沈黙の艦隊(1994年・日本) バレあり感想 潜水艦が国として独立宣言する、という出オチでは決して終わらせない物凄く重厚な作品。
かわぐちかいじ作の同名タイトル漫画を原作としてアニメ化されたのが本作です。
劇場公開された映画とかでは無く、テレビ放映用のアニメという事で、なんともタグ付けが難しいです。
あと、セガールでは無い。
『沈黙の艦隊』
ふわっとネタバレしたりします。
■ストーリー
日米間で秘密裏に建造された原子力潜水艦シーバットが独立国家”やまと”として独立を宣言、米第七艦隊をあしらう。
■感想
かわぐちかいじさんの作品は僕は『ジパング』くらいしか知りませんでした。
それもアニメ版しか僕は知りませんし。
アニメ版のジパングってめちゃくちゃ面白くて、しかも最後とてつもなく続きが気になる、かなり良いところで終わってしまうんですよねあれ。
たしか主人公の角松さんがタイムスリップで生じたとてつもない事態に気づいて「うおおおこれからどうなる!!」ってところでアニメ版は終わってしまうんですよ。
二期は未だに無さそうですと言うかもう無さそうで残念です……。
そんなアニメ版ジパングで覚えた消化不良感実に十数年分をぶつけるべく、遂にこの沈黙の艦隊に手を出しました。
しかも、やっぱりアニメ版で。
いやこっちも良いところで終わるんかい。
ビックリした……。
そういうスタイルの作風なのかとすら思いましたよ。
"シーバット"改め"やまと"が第七艦隊を攻略し、潜水艦キラーを下し、そしていよいよ次は日本へ……というところでエンディング。良い曲が流れますね。
たしかに展開には丁度良い感じ、セーブするならここだよね感はあるんですけど、
やまと(というかこの独立戦争の仕掛け人である海江田さん)が成そうとしている目的が達成されるのかどうか、ところまでは描かれていません。
基本的に戦闘描写が多く(しかも華の90年代作画ですよ)、それはそれで僕みたいな頭アレ系は喜びの余り叫びそうになるくらい満足してしまうんですが、
一つの作品として観た場合に物凄く中途半端なところで終わるので、モヤモヤします。
※この記事を書いた後に改めてググり、続きがOVAで制作されていた事を知りました。きんたまばくはつ
でも、中途半端なところで終わるという難点があった上でも、やっぱり面白いですね。
「原潜が国家独立宣言しちゃう!」という奇抜さ一点張りでは、決してありませんからね。
これはジパングも同様で、引き込み方が非常にトリッキーなんですよね。
物凄くエンターテイメント性を感じさせる設定ですし、起きているのも現実としてまずありえないだろうという緊急事態です。
その上でこのアニメは物凄く現実的な方向性の肉付けがなされています。
人々の思惑、国家間の対立、果ては日本という国の在り方というディープな部分までカバーする異常さ。
やっぱりこれもギャップなんでしょうね。このギャップが面白さの本質そのものだと思います。
またこれもジパングと同様なのですが(ジパングの方が後発なのでこの言い方は違和感凄いですね)、
米兵たちがやたら余裕な態度、いわば舐めたような態度で日本の艦船と戦闘を行い、次第にヤバさに気づき始め、最後は結果返り討ちにあうというのが基本的な流れです。
現実的に今後も見られる事は無さそうな本気出した日本や自衛隊、実はかなりヤバいんだぜ感を表面的には描いてその手の輩に配慮しつつ、
実のところそうでは無く、キャラクター描写の範疇でこれを処理しているのも面白いです。
要は天才を描く為の踏み台として、日本の本気はヤバい系の、その手のネタを落とし込んでいる感じ。
■〆
多分、沈黙の艦隊のフォーマットから政治的要素、重厚なミリタリー描写、そして男だらけ要素を排除すれば、誰でもお手軽に俺TUEEEEEEE系作品の雛型が作れると思います。
それくらいこの作品(アニメ版だけしか知らない上で言ってますが)の型は上手いと思いました。
ではまた。