書いてます。
映画のテンポ感
映画開始13分で県大会決勝、一時間ほどで決勝戦大将戦という鬼のハイペース。
そして大将戦はじっくりしっかり描いています。
面白いですよね、大将戦。
全国大会や阿知賀シノハユ含めた全ての対局の中でも上位に来る面白さだと思ってます。
原作漫画、アニメ共に特徴的だった回想シーンの多様は若干控えられていて、比較的すらすらと話が進んでいくので非情に観やすいです。
前述した通り、そもそものストーリーを知っている事前提だからこそではあると思いますが。
しかし抑えるところ、即にセリフ周りや闘牌シーンの再現はきっちりやっています。
端折られているシーンも多いです。
特に出場選手のバックグラウンドに関する描写はかなり削られています。
最低限の部分だけ抽出している感じでした。
このハイペースの中で名台詞やらなんやらぶち込む事に注力しているので、やはり原作やアニメ版を知らない人からすると意味不明な映画になっていそうな感じがします。
キャラクター再現
外見の再現では文堂さんがマジで圧倒的すぎる。
一強と言っても過言じゃない。
メンバー全体の再現度としては鶴賀が一番雰囲気もそっくりだったように思います。
ワハハとかむっきーとか、鶴賀はモモとかじゅ以外この時点ではあまり活躍というか出番は無いんですが、リアルに居たらああいう女の子だろうなって思わせるような仕草や表情が凄い上手い。
また、キャップこと福治美穂子やタコスこと片岡優希、東横モモは声の面でもアニメに非情に似せています。
タコスはドラマ版の時点で身長以外完璧やら釘宮理恵の後継者やら言われていましたが、映画版で更にそういった声枠が増えるとは思っていませんでした。
この再現度にはマジでビビりました。
もうこれだけで相当面白いです。
単なるモノマネ学芸会の域を遥かに超えた何かがそこにはあります。
そして咲さんはかわいい。
シーン再現
闘牌シーンへの力の入れようも中々の物でした。
咲という作品の最大の特徴である、能力バトル麻雀という要素をふんだんに楽しめます。
それ以外の面でも、細かいながらもファン的には実写で観てみたいと思うようなシーンのチョイスが多かったように思います。
現実にやったら死ぬほど怒られるであろう、久のワイルドなツモシーンを実写で観る事の面白さたるや。
おはようのどっちの、和のスタンドがお目覚めするシーンとか何故か凄く力入れて描いていて笑いました。
このシーンでは和の髪色ガッツリピンクになってますが、恐ろしいほどに違和感が無い。
リアルの女の子がピンク髪になっているのに。すごいや。
面白かったシーン
実写版久保コーチの怒り慣れていない感ね。
この久保コーチ相手なら池田でも勝てそう。
これが狙っているのか定かではありませんが、最後の久保コーチに励まされる池田のシーンの見方が原作とちょっと変わります。
久保コーチに関しては『 咲日和』で散々イメージ変わってますけど改めて、こういう久保コーチもありだなって。
副将戦のステルスモモの演出とか好きです。
副将戦は、映画でも最初は透華と和の二者にスポットを徹底的に当てているので、モモの存在は徹底的に消えてました。
そして和に振り込んだ後の「私の捨て牌が見えるんすか……!?」ってセリフ実写だと面白さハネてます。
何言ってんだこいつ感が8割増し。
セリフで言えば藤田プロが大将戦で発した「あえて振り込んだんだ、ハイテイ三連続から逃れる為に」とかいうのも実写だと相当面白いです。
衣がハイテイで和了れる事が当たり前っていう前提のこのセリフね。
実写というフォーマットで能力バトル麻雀を観る楽しさってのに目覚めますねこれ。
そんなん今のところ咲しかないですけど。
衣さんは全体的に、不気味演出にかなり特化されていました。
瞬きを殆どしないんですが、それが不気味さに直結していたりしますし。
声や演技に関しても衣さんだけは原作再現というより、実写らしい不気味さを優先しているような感じです。
そのおかげか劇中でもかなりの異物感を醸し出していました。
散々原作再現に注力した作風で、あえてこういう外し方をしてキャラクターを引き立てるっていうの面白いです。
あとは、仮眠室でのエトペンのひと悶着とか改変されていました。
元々は和のエトペンを悪い女が拉致して、それを衣さんが取り返して和に渡すというものでしたが、映画版ではエトペンを咲さんがゲットする事で、咲さんがダッシュで試合会場へと向かい和にエトペンを渡して良い感じの空気になる、和と咲さんの百合演出へと繋げる形に。
ていうかこのシーン、今更ですが咲さんよく迷わず一発で試合会場まで行けたね。
そして大将戦はやっぱり実写でも面白かったです。
咲さんの嶺上開花地獄に始まり、それを槍槓で止めるかじゅ。
そしてノータイムで衣さんのハイテイ地獄へバトンタッチ。
確実に欲しい嶺上牌をツモれる咲さんと、フィールドそのものを支配できる圧倒的な衣さんの二人に必死で食らいつくノーマルの加治木ゆみ。
池田は絶望する。
この辺りがやっぱり最高でした。
咲というコンテンツを一番楽しめる部分だと思います。
そして何より裸足でリラックスして覚醒する咲さんかわいい。
■まとめ
咲さんかわいい。
いきなりこの映画を観ても何が何だか分からない上に真面目に麻雀をやってないお下品な映画に思えるかもしれませんが、原作漫画やアニメ版の咲を知っておくと、非常に楽しめる要素が多くオススメ出来る映画に化けます。
漫画の実写映画としても徹底再現というあまり見られない方向性で作られていますし、個性的だと思います。
僕はかなり好きな作品でした。
実写版の阿知賀編のドラマもオススメです。
ではまた。