パッセンジャー(2016年/アメリカ) バレあり感想 ご都合展開に目を瞑れば凄く良い映画だと思います。
「早起きは三文の徳」ということわざに全力で喧嘩を売れ。
『パッセンジャー』
(PASSENGERS)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
120年かかる星間航行中に一人だけ90年も早く目覚めてしまったジム、絶望の船内生活がスタート。
■感想
片道120年くらいかかる星間航行中の船内で、90年ほど早くコールドスリープが解除されて起こされてしまったジム・プレストンが、苦悩の末に選んだ選択にけじめをつける映画。
予告の最後で「目覚めたのには理由がある」なんて言うので、ジムが先に起こされた本当の理由があるのかと思いきや、起こされた理由は機械トラブル。
ジムがエンジニアだったのは思わせぶりな偶然。予告お前!!!
一年半近く孤独に過ごした後、忍耐力の限界が到来し、魅力的に感じた女性乗客のオーロラさんを意図的にコールドスリープから目覚めさせ、その事実を隠して良い感じに二人で船内生活をエンジョイするジム。
孤独に一生を船内で過ごさなければならない苦しみから、身勝手と分かっていながらもオーロラを起こしてしまう、そんな人間性のリアルをあえて描いた点は意外です。
でもどうにも煮え切らないです。エゴだよそれは。
嘘も無事にバレて二人の仲が最高に冷え切る中で、新たにガスという男が目覚めます。
ジムとオーロラは乗客だったのに対して、ガスはアヴァロンの甲板長、クルーの一人でした。
ガスのおかげでブリッジや機関室へと足を踏み入れる事ができるようになり、アヴァロン全体が映画冒頭の巨大隕石の激突に対してエネルギーを余分に使った事で、システムエラーが起きまくっている事が発覚。
三人はエラーを止める為に奔走……という流れになるのですが、なぁなぁの内にジムとオーロラの確執が流されたように感じて、あまり好きでは無いです。
危険な状況に挑むジムに対してオーロラが放つ"You die,I die!"というセリフの絶望的説得力に震える。
その後に訪れる、融合炉の廃熱シーン。
自動では廃熱する事が出来ず、手動で放熱を行わなければならない状況になるんですが、無理やりピンチな状況を作って盛り上げようとしている感じを受けてしまいます。
そして、ジムとオーロラのやり取りにもやっぱり気持ちが乗りません。
突然訪れた危機の中で何となく仲直りしたあげく、何故かジムの事をオーロラは愛してやまず、という謎すぎる状況。
ちなみにガスは目覚め方が悪くて死亡してしまいます。新エリア解放する為のアイテム枠みたいな扱いはやめろって。
中盤から終盤にかけて、特にジムとオーロラの関係が拗れてからはストーリーがかなり雑に感じました。
個人的にこの映画の前半部分はとても好きです。
孤独に耐えつつ必死に解決策を探しながら、船内生活もそれなりにエンジョイしている辺りは、絶望感を漂わせつつ一方でワクワクした雰囲気も感じられます。
前半はアンドロイドであるバーテンのアーサーとのやりとりを初めとしたロボットとの交流が沢山出てくる点も好きです。
ジムが直面している絶望的な状況を、ロボと交流しているシーンの緩い雰囲気が紛らわせてくれます。
ロボのデザインもそうですが、船内の景観であったり宇宙遊泳のシーンであったり、そういうところで出てくる細かい技術であったり、未来感の演出に力が入っている点もとても好きです。
危機を乗り越えた後、医務室のスマートな診察台が冷凍睡眠機能を備えている事がわかり、オーロラをその中で眠りにつかせて一人孤独に船内生活を送る事を決断したジム。
90年後にクルーが目覚めた時、船内は自然に溢れていて、ジムがどんな余生を過ごしたのか想像させてくれます。
ジムとオーロラのラブストーリーの描写の雑さと、後半のご都合展開以外は好みの要素が多い映画でした。
■〆
個人評価:★★★☆☆
片道120年かかる旅の中、一人だけ90年も早く目覚めてしまった男がその状況に翻弄されながらも徐々に対応していく前半の話は好きですし面白いです。
また、未来感の演出だったり結末の展開だったりも個人的にはツボにハマりました。
ただオーロラを目覚めさせてからジムの嘘がバレて険悪になり、二人の関係が拗れて以降の展開がどうしても雑な印象がぬぐえず気になります。恋愛ドラマとして成立していない感じ。
この映画は、下記の動画配信サービスで視聴する事が出来ます。
ではまた。