スターシップ9(2016年/スペイン) バレあり感想 前半で衝撃展開を畳みかけたあと、後半でストレートな恋愛逃避行モノになる映画。
『パッセンジャー』とは似て非なるアプローチ。
『スターシップ9』
(ORBITA 9)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
はじめて外の世界を知った女の子と彼女を守る為に奮闘する研究者の愛の逃避行。
■感想
ネットフリックスオリジナルドラマ『ナルコス』の制作チームが参加している映画だそうです。ナルコス観てないんですけどよくオススメに名前が挙がっていますし面白そうですね。
それこそこの映画はドラマシリーズとして描いたら面白そうだなと思いました。
前半と後半で大きく性質が変わる映画です。
この映画で描かれる前半後半の内容をそれぞれシーズン分割してドラマ化すれば、いくらでも内容を詰め込めそうな世界観なのに、それをせず映画サイズに収めている豪華さみたいなものを感じます。
地球環境の悪化を受け移民先の惑星へ数十年かけて向かう宇宙船。
酸素供給機の不具合で両親は船を降り一人残された少女エレナの元へ、エンジニアのアレックスが供給機を直しにやってくる、というのが前半の展開です。
そしてこの宇宙船は実はシミュレーターで、アレックスもエンジニアでは無く将来実際に訪れる恒星間航行へ向けた試験に携わる研究員である事が早々に明かされます。
アレックスがエレナの元を去ったと思ったらなぜか地球っぽいところにすぐ現れて脳内クエスチョンまみれにさせて直ぐにこの事実を理解させるスピード感にやられました。ドラマだったらシーズン1のオチに使われるようなレベルのやつ。
箱庭実験みたいなものですね、実際劇中でもシミュレーター内の人間をモルモット呼ばわりしてますし。人権。
そしてアレックスはエレナが登場するシミュレーター"ORBITA9"へ、監視を掻い潜って戻りエレナを外の世界に引き連れます。
現実の地球は今の文明レベルより少し先を行っている程度の、絶妙な近未来感がある世界なのが個人的に好きです。あと謎にサイバーパンク味のある街景にやられました。
アレックスがエレナに箸の持ち方教えてるシーンさり気ないけど味があって好き。
箱庭実験モノのままもっと引っ張ると思ったらアッサリと彼女を助け出すのが中々珍しいというか、変な勿体無さすら感じました。
そして後半では、エレナが連れ去られた事に気づいたシミュレーターを運用している企業が放った追手からアレックスとエレナが逃げるというもの。
前半は物語上の衝撃展開をいっぱいやっておいて後半は一転して逃避行一点集中って感じになってます。ここからは良くも悪くもよくある映画の範疇に収まるレベルの内容ってイメージ。
最終的にエレナがアレックスの子を妊娠した事と、それに関して恐らくある条件をアレックスが企業の偉いハゲの人に必死に提示して交渉した結果、アレックスも一緒にシミュレーター内に住む事に。
そして、それから更に時間が経った世界で、二人とその子供がシミュレーターから出てくるシーンでこの映画は終わります。
エレナ達がシミュレーター内で生活を続けた事で宇宙開発に貢献できたのかどうか明確には描かれませんが、ラストシーンで人類が恒星間飛行に成功した事を示唆する演出があり、エレナ達が外に出てこれたのはそういう事なんだと解釈してます。
前半に対して後半はかなりシンプルに恋愛要素を描いていました。
それと、悪人っぽく描かれていたシミュレーターを運用する企業のトップ連中が意外に情に厚い系だった事が最期の最後で発覚して、地味ながら後半の驚きポイントでした。
そもそもずっと人類のため!って言ってましたもんね。多くの作品でそういう事を言う連中は暴走しがちなのでバイアスかかってました。まぁ人は殺してしまってるんですけどね……。
■〆
個人評価:★★★☆☆
SF的な面白さや意外性を詰め込んで惹きつけてくる前半と、恋愛劇にシフトして逃避行を描いた後半、大きく前後で雰囲気が変わる映画でした。
普通に面白く最後まで観れましたが、やっぱり前半と後半で微妙に視聴するテンションの切り替えが求められる感じもある気がします。
スターシップ9はアマゾンプライムビデオ他、下記の配信サービスでも視聴できます。
ではまた。