タイム・トラップ(2018年/アメリカ) バレあり感想 物凄く悲惨な事態に陥っているはずの主人公たちが終始前向き。何かが狂ってる。
浦島太郎タイプの映画です。
『タイム・トラップ』
(TIME TRAP)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
時間の流れがゆっくりになる不思議な洞窟、そんなシステムなど知る由も無く次々と洞窟に突入する人々。
一刻も早く洞窟を出ないと、外の世界はどんどん時間が進み、取り返しがつかなくなってしまう。
■感想
行方不明となった両親を探している教授がいて、その教授が行方不明になったので学生が教授を探しに行って、そして洞窟を発見し、
中に入り込んで冒険活劇崩れをやるといった内容の映画でした。
洞窟の中の時間軸の進みはとても遅いため外の世界との時間に圧倒的な差が生まれてしまいます。
しかも洞窟内には"若返りの泉"なるファンタジックなHPを全回復してくれるスポットが存在します。
この映画のジャンル何。
洞窟の中では時間の流れが違うという設定。面白そうじゃないですか。
これが最終的にどういう結末に繋がるのか、どんな驚きが待っているのかを期待して視聴していましたが、「状況を受け入れる」という、面白すぎる結論をこの映画は提示していきました。ぶん投げてない?
洞窟内に入り込んだ若者たちは、外と中で時間の流れが圧倒的に違う事に気づき、
自分達の生きていた世界が外では遥か過去の世界となっている事に衝撃を受けます。
この事実に対して主人公たちはひとしきり動揺しますが、それ以上は何もありませんでした。
一番美味しいところなんじゃないんですか、ここ……。
その後に原始人と戦ってみたり原始人に追われたりなんやかんや盛り上がりどころらしいパートが挟まれ続けて、この事実に対するリアクションは流されていきます。ぶん投げてるよね?
時間差の理由についてですが、若返りの泉を守る為の防衛機能として洞窟内の時間の進みは遅くなっていたという事みたいです。
では、その結界のようなシステムを構築したのは誰なのか、自然の意志なのか、そもそも若返りの泉とは何なのか、その辺りには一切触れられる事はありません。ぶんなぐるぞ。
また、若者たちの会話のテンポと、事実が発覚する直前にやたらタメが入る点が個人的には好みに合いませんでした。
最終的に若者たちは、未来人たちの力添えもあり洞窟を脱出する事に成功します。
そこは洞窟内に居た人々からしたら数千年は未来の世界で何もかもが違う、人の姿すら変質した世界です。
それなのにハッピーエンド風に締めようとする力技の応酬は必見ですね。
教授は無事に行方不明だった両親と妹と洞窟内で再開していたので、そのまま未来世界で家族が全員集合するという結末。
若者達もなんやかんや死者を蘇らせたりして、全員未来世界にて再開を果たしています。
「こっちの世界では私達有名人なのよ?」とか「話せば長い」だとか、後から救出されて目覚めたキャラ達に意気揚々と話す洞窟勢。
そして、まるで全て出し切ったかのように流れ始める音楽とエンドロール。
もはや潔い。
ところで、主要キャラの一人にファービィという少年がいます。この少年は仲間の若者たちに付いていかず、洞窟の外で待機していました。
数日たっても仲間達が帰ってこないので洞窟の中へ入る事を決意しますが、ロープが切れ落下し重症。トドメに洞窟内に居た原始人に殺害されてしまいます。
その後、仲間達が若返りの泉にファービィをぶちこみ未来人に救出されるのですが、
彼からしたら目覚めたらいきなり超未来の世界ですよね。
まだ子供ですよファービィ。両親もとっくの昔、遥か過去に死去していますし地球は荒廃していますし、そんな状況にいきなり放り込まれる訳ですよ。
そもそも洞窟の中では時間が~とか、そういう諸々を何一つ把握していない状態で目覚めます。
ファービィ流石にかわいそうすぎませんか?
捉え方次第では、面白そうなモノが沢山詰まった映画とも言えます。
原始人と現代人と未来人が1つの空間に存在するという状況も楽しめると思います。
極端に若者向けでも無く、堅苦しい系でも無く、無難に全世代のあらゆる層が楽しめそうな要素を、出来るだけ投入した映画みたいなイメージです。
これって結局ターゲットが広すぎてぐちゃぐちゃになるのは明白なんですけど、あえてそこに挑戦したのものなんだと、僕はポジティブに捉えています。
不思議な泉と時間差洞窟と未来要素を、設定面とストーリー面で(後付け臭がキツくとも)つなげようとしていたり、
キャラクターの個性もなるべく前面に出していたり、努力の痕跡はいたるところに垣間見えます。
設定とストーリーの雑さを踏まえても、クソ映画という程悪い出来の映画というわけでは無いと思うんです。
■〆
個人評価:★★☆☆☆
雑に設定をポンポン投げ込み拾いきれなくなった結果、主人公達はもう二度と家族や友人に会えず、周りの人間達の姿もかけ離れたものになっている世界で生きていかなければならなくなる結末を迎えます。
しかしその状況をハッピーエンド風になんとか締めくくろうとしたこの映画、むしろ面白いです。
誰がどう考えたってバッドエンドにした方がすんなりと行くのにハッピーエンドをチョイスするって、メンタル強すぎませんか。
それを成し遂げようと戦ったこの映画は、もしかしたら名作なのかもしれません。
僕はアリだと思いますよ。もう二度と観ないですが、そういう投げ方もあるんだなーって楽しませてもらえました。
この映画は、以下の配信サービスでも視聴する事が出来ます。
ではまた。