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マウス・オブ・マッドネス(1994年/アメリカ) ネタバレあり感想 何が現実なのか分からなくなる狂気まみれの映画。

 

狂気度が高すぎる。

 

『マウス・オブ・マッドネス』

(In the Mouth of Madness)

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 マウス・オブ・マッドネス [Blu-ray]

予告:

youtu.be

 以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

 

ストーリー

 失踪した人気ホラー作家の消息を追っていた男が狂気に呑まれていく。

 

 

感想

もろにクトゥルフ神話を意識した作風ですし、クトゥルフ神話の小ネタを随所に散りばめているので完全にそっち系が好きな人向けな映画かと思いきや、意外としっかりじっくりと正常な人間が狂気に陥っていく過程とその裏に潜む超常の存在を描いていて、一見さんお断り的な元ネタ前提の映画という訳ではありませんでした。

 

主人公の回想という形で、主人公が失踪した人気ホラー作家の消息を辿っていく内に、次々と怪奇現象に見舞われ続け、最後には自分自身が物語の登場人物の一人でしかない事を理解してしまい、しかしそれがまた現実でもあるという事実を認識して永久的狂気に陥る様を描いた、もろにクトゥルフ神話ベースで宇宙的恐怖満載な一作。

クトゥルフ神話のフォーマットをフル活用したはてしない物語みたいな映画というイメージを受けました。

はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)
 

 

主人公ジョンが失踪した小説家サター・ケーンを追って辿り着いた町が、ケーンの書いた小説に登場するホブの町そのものであり、中盤辺りまではまるで小説の世界に迷い込んでしまったかのような形で物語が描かれます。

ところがジョン自身もまたケーンの描いた作品の登場人物である事が示され、そもそも彼の観ていた世界や彼の視点を通して僕たちが観ていた劇中世界の全てが本物である事を嫌でも分からせにきます。

現実的なシーンから不気味な世界へと繋がっていく様が異様に静かですが、しかしはっきりと意識してしまうような作りや、例えばこっちからしてみたらヒロイン枠として認識していたスタイルズ助手すら中盤からオフェンスに回り始めたりといった、予想を超えた展開などもたくさん盛り込まれていて、それらすべてに精神を揺さぶられまくるので凄く面白いです。

 

ケーン視点で観ればメタフィクションの範疇で描かれる映画でもあるんですが、最終的に劇中でマウス・オブ・マッドネス』の映画をジョンが観るシーンが登場し、視聴者参加型コズミックホラーへと変貌するのでいよいよ訳が分からなくなります。

ジョンにとっての現実が正に今自分達が観ている映画そのものであるというオチを付け観客すら強引にこの世界に引きずり込む(或いはそもそもこの世界もまた人知を超えた存在が作った世界である事を意識させる)ような形で、宇宙的恐怖を直球で体感する事ができるという素敵な構造。皆さんもこのアトラクションの一部なのでもう逃げられませんよ、みたいな。

映画を観ながら発狂するジョンのシーンのインパクトが凄まじいです。

 

 

 

 

そんな感じでクトゥルフ神話をベースに研ぎ澄ませて映像化したような印象の映画なんですが、その中で描かれる奇妙な世界観やヴィジュアル的な衝撃も狂気に満ちていて個人的に凄く魅力を感じる映画でした。

好奇心や怖いもの見たさを刺激する描写の数々でガッツリ画面にくぎ付けになります。

真っ暗闇の中を繰り返し進む自転車と少年(老人)、徐々に奇妙さを増していく絵画、老婆の足元に繋がれた老父、変異するスタイルズ助手、『遊星からの物体X』からのフィードバックを存分に感じられる神話生物の方々の描写、あと窓の外に狂気が潜むシチューエション。窓に!窓に!

 超常現象ホラーとしての演出もキレッキレな印象です。

ハッキリ明確に怖いシーンが多いと思いますし、サイコスリラー的な面白さと超常現象ホラーの魅力をブレンドしたようなイメージです。

 

 

 

 クトゥルフ神話の世界観や特徴を元ネタにしている事は間違いないですが、クトゥルフ神話として語られる作品群やH・P・ラヴクラフトの作品を映像化したわけではありません。

あくまで大元の部分でそれを意識させるような作りです。

ただ、クトゥルフ神話と呼ばれる一連の作品群が、ラヴクラフトの創り出した世界に他の作家や信奉者がシェアードノベル的に参加して世界観を拡張していった背景があるので、この映画はクトゥルフ神話そのもの、という見方をしてもいいのかも。

タイトルの元ネタは『インスマスの影』と『狂気の山脈にて(At the Mountains of Madness)』でほぼ確。主人公の回想で物語が描かれる点もラヴクラフト的で好きです。

 

ポールアンダーソン監督のイベント・ホライゾンでは狂気そのものを体現する存在として描かれる博士の役を演じたサム・ニールが、今作ではゴリゴリにSAN値を削られていく主人公を演じている点も好きです。恐竜と戯れるの大好きおじさんのイメージはもはや僕の中にはありません。

イベント・ホライゾン (字幕版)

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ジュラシック・パーク(字幕版)

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冒頭で精神病棟に隔離されているジョンが、館内放送で流れたカーペンターズの"We`ve Only Just Begun"を聴いて嫌気がさしているみたいなシーンがありました。

どういうことなんだと思ってたんですが、もしかしてジョン・カーペンター監督自身の自虐ネタ的な事なんでしょうか。小ネタのバリエーションよ。

 

 

個人評価:★★★★★

 総じて狂気度が高すぎる映画でした。

訳の分からない事象と、それが分かってしまうタイミングや演出の交差が、観てるこっちまでおかしくなるような感覚を与えてきます。

クトゥルフ神話をベースにしていて、タイトルから内容から小ネタまでそれをもろに意識させるファクターが多いですが、かといってクトゥルフ神話を知らなければ訳分からないかと言えばそうでもなく、しっかり骨の部分はホラー映画として作られていたように思います。

個人的にかなり魅力を感じた映画です。 

 

 

ネットフリックスにもhuluにもアマプラにも無くて、頼みの綱だったU-NEXTすら配信して無くて絶望していたら、まさかのグーグルプレイでレンタル視聴できる事が判明して即課金即視聴しました。

400円でレンタルのはずが何故か僕は100円で観れました。謎。同じ配信元だからなのかYouTubeでも2日間観れるようになってるし。仕様がよくわからない!

play.google.com

ではまた。