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ランダム 存在の確率(2013年/アメリカ) ネタバレあり感想 丁寧に混乱させてくるパラレルワールド映画。

 

邦題がなんとも絶妙な安っぽさを醸し出しているものの、実際はかなりしっかり作り込まれた映画。 

 

 

『ランダム 存在の確率』

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ランダム 存在の確率

ランダム 存在の確率

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 以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

 

ストーリー

彗星が通り過ぎる夜に分岐した世界が交差し始める。

 

 

感想

 ネオワイズ彗星で世界が大盛り上がりという事で彗星関連の映画を観ました。

 

この映画は、彗星が接近する中8人の男女が集まってパーティを始めるものの、突然スマホの画面が割れたり停電が発生したりネットが落ちたりと不可思議な現象が多発、外はただ一軒の家屋を除いて真っ暗闇という状況の中で始まるSFスリラー感が半端ない映画です。

  シュレディンガーの猫を題材にしつつ、この映画では箱の中の猫の状態を観測した時点以降に世界はそれぞれの状態に分岐するという仮説の元、パラレルワールドの自分達と接触してしまう人々が描かれます。

こういうパラレルワールド系の映画の多くは、主人公が別世界に飛ばされてしまって、そこから帰還を目指したり世界を修正しようとしたりみたいな流れが大多数だと思うんですが、この映画は主役どころかメインキャラ8人のそれぞれが更にそれぞれ別の分岐した世界と交わり、更にそれらの世界も別の世界と交わるような形で、パラレルワールドらしいパラレル感がしっかりガッツリ味わえました。

 

当所、暗闇の中に遠く一軒だけ灯りの灯った家屋に居たもう一方の世界の自分達との対立という単純な構造から始まるんですが、話が進むにつれどんどん複数の分岐した世界の人々が入り混じりはじめますし、よくよく考えたら序盤の普通にパーティしていたシーンでの会話がやたらすれ違ったりずれていたりした事もあったので、事態を認識した時点で既に複数の世界が入り混じって人々が無意識の内に別世界に行ってしまっていた事が分かります。

その為8人のキャラクター全員を追おうとするとめちゃめちゃしんどいですし、なんなら故意に暗転が挟まれたり、不自然なタイミングでキャラクターが一旦姿を見せなくなったりもするので多分それは無理だと思います。

逆に主役の女性の視点のみを追従していく方が絶対に面白い映画だと思いました。

 

同じ姿だけど別世界の人間である、という分岐世界の入り混じり要素をかなり上手く使った物語構成の映画で、いたるところに細かくネタが仕込まれている印象です。

例えば、停電の中唯一灯りの灯った家屋に電話を借りに行って戻ってきた二人が、実は別世界の二人に入れ替わっていて、パッと見では当然分からないもののよく考えたら違和感があり二人が姿を消した後にそれが発覚する、みたいな感じで後から理解する事で発生する面白さみたいなものが詰まっている映画だと思います。

 

物語構造が上手い映画ですし、それに加えて人間模様、ヒューマンドラマ要素がゴリゴリに更に彼らの状況を悪化させるべく掻き乱しにくるのが面白いです。

もう一人の世界の自分を脅す為に、自分自身の浮気の過去を脅しの道具として置き手紙してきた男が、別の世界の自分に同様の手段をとられて実質自爆してしまうというかわいそうすぎる展開もありました。

 

 

中盤辺りで、自分達がどの世界の人間なのか目印を作ろうという事になり、そこで意思の介在しない無作為なオブジェクトや、サイコロの出目などが採用されます。

この辺りから、冒頭から張られた様々な謎や伏線がどんどん回収され始め、物語的な盛り上がりも高まってきて最高でした、こういう映画好きです。

しかも、ちょっとその伏線の回収の流れは不自然じゃない?って一瞬思わせるような要素も、よくよく考えたら納得できるような作りになっていたと思います。

同じ世界の人間同士だから通じるはず、という会話の前提すら崩れ始め、そこから混ざりに混ざった人々がそれぞれの世界でそれぞれ異なった行動をする事が示される後半のカオスは凄まじいです。

 

そして最後、主役の女性は自分の元居た世界への帰還では無く、複数ある分岐した世界の中で一番幸せオーラが漂っていた世界を発見し、そこにいたもう一人の自分を殺して入れ替わる、という攻めすぎな展開が訪れました。

無事に入れ替われたかと思いきや、女性の彼氏に更にもう一人の女性から電話がかかってくるというラストシーンの上手い話感はちょっと笑えます。オチの付け方秀逸。

 

 

 

分岐した世界同士で自然に対立し合っていましたが、よくよく考えたら何故あんなに過度にお互いを危険視するに至ったのかは分かりませんでした。

たしかに最初の方で、シュレディンガーの猫の例が示された時に、観測されるまで複数の状態が共存していて、観測された時点で状態が確定し残りは消滅する、というように説明されていましたが、この映画はそこからさらに実際は共存していて分岐した世界が発生する、というところがベースになっていると思うので、お互いに静かにしておくのが最善な気がしなくも無かったです。

ただ、もしかしたらそうでは無くて劇中の暗闇の時間帯は全て箱の中の状態であり、最後の朝を迎えたシーンが確定した世界、という意味なのかもしれません。

 

結果的に、その対立構造が面白さに繋がっていた事は間違いないですし、ここまで練られた映画なので多分僕の見落としが確実にある気がします。そういう信頼感を覚えさせてくれるくらい丁寧な映画。

 

個人評価:★★★★☆

物語的な作り込みの丁寧さがそのまま映画の面白さに直結しているタイプの作品だと思います。

 パラレルワールドを題材に、分岐した複数の世界の人々が意図せずに入り混じり、次第にカオスが極まっていくという流れはとても秀逸ですし、じっくりと確実に話が盛り上がっていくようなタイプの映画なので、謎や伏線の回収という要素が好きな人はかなり好きな映画なんじゃないかと思いました。

 結構オススメかもしれないです。

 

 

現在、以下の配信サービスで視聴できます。

ではまた。

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