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パラサイト 半地下の家族(2019年/韓国) ネタバレあり感想 笑いながら観ていたはずなのにいつの間にか真顔になるタイプの映画。

 

 

観た後に色々と考えさせられる映画好き。

 

 

『パラサイト 半地下の家族』

(기생충/PARASITE)

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画像出典元:映画『パラサイト 半地下の家族』オフィシャルサイト

 予告:

youtu.be

 以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

 

 ストーリー

 富裕層に取り入ってお金を吸い取る。

 

 

 感想

全体的にブラックコメディ調の作風でありつつも、そこに内在する強烈なメッセージが魅力的な映画だと思いました。

 貧困層と富裕層という韓国だけでは無く日本人にとっても今では痛烈に響く格差問題を軸にしているものの、その実態は貧困層同士、下側の人間同士の不毛な対立とそれに翻弄されつつもダメージは殆ど受けない富裕層という構造を喜劇的に描いている、中々尖った作品だと思います。そりゃパルムドール獲るわって感じ。

 

主役であるキム一家の面々は、いずれも立場を偽って富裕層のパク家に文字通り寄生して生活を工面します。

立場や経歴こそ偽るものの、キム一家の面々の持つスキル自体は本物である点が面白いです。

それだけの技能を持ちながらも貧困層となってしまう社会システムや階層構造の問題点を描いているようにも思います。

それとなく設定に落とし込んで、あくまで表層はコメディとして成立させているので楽しく観る事ができました。

 

中盤以降、別の地下の住人の登場、というか発覚によって貧困層同士の対立が明確になり、これが原因で最後はキム家の計画が崩壊するという流れになっていました。

別の地下の住人、キム家がパク家に寄生する過程で強引に退職させられた家政婦の夫が、実はパク家の隠された地下に住んでいた事が発覚し、彼らは自分の生活を守る為にキム家と対立することになります。

 

キム家の計画の過程で、パク家の運転主も家政婦も簡単に解雇されていきます。

コメディ的に上手く隠されていますが、雇用主と従業員の不均衡な立場を描き出していて、これが原因で後半の下層の人間同士の対立に繋がっていて、あらゆる面で格差社会の問題点を物語に落とし込んでいる作品だと思います。

下層の人間は生活する為には椅子取りゲームに参加せざるを得ないという状況を、この映画で言えばパク家に取り入る事が出来るかどうかという部分で描いているようなイメージ。

 

その結末は、下層の人間同士の対立によってキム家の計画は完全に崩壊し、長女は死亡し父親は行方不明(パク家の秘密の地下室に潜伏しています)、長男と母は実刑判決を食らうという散々なもの。

そしてこの事件を機に、長男ギウが「富裕層になって父を救いだす」事を誓った手紙を父に向けて描くシーンと、彼が富裕層となり父親と再会するシーンが交差して幕を閉じます。

 

あのラストシーン、富裕層となったギウの姿というのは多分ギウの計画の中のイメージであって、実際に数年後のギウの姿を描いたものではないと思います。

貧困層の姿を誇張気味に(それこそ半地下や地下の住処の貧困層と、高台に住む富裕層という物理的に分かりやすい高低差を付けて)描き、彼らはその立ち場で生活のやりくりをしている姿をこの映画は一貫して描いている様にも見えます。

家政婦の夫で地下に隠れ住んでいた男グンセの「今の生活が楽なんだ」というセリフがそれを端的に表しているんじゃないかと思いました。

裏返せば、わざわざ富裕層を目指さなくても生きていけてしまう実情を描いていると僕は解釈してます。

キム家がパク家の外出中に、パク家のリビングで団欒するシーンでの会話は、富裕層に対する憧れの気持ちがありつつも、どこかその富裕層に自分達が成る事は有り得ない、というような諦めに近い気持ちもある雰囲気を感じました。文系だから気持ちの読み取り得意なんだわ俺。

 

だからこそ、ギウの最後の成り上がりを誓う姿には一見ポジティブなメッセージやギウの成長が込められているようで、実は真逆でとても非現実的な妄想に縋っているようにも見えてしまって、僕はちょっと心にしこりが残る終わり方だと思いました。

 

 

 

色々な事を考えさせられる映画ですし、コメディの中に仕込まれた毒が観賞後に効いてくる中々濃ゆい後味の内容だと思うんですが、登場する女の子がことごとくかわいくてこれを中和してくれるので安心できました。

 

 

 

個人評価:★★★★☆

 

貧困層が富裕層に取り入る様をブラックコメディ調に描きつつも、その本質根本にある格差社会の問題点も自然に描き出した傑作という印象です。

エンターテイメント性のかなり高い映画で、散りばめられた伏線の回収の美しさや、中盤終盤と二度も訪れる衝撃展開、そして会話劇の面白さなどでどんどん物語に引き込まれていってとても楽しめる映画でした。

 

ではまた。

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