アンブレイカブル(2000年・アメリカ) バレあり感想 一味違うリアル感が魅力。
現在公開中の映画『ミスター・ガラス』が近所の映画館でやってなかった悲しみを、シリーズ過去作の感想記事へと繋げていけ。
『アンブレイカブル』
(Unbreakable)
ネタバレ要素在ります。
■ストーリー
列車事故の唯一の生存者であるデヴィッドが、妙な事を言う中年に付き纏われる。
■感想
漫画の世界で描かれるヒーロー像は誇張されているだけで、その手の特別な人間は実際に存在すると信じて疑わない男イライジャ、通称"ミスターガラス"。
そんなイライジャに、物凄い死者を出した列車事故の唯一の生存者であるデヴィッドが付きまとわれるというのが主な流れ。
この映画は全体的に物凄くゆったりとしているというか、単調です。淡々でもあります。
でもその中で、イライジャが脚を引きずりながら人を追った結果脚部粉砕して車椅子になったり、デヴィッドが息子に拳銃向けられて必死にそれを止めさせようとしたり、
とにかく色々イベント、出来事は描かれているんです。
ゆったりしているというか単調な感じがするのって、単にカット割りが極端に少ないからなんでしょうか。
長回しでワンカット頑張ってるシーンがものすごく多いですよね。シャマラン監督ってそんな感じの撮り方する人でしたっけ?
ただこのゆったり感、気持ちの悪いタイプの物では無く、
むしろ映画の雰囲気を形作る中でかなり重要な役割を担っている気がします。というかものすごく魅力的ですらあります。
この映画、要はヒーローの存在を信じて疑わない人が、厳しくて夢も希望も無い現実世界でヒーローを探し回ってたら遂に見つけちゃったという話です。
そこに在るべきは現実感です。
だからこの映画は淡々としているんだと思います。
しかもデヴィッドがイライジャのいう事を妄言と捉えるのを止めて、実際にヒーロー活動を始めるまで、
ここに至るまで実に一時間以上という、マジで驚くほど長い時間をかけてます。
その甲斐があるというか、物凄くしみじみとした気持ちでデヴィッドの初陣を眺める事が出来ます。
現実的に考えて有り得ない事を少しずつ自分の中で噛み砕いていって、ちょっとずつ試行して確認してから、いよいよ本番を迎えるという流れ。
多分そういうリアルさが面白さに繋がっているんだと思います。
映画の最後に、これまで起きた色々な大惨事の多くは"ミスター・ガラス"が漫画のヒーローのような人間を探し出す為に、意図的に引き起こしていた事が判明します。
このラストシーン、物凄く悲しいです。
世の平和を守る存在を探していた男が、実は世の平和を乱してしまっていたという物凄く悲しいオチです。
イライジャはヒーローが存在し得るという可能性を自らの壊れやすい肉体の対局として見出して、その可能性にのめり込んで、その結果デヴィッドという本物を見つけ出したわけですよ。
そこに悪意は無いんですよね。
ヒーローを探す為にやっていたことが原因で、最後は本物のヒーローであるデヴィッドに普通に警察に通報された後、精神病棟へ収容されるという、物凄くいたたまれない終わり方。
この構造自体はヒーローの基本メカニズムに忠実で面白いです。
悪がいなけりゃ英雄は生まれないっていうやつ。
ただその悪側が無自覚なのが何とも言えない味を生み出してます。
■〆
個人評価:★★★★☆
映画の最後、デヴィッドとイライジャのその後について、
止め絵に字幕で語られるという謎にノンフィクション風の終わり方で、そこだけほんのちょっと飯吹いちゃったんですけど、よくよく考えたらこれもまた現実感を演出する為のものなんですかね。
こんな映画も併せて観たいの枠。
・『スプリット』
アンブレイカブルと同じ世界観のお話とのこと。僕はまだ観たこと無いのでこの記事書いた後観ます。
・『ウォッチメン』
ヒーロー映画だけどちょっと血色が違うものがまだ観たいというそこの貴方に。
・『シックス・センス』
シャマラン監督と言えばこれ。伝説。
・『エアベンダー』
シャマラン伝説に終わりを告げ、彼の評価をマントル近郊まで落としてみせた一作。
BGMの代わりも務まらないレベル。
ではまた。