空母いぶき(2019年・日本) バレあり感想 戦争をしない為の戦闘という矛盾と戦う人達の物語。
かわぐちかいじの作品に出てくる天才気質の軍属キャラ基本的に好き。
『空母いぶき』
ネタバレ有りです。
■ストーリー
独立国家東亜連邦を名乗る集団に占拠された島を奪還する為に、空母いぶきを中心とする第5護衛艦隊が出動。
専守防衛の理念と、史上初の防衛出動の発令、その狭間で揺れながらも作戦遂行の為いぶきは東亜連邦との戦闘に突入する。
■感想
いかにもかわぐちかいじっぽい設定と登場人物達がわんさか出てくる映画で、好みは絶対に分かれると思います。
主人公の秋津は空自から転属して海自に所属するエリートであり、軍師タイプのキャラ。トリッキーな戦略を展開していきます。
それに対して新波副艦長はどちらかというと堅実な判断を優先するキャラです。
この二人の小さな対立と和解の流れは、この映画の見所の一つだとは思うんですが、
シンプルに秋津が天才過ぎて、対立というより一方的なマウントに近い状態になってたりします。
トリッキーでちょっと不気味さも内包する天才キャラ。これを観に行ったまである。
そういう部分がやっぱ好み出ると思うんですけど、僕はわりと好きなんですよね。
この手の天才キャラは敵だったりある種の対抗勢力である事が多い中、今作は主人公がこのタイプなので、それはそれで新鮮だったりします。
本編ですが、史上初の防衛出動発令と、それによって実戦を行う事になった第5護衛艦隊の活躍を中心に描いています。
もし本当に防衛出動が発令されたら政府や自衛隊はどのような判断を下しどのように行動するか、という部分がかなりリアリティのある描かれ方をしていました。
国防の為の武力装置である自衛隊は、それ故に相手が撃つまでこちらから攻撃が出来ないという制約があります。
そして戦闘状態になったとしても、攻撃に際して人命第一とした作戦立案を行っていました。
死と隣り合わせの実戦と平和維持の為の部隊という側面の矛盾で葛藤する様なんかもかなり濃く描いていました。
攻撃してきた敵に対しての反撃方法なんかでこの点はかなりストレートに描写されてましたね。
相手を撃沈する事で数百名の命を奪ってしまう、それを避ける為に人員の被害を極力抑えた反撃方法を採らざるを得ないというエクストリームすぎる状況の連続です。
多くの人命を奪う事で敵に反撃と戦線拡大の口実を与えてしまうというのはもちろん、ともすれば戦争に発展する直接的要因になりかねない為です。
雷撃してきた敵潜水艦に対して第5護衛艦隊の潜水艦はやしおは、雷撃で返すのではなく潜水艦同士の体当たり、ダイレクトアタックによる無力化を選択しますし、
敵駆逐艦を無力化する際にも、ハープーンミサイルや魚雷による攻撃では無く、護衛艦の主砲によるピンポイント射撃で敵の攻撃手段を潰すという方法を採ります。
こうしてなるべく敵の命を奪わないという事を前提に立ち回る護衛艦群ですが、味方の自衛官に死傷者が出てしまったり、敵空母からの艦載機との戦闘では撃墜もやむなしと判断したり、理想的な盤面を整える事は出来ず、最後まで苦しい戦闘を強いられます。
これはしかし自衛隊だからこその苦悩なんですよね。
日本は絶対に戦争をしない、その戦争を回避する為に行う戦闘という特殊性がよく現れていて面白いです。
一方で、防衛出動によって動揺が広がる日本国内の描写なんかもありました。
あるコンビニを中心にそれを描いていたんですが、正直ここはそこまで要らなかったんじゃないかと思います。
コンビニのシーン結構な頻度で挿入されますが、本編本軸にはほぼ関わってきません。
キャラクターもかなりしっかり目に描かれるんですが、本軸との繋がりの薄さがやっぱどうしても気になります。
もっとアバウトというか全体的に国内の動揺を描いても良かったと思うんですが、どうなんでしょうね。
ぶっちゃけ観終わってちょっと困惑したんですよね。
あの一連のコンビニのシーンなんだったんだろって。
■〆
個人評価:★★★★☆
重そうだし難しそうな雰囲気のある映画ですが、そんなこと無かったです。
というかむしろテーマがかなり明確で、場面の繋がりも分かりやすいと思うので結構見やすい部類の映画なんじゃないかと思いました。
ではまた。
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