キル・コマンド(2015年/イギリス) ネタバレあり感想 メカデザインがやたら秀逸なよくある暴走殺戮マシン映画。
どの世界でも電磁パルスは万能兵器。
『キル・コマンド』
(KILL COMMAND)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
海兵隊が訓練で自立兵器を的にしていたと思ったら的は自分達だった。
■感想
近未来暴走ロボットSF。
半壊しながらも尚自らを再起動して追ってくる殺戮マシーンと必死に逃げる男女の構図といった演出面も含め、機械が人類に反旗を翻す瞬間を描いたいわば"審判の日"ジャンルなので、圧縮再構成されたターミネーターシリーズみたいなニュアンスを感じました。
内容も、SARという学習型AIの暴走を描いたもので、この手のジャンルでは一番よく見かける安心安定の設定の映画であり、それに見合ったそれなりの面白さは保たれていると思います。
主役は自身も半機械化している技師のミルズ、彼女は海兵隊の訓練に付き添うのですが、実はそれは暴走した学習型AIが海兵隊たちを戦術の参考にし、かつ動く的に利用する為に呼んでいた事が発覚し、海兵隊たちと機械との戦闘が巻き起こるという流れ。
リーダー的な、暴走の根源となった個体を止めれば全軍機能を停止するという条件、敵を仕留める切り札がEMP、最後に海兵隊がギリギリ勝利を収めたと思ったらミルズが暴走AIと同期してしまい人類の未来に暗雲立ち込めるエンドという展開など、良くも悪くも裏切りの無い内容だと僕は思いました。
一方、メカデザインに関してはゴリゴリに本気を出してきている印象です。
近未来の戦闘用マシーンらしさを全開で盛り込んできた敵の多脚歩行ロボットはもちろん、海兵隊を輸送していたウェザリングがやたら効いているヘリの謎の可変機構であったり、長靴ストックにピカティニーレールがやたらと目に付くゴリゴリにカスタムされたサンドカラーのアサルトライフルなど、それっぽさと未来感のバランスがとても素晴らしいモノばかりだったと思います。
個人的な見解ですが、この映画で見られるようなヘリの可変機構にしろ多脚歩行兵器にしろ、そういうものは多分今後も現実世界ではあまり大々的に採用されないと思っています。
メンテナンス性も劣悪でしょうし、関節や可動パーツが増えれば増えるほど製造工程も複雑化するわけで、それだけのコストをかけてでも採用する意義があるレベルのものが開発されない限り、たぶん現実世界では今よく見かける兵器の延長みたいなものしか登場しないような気がします。
だからこそ、現代兵器の延長のデザインとしてのリアリティを出しつつ、そこにしっかりとハッタリを込めて未来感を出し、そのまま自然に世界観に溶け込ませて違和感を覚えさせないような、絶妙なバランスのメカデザインには魅力を感じます。
この映画は、正にそういったバランスのメカがたくさん観れる部分がとても好きな点です。
また、作中に出てくる多脚歩行兵器に対して海兵隊が攻撃を仕掛けた際「装甲が厚くてアサルトライフルでは仕留められない」的なセリフを言うシーンがありました。
これは、本作のボスタイプのマシンに対してでは無く、もろに関節や駆動機構が露出しているっぽい四脚メカに砲を乗せて射角を確保する為に可動アームで固定しただけみたいな、いかにも雑魚敵っぽい敵に対する評価です。
実際作中描写でもARでは抜けないような描写があり、海兵隊側の評価は正しいんですが、どう考えても装甲の厚みを与えた部分より弱点となる可動点の露出の方が多いはずで、むしろピストル弾ですら作動不良を起こせそうな感じなんですが、ここもまた描写とデザインでのハッタリコンボでうまく誤魔化せているポイントだと思います。
つまりこの映画は、そういうメカ周りのリアリティとフィクションの混ぜ方が上手くて、それが結果として敵の不気味さも強大さも引き立てるような作りになっているところが凄いと思いました。
あまり予算をかけていないのか、どこかにありそうなサバゲーフィールドっぽさ全開の雑木林と廃墟が特徴的なロケーションのみでほぼ話は進みますし、マシンや銃火器もデザインこそ素晴らしいの一言ですが、その挙動はCGや演技っぽさが隠しきれていません。
ただ、そこがまた逆に味になっているような気もします。
ボスメカのカックカクかと思ったら突然ヌルッと直進したりみたいな不安定な挙動が不気味で良い雰囲気出していました。
■〆
個人評価:★★★☆☆
話はよくあるような既視感だらけの内容ですが、メカデザインが物凄く秀逸な映画でした。
むしろそういったデザインを強調する為に話を抑えに行っていた可能性すら感じます。そんな事は絶対ないと思いますが。
ストーリーそのものにあまり個性が無いので埋もれてしまいそうな雰囲気が凄まじいですが、メカ観る為だけに一見の価値が見いだせる映画だと思います。
現在、以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。