アルキメデスの大戦(2019年/日本) バレあり感想 戦艦大和が生み出された理由に対する解釈がかなり面白い。
夏と言えば戦争映画。
実話に着想を得たフィクションという立ち位置の映画。
VFX周りに期待して観に行ったんですが、次々と主人公達に降りかかる難題と、その先に待ち構えていた全ての真相に完全にやられました。
『アルキメデスの大戦』
アルキメデスの大戦 (Original Motion Picture Soundtrack)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
えっ!!空母とほぼ同じ値段で戦艦建造を!?
■感想
次期新造艦建造計画を進める会議で提出された新型空母案と新型戦艦案。
山本五十六らはこれからの時代は空母であると確信するも、会議は戦艦の建造に傾きます。
そこで山本達は、提出された新型戦艦の建造にかかる費用の見積もりがあまりにも安すぎる点を突き、戦艦の建造を断念させる事を思いつきます。
そこで元東京帝国大学数学科の学生であり、百年に一人の数学の天才とかつては目されていた櫂直(かいただし)に、新型巨大戦艦の見積もりの再計算を依頼します。
櫂は帝国海軍所属の少佐となり、この新型戦艦の見積もりの嘘を暴くべく翻弄します。
最近あらすじ手抜き過ぎてるからちゃんと書こうかなって……。
軍機に阻まれ碌な情報が手元に無いところから、わずか二週間足らずで巨大戦艦の見積もりを再計算するという無茶をこなすべく、櫂とその付き添い人となった田中少尉の二人が奔走するのがこの映画の内容です。
この部分の作りが面白く、次から次へと難題が降りかかる中で、櫂の天才ぶりを堪能できます。
例えば、実際の戦艦を文字通り体験する為に、横須賀に寄港していた戦艦長門に乗り込み、しれっと図面を拝借しつつ艦全体をメジャーで図って回ったり、
全く製図経験の無い状態から図面を作成して見せたり、
予定よりも早まってしまった会議に間に合わせるべく、土壇場で方程式を編み出したりと、現実離れした天才がその頭脳と行動力で状況を打破していく様を存分に楽しめました。
そして櫂達の頑張りにより、巨大戦艦の建造計画は白紙になりハッピーエンド、とはなりません。
櫂達がずっと見積もりの再計算に奔走していた件の新型戦艦とは大和の事です。
史実では実際に建造され、実戦投入もされています。
つまり櫂達がこの計画を、建造費の側面から崩して阻止したところで映画が終わるなど、誰一人として思って無いわけですよ。メタ視点を上手く使いやがる。
じゃあどうなるのかと、どうして大和は建造されたのかという疑問に対する回答は、映画の最終盤に用意されていました。
大和の建造計画を提出した造船少将の藤岡も、実はアメリカとの戦争は避けられない且つ負け戦になる事を理解していました。
しかし当時の日本人の「負けを認めない」気質にも理解があり、このままアメリカと戦争になれば日本は破滅すると確信していました。
そこで、国を象徴するかのような巨大な戦艦が沈めば、流石の日本人も心が折れて負けを認め、最悪の事態を回避できるはずだと考えます。
その為に、あえて時代遅れ(になるのはもう少し後の話ですが)の巨大戦艦を建造しようとしていた、というのが事の真相でした。
この解釈、個人的に凄い好きなんですよ。
日本って元々は空母先進国だったわけで、それなのに戦艦に固執している節があるような気がしていて何か引っかかっていたんです。
特に太平洋戦争以降に登場する巨大戦艦の大和と、同型艦の武蔵って、なんか無駄感あるなって。批判では無いです。気を悪くしたらごめんなさい。
もうこの頃って完全に空母の時代なのに、なぜ巨大戦艦を造ったのか、という疑問に一つの解釈としてこの映画で描かれたみたいな話が実際にあったとしたら面白いですし納得のいく解釈なんじゃないかなと思いました。
■〆
個人評価:★★★★☆
例によって戦争関連の映画なのでそれだけで星が跳ねます。公平性など無い。
殆ど一瞬ですが長門やら赤城やらも出てきて満足。
大和という巨大戦艦の活躍や悲哀を描くのではなく、建造された真の目的という部分にフォーカスしているのが面白いですね。
無論このオチともなる真の目的、つまり、正に日本の象徴とするに相応しい様な世界最大の巨大戦艦が沈みさえすれば、「負け方を知らない日本人」でも流石に諦めるだろう、という部分はフィクションだと思います。
でも、そこにIFの意図を仕込んでオチにしているのってなんかオシャレで良いなって思うんですよ。
ではまた。

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