ATM(2012年/アメリカ) バレあり感想 偶然を手柄と思い込む犯人と3人のバカを眺めるだけの90分。
酷すぎて楽しいとはこれ如何に。
『ATM』
(ATM)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
三人の若者が立ち寄ったATMの外に危険そうな男が居て怖くて出られない。
■感想
いや出ろよ。
三人の男女が適当な理由付けの元ATMに立ち寄ったところ、奇人の目に留まり死の恐怖に苛まされる、というソリッドシチュエーションスリラーを目指そうとした何か。
オチもクソも無いので先に言ってしまうと犯人は三人の誰とも関係の無い、ただのシリアルキラー気質の男です。
無関係な一般市民を陥れ殺す為だけに綿密な計画を立てていただけの人でした。
それ自体は個人的には良いと思います。
動機の無い悪意みたいなのはシリアルキラーの魅力の一つに成り得ると思いますし。
引用元:『ATM』予告編 https://youtu.be/tgWmeF6v0lE
ただ超計画的無差別殺人犯とは思えない描写が多すぎます。
事前準備して犯行に及んでいたらしい事が終盤で発覚します。
それならATMのドアが故障していて誰でも入れるようになっていた事も把握しているんじゃないでしょうか。入れよ。
ただ入ってこない理由は後付け的に一応存在します。監視カメラに映りたくなかったと。うーん……?
そんでATM内に入れない(試そうともしない)から、裏口を壊そうと試みたり、マイナス21度という外気を活かし、暖房含む電気系統を破壊して外に三人が出ざるを得なくしようとしたり、試行錯誤する始末。なんで……。
或いはATM内で恐怖におびえ苦しむ様を楽しもうとか思ってたんですかね。
犯人の初期装備は防寒具のみで他のツールは現地調達していたり、通りすがりのおっちゃんも警備員も直ぐ殺したりします。
なのに、なぜかATMの管理人はスルーしたり。
それらの偶然と瞬間的な判断が、結果として犯人の痕跡が残されない事に繋がるのですが、無理がありすぎですよ。
そもそも三人の若者の誰か一人でも携帯電話を持ってATMに入っていたらその時点で通報されて終わりでしょ。
あたかも全ては掌のうちでした風に計画を立てているシーンや、同じようにまた別の場所で同じような事を準備する描写がエンドロールでドヤっと何発も挟まれます。
これ納得した人いるんでしょうか。
この映画のオチは、若者の一人が全ての罪を着せられてしまう、というもの。
ですが最初からそれを狙っていた風に描写される事にはとにかく違和感しかありません。
劇中、断片的にATMのカメラの映像がカットインしてきたり、犯人が悉くカメラに映る位置には来なかったり、凶器も自分では用意していなかったりと、辻褄は合いますし伏線回収の流れだって綺麗なんです。
でも、それらを遥かに上回る幸運と偶然の結果でしかないのがこの映画の結末だと思います。
なのに、なにあの最後のドヤっとした感じ。なにもう!!!
そんな犯人に偶然目を付けられてしまった三人の若者も負けず劣らず滑稽な連中でした。
映画の都合でバカにならざるを得ない系のキャラクターが三人も観れます。
ATMの外に怪しい男が居る事に気づいてからクライマックスに至るまで、誇張抜きに全ての行動が理解できません。
武器を持ってるかもしれない!とか仲間が居るかもしれない!とか、いちいち尻込みしてATMから出ない理由作りに励んでました。
引用元:『ATM』予告編 https://youtu.be/tgWmeF6v0lE
そうこうしている間に、犯人は無事に若者たちの車から工具セットを見つけ出して凶器をゲットしますし、何もしなくても勝手に若者たちはATMに居てくれるし戻ってきてくれるので、さぞ楽に事を運べたでしょうね。
もはやこれはチームプレイでしょ。犯人と三人の若者の呼吸が完璧に合っています。
犯人は一人で状況的に仲間も居ないし武器も無さそうと分かった時点でいくらでも策は講じれるのに、馬鹿の一つ覚えみたいに「他に選択肢が無い」とか抜かしてATM内に引きこもって、それで凍え死ぬ~とか、そんなモノ観て面白いと思う訳無いじゃないですか。
それで偶然にも犯人と似たような防寒着を着ていただけのATMの管理人が入ってきたら、慌ててこの管理人を絞殺する始末。
人違いだし、男一人なら倒せるという事を描いてしまう意味が分かりません。
ただ、それも結果としては、若者の内の一人が罪を着せられる流れに繋がります。
が、あくまで結果論なんですよ。
話の筋やそこで起きる事件が悉く結果論を前提にしたものでしか無いんですよこの映画。
他にも色々、とにかく粗が目立つどころの話では無いです。
後半、犯人がATM内に大量の水を流し込みはじめ凍死させようとしてきます。
この時点で若者のうち一人は既に瀕死、応急処置を試みれば女性が発狂し、それが収まったかと思えば男の方は良い考えが思いついてしまって瀕死の仲間を放置と、間髪入れずにバグムーブかましてきます。
そしてうっかり殺してしまった管理人のポケットからライターを発見し、スプリンクラーを起動させてなんとか警報を鳴らして助けを呼ぶという流れに。
色々酷いこの映画で、このシーンが個人的に一番酷いと思います。
棚の上に男が乗ってライターを警報機に近づけて「届かなーい!届かなーい!」とかやってるの。女の人を肩車したら良くない?
そうしてる間に足元はどんどん水が溜まっていきます。でも届かなーい!をしばし繰り返す男。
ようやく肩車したら届く事に気づき、女性を肩車して警報機を作動させることに成功。
喜びもつかの間、うっかり男は転倒し、女性は強く頭部を強打し絶命。
おふざけで主要キャラ殺すな!!
■〆
個人評価:★☆☆☆☆
入り口でカードをスキャンしないと入れないATMがある事を学べました。
この映画は下記の配信サービスで視聴できますが、よっぽどの事が無い限りは観るべきでは無いと思います。
ではまた。