チャッピー(2015年/アメリカ) ネタバレあり感想 人工知能に芽生えた自我が人間味溢れすぎてて面白い映画。
『第9地区』『エリジウム』と良質なSF作品を立て続けに作っているニール・ブロムガンプ監督の現時点での最新作。上質。
『チャッピー』
(CHAPPiE)
予告:
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
よりによってヨハネスブルクで生まれてしまった人工知能を搭載したロボットが人との交流を経て成長する。
■感想
ニール・ブロムガンプが監督・脚本を手掛けた3作品は共通して、トランスヒューマニズム的な要素や人の意識の在り方など、人間性や意識そのものに対するアプローチをとても感じる気がします。
加えて貧困層や犯罪といったサブファクターやそこに生きる人々の姿も共通して描いていますが、これは監督がヨハネスブルク生まれというのも関係してそうです。
特に『チャッピー CHAPPIE』は前2作品に比べてそれらの要素を更に描いているように思いました。
天才技術者のディオンが生み出した人工知能チャッピーは、偶然が重なりディオンの意志に反してギャング一味の元で育つという中々観た事のない展開と、そんな中でも倫理観を身に着け成長していくチャッピーには愛着が湧きます。
かなりハードなテーマ扱ってる映画だと思うんですが、思いの外ほっこり系の展開もあって個人的にかなり楽しめました。
ディオンの意図したチャッピーの育成方針にはほぼ沿わない形で育ったチャッピーが、結果的にとても人間らしいキャラクターになっていく展開。
逆に言えば将来現実の世界で登場するであろう完璧な環境で育成される人工知能に対するひとつの皮肉にも思えて面白いです。
素行の悪い大人達に育てられ、人間に対する理解や人間の抱える矛盾した言動や行動をリアルに体験して、結果としてめっちゃ人間らしい自我が育まれていくわけですし。
完璧に整った環境で育成される人工知能って本当に大丈夫か?的なニュアンスを僕はこの流れから勝手に感じ取りました。
終盤では、ディオンが自身の意識をロボットに転送し人の肉体を捨てるという展開がありました。
複製した意識は果たして本当に連続性のあるその人本人の意識なのか、という恐らく死後の世界を解明するのと同じくらい難易度の高い問題は一旦置いておき、この展開でディオンがロボットの肉体を手にするというのも今まであまり観た事の無い方法で人工知能の自我を肯定しているように思えて好きです。
元人間のディオンの意識を、プログラムを通して変換したものを搭載したロボットと、人によるプログラミングで誕生した人工知能を搭載したロボット、それぞれの最終的な着地点にそれほど差があるように思えません。
生まれ方はどうあれ、自我があり意識を持ったひとりの少年(青年)としてチャッピーは一貫して描かれていたと思います。
そして、外見はどうあれ中身(心)が重要っていう、物凄く大切で忘れがちなところにメッセージの着地点を置いているのが、なんか、とても良いです。
分かり辛そうな人工知能や意識の話に加えて、犯罪者の世界や暴力、倫理的な問題点なども要素に加えた上で普遍的なテーマに辿り着くので、最後はハッピーな感じで観終えられるのが不思議で魅力的でした。
あと出演者が結構しっかり豪華でビックリしました。
ロボットであるチャッピーを除けば、ヒュー・ジャックマンとシガニー・ウィーバーを差し置いて実質主役を演じているのが『スラムドッグ$ミリオネア』で主役やってたデーヴ・パテルっていうのが、なんか配役に尖りを感じて面白いです。
■〆
個人評価:★★★★☆
チャッピーの成長を描いた作品と捉えれば、チャッピーという特殊な生まれ方をしただけのひとつの存在を一貫して肯定しながら成長を描いた映画だと思いました。
SFアクション映画としての単純な出来もとても良くて、『第9地区』以来続くリアル指向全開で描かれるメカや銃器も魅力的です。
めっちゃ好きこの映画。
この映画は20/05/23現在、下記の配信サービスで視聴できます。
ではまた。