アトラクション 制圧(2017年・ロシア) バレあり感想 墜落した異星人と恋愛する映画。
SF文化交流系ラブストーリーでした。
『アトラクション 制圧』
(Притяжение)
ネタバレ要素がある感想記事です。
■ストーリー
隕石雲と共に堕ちてきた宇宙船から異星人が出てきて、地球の女の子に恋を教わった。
■感想
序盤、宇宙船が墜落するまでの流れがホント最高です。
「周回軌道上に何かある云々の流れ」とか「あれは巨大な隕石か何かだろう気にするなHAHAHA的流れ」とか、
そういう類のSF作品でよくある焦らしを一切捨ててます。
1ミリも無駄なく、”宇宙船が堕ちるまで”のシークエンスを完璧にこなしてます。
「軌道上から何か来た、あっ宇宙船かこれダメだ撃墜しなきゃ」「撃墜できた」
くらいにまとまってました。
あとこの序盤の墜落シーンはビジュアル的にも凄く良かったです。
宇宙船の墜落が市街地に及ぼす想定されうる様々な被害を物凄く沢山詰め込みつつも、同時にその墜落シーン自体に美しさを内包させています。
そして街は封鎖され、戒厳令が敷かれ、半壊した市街に取り残された人々はただお互いを励まし合う事しか出来ないのです。
これからどんなハードなSF活劇が展開されるのか。
こんなに素晴らしい導入をしてくれるこの映画、しかしここからラブストーリーを中心に添える事になる訳です。なんでじゃ。
序盤の急ぎ足すぎる怒涛の展開にも納得です。
メインで描きたかったのは異種間での恋愛劇だったのなら、確かにハードSF大好きオタクが喜ぶような要素は蛇足なのかも。
ただ異星人との恋愛とは言いつつも、ビジュアル的にはヒューマノイド同士です。
要はちょっと後ろの設定が奇抜なタイプのラブストーリーです。
『トワイライト』みたいな。アレはまたアレでアレな作品ですけど。
物語の中盤からは主役の女の子と、その子の今彼くんと、エイリアンの間で絶妙な流れと共に三角関係が築かれていって、
クライマックスでは今彼くんはエイリアンに女取られて元カレになって「地球は俺達のモンだ!」と声高らかに叫びながら大衆を扇動し、市民を引き連れエイリアン陣営との戦いに赴くことでSFの世界にこの映画を引き戻してくれます。大事な役割。
大勢の市民が宇宙船の付近に押し掛け、ロシア軍もアタフタしながらそれを止めつつエイリアン側もちょっと狼狽えつつなんとか愚かな地球市民の暴動を抑えようと頑張っている中、
この攻撃を扇動した張本人の元カレくんは、盗んだ異星人スーツ着こなして主人公である元カノのケツを追いまわします。
それがこの映画のクライマックスだよ。たっぷり味わえ。
感情の部分で良くも悪くも無駄が無い進化をした異星人と地球人のティーンエイジャーとの交流という物語は、ベタではありつつもやっぱりホッコリしてしまう部分があり嫌いにはなれませんでした。
というか普通にその手の映画としては面白いですよ。この映画。
エイリアン侵略系SF映画だと思って観てしまうからダメなんであって、
これは地球人と異星人が交流する中でお互いに何か得ていく系の、例えるならば年齢層上げたET的な、ちょっとそれはかなり違うけど、とにかくそれ系の映画だと気づけばあとはもう楽しいだけです。
ひとつ挙げるとすると、序盤の墜落シーンで主役の女の子は親友を亡くしています。
この出来事が後に異星人との間に何か軋轢を残すのかと思いきや中盤以降、その要素そのものが全く消えてしまいます。
そこだけ残念というか、(事故ではありますが)親友を殺したエイリアンと普通に恋する感情が理解できませんでした。
■〆
"ATTRACTION"ってタイトルは単純な引力っていう意味では無く、お互いの魅力に惹きつけられたみたいな、そっちの意味合いなんでしょうね。
最後に愛が争いを終わらせましたし。
でも制圧ってなんだよ。
そんな要素は無いどころか真逆の事をやってた訳で、制圧ってどこから湧いて出てきたんよ。
ではまた。