神様の言うとおり(2014年/日本) ネタバレあり感想 デスゲームごとのクオリティ差が結構な事になってるやつ。
夏に観る戦争映画がネタ切れしてきたんで今年の夏は邦画を鍛える事に決めた。
一本目は同名タイトルの漫画作品を三池崇史監督が実写化チャレンジした映画。
『神様の言うとおり』
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
古風な遊びをモチーフにしたデスゲームに巻き込まれた高校生たちが生き残るために頑張る。
■感想
「だるまさんが転んだ」や「かごめかごめ」といった、古風な遊びをデスゲームの題材にした映画でした。
原作漫画未読ですが、日本の漫画原作らしさがしっかり雰囲気として感じられるタイプの実写化作品だと思います。特有の何かが絶対にある。
シュールな設定でガチのデスゲームという世界観は若干『GANTZ』がチラつきますが、逆に日本らしい要素として、これはこれで一つの流派みたいな感じで楽しめます。
劇中では5本のデスゲームが展開されました。
第一のゲームとして、それも映画はじまってすぐに突然クライマックスと言わんばかりに大勢の高校生が死亡する「だるまさんが転んだ」は、掴みとしても意味不明さと恐怖感のバランスも良くてとても楽しめました。
ゲームシステムの説明の為だけにクラスの男女が何人か死ぬのはこれ系じゃもう仕方ないとして、だるまにタッチする為に設けられた少ない制限時間の中でなんとか解決策を見出し命がけで賭けにでる流れ、設定のシュールさに対してデスゲームらしい真面目さがしっかり感じられて僕は好きでした。
主人公である高畑瞬(福士蒼汰)が、親友となんとか協力して二人で生還成功した、と思わせてからのタッチ成功者のみが生き残れるという展開、これは良い感じに理不尽とゲーム性のバランスとれてるオチなんじゃないかと僕は思いました。ビックリしたし。
ところが第二のゲームとして行われる巨大な招き猫との追いかけっこ、これはもう初動からツッコミどころがあって出鼻挫き侍の極みでやばみが深いしその後もイマイチ納得いかん脳。
だるまさんの後、学校中の扉や窓が絶対に解放されず破壊も受け付けないという魔力がかかっていて、高畑瞬と別クラスの生存者で幼馴染で家が隣でヒロインの秋元いちか(山崎紘奈)の二人は唯一扉が動く体育館へ到達。
体育館内には先にやってきた他の学年やクラスの生存者がいるんですが、主人公達が扉を開け館内に入ったところを無言で見つめるだけ、そして扉はロックされてしまいます。
「ここに入ったら出られないんだぁ」と体育館内にいた生徒の一人が悲痛な事実を宣告するんですが、馬鹿かこいつら感があふれ出ました。先にそれ伝えてあげる優しさは?
実際この後行われる巨大な招き猫との追いかけっこでも体育館内にいたモブ高校生たちは中々馬鹿らしい死に方するんですよね。あの熾烈なだるまさんを生き残った猛者とは思えないです。
ただモブの死に方は状況に理解が追い付かないのとパニックとで仕方ないのかもしれないんですけどね。まだそれだけならなんとか理解できる範疇でした。
だるまさんとの緊張感の落差がおかしいですよ。
こっちはだるまさんと違ってデスゲームの魅力のはずの攻略の糸口という面白さを理不尽要素が台無しにしていたように思います。
なんか、招き猫の首が突然バネでびょーんって伸びて、遠距離まで逃げ延びた生徒を捕食してたんですよね。
これやってること、鬼ごっこでモデルガン持った鬼に撃たれて「弾当たったらタッチと同じ効果だから」みたいな俺ルール突きつけてんのと変わらないと思うんですよね僕は。
招き猫との追いかけっこの見所は、ゲーム終了直前に登場し華麗にゲームセットまで持ち込んだサイコライバルキャラ天谷武(神木隆之介)の存在感でしょうか。和製デスゲーム作品に大抵いるサイコ枠すき。
招き猫との追いかけっこで生存した高畑瞬と秋元いちか、そして天谷武の三人は謎のガスで眠らされ、目覚めるとそこは宙に浮かぶ巨大な立方体の中でした。
いちか達と分断され名前順で枠ぐまれた他の高校の生存者達と共に挑む第三のゲームは巨大こけしとプレイする「かごめかごめ」。
浮遊する巨大なこけし四体がそれぞれやたら現代っ子風な口調なのは受け止めつつ、この第三のゲームでは再び緊張感と死の恐怖の面白さ、スリリングさが復活したように僕は感じました。
そもそも当て勘と運の複合要素が強い遊びですし、その上で瞬がスマホでこけしの声を録音することで、こけしを上手く出し抜いて勝利する意外性の強い勝ち方も、発想力で勝負を決める気持ち良さがあって、けっこう僕は好きです。
こけしに挑んだ他校の生存者も、キャラをゴリゴリに立てた後に死亡例枠で退場するインテリ男子と、又裂きという今作中最も惨い苦しみを与えられてしまう超かわいい女子の二人で、デスゲーム作品としての華をしっかり持たせてもらう死に様を与えられていました。
負け=死の理不尽さとゲーム性を意識させて死ぬキャラの存在って大切だと思います。
かごめかごめで登場した瞬の中学の同級生美女高瀬翔子(優希美青)と部屋の外に出ると、そのままえんがちょしようとしてくるこけしとの逃走劇に突入。ここでいちかとも再開します。
これはブリッジ的な感じで、ゲームって言うより後半に出てくる主要キャラの合流イベントみたいな感じなので可もなく不可も無く攻略されていました。
第四のゲームは疑心暗鬼ゲーム的な感じで、ゲームマスターである巨大な自称白熊の質問に生存者が嘘をつかずに答えたら全員生還できるというボーナスゲームみたいな内容。
開幕でオチが読めるゲームでもありました。
嘘をつく理由が無いゲームなのに、誰かが嘘をついているとして、ゲームマスターである白熊は翔子含む二人の生存者を処刑、そして瞬がこの違和感に気づき嘘をついているのはGMの白熊だと見抜きゲームクリア。
これまでのゲームと大きく方向性が異なりゲームマスター側の嘘を見抜くという場外戦術的なものが求められ、しかもGMが嘘をついている=ここで死亡したキャラは正確にはゲームの敗北で死んでいないという見方もできるので、中々に困惑する内容でした。
元ネタの遊びもちょっと思い当たるものがありません。
ただ瞬が白熊が嘘つきと見破ったあとに言う「お前は白熊、じゃ無く悪魔」みたいな唐突なライムセンス発揮する瞬間が面白かったので自分の中ではなんかうまく丸め込まれた感じがしました。
そして迎えたファイナルゲームは「缶蹴り」。KICK THE CANです。
瞬が白熊戦で放ったライムはファイナルゲームへの伏線だった……?
このファイナルゲーム、いろいろとおかしすぎます。
基本は缶蹴りのルールそのままに、ゲームマスターのマトリョーシカ曰く「缶は蹴ると爆発する」という死亡要素が絡み、しかも生存者5人のうち1人が鬼役になるという鬼役の死の恐怖がいくらか軽減される謎システム。
ていうか白熊辺りはまだギリギリ和感ありましたけど、ここにきてロシアってなんか統一感も薄れている気がします。原作では各国のゲームが色々登場するみたいですが、この映画だとこれまで日本の古風な遊びで通してきていたので違和感がとてつもないです。
そしてゲーム終了後GMのマトリョーシカが明かした「実際には缶は爆発しないし誰も死なないゲームだった、ただ楽しんでほしかった」という悪い意味で衝撃の事実。
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やったわこの映画。
ファイナルゲームでこのスカし方は僕は絶対に良くないと思います。
最後の命がけのゲームという状況だからこそ、瞬の覚悟やいちかの心を殺しての自己犠牲の精神が刺さるわけで、反対に鬼役の天谷の余裕シャキシャキサイコからの必死な姿も生感が出てくるんじゃないでしょうか。
瞬間瞬間の彼ら生存者のモチベーションは本物だったとしても、その後に根幹たる死の要素が嘘でしたーなんて言われたら、萎えませんか……?
白熊の時と違って嘘そのものに意味が全くありません。
しかも、このファイナルゲームが嘘だったという事は白熊戦で謎の死を遂げた二人があまりにも報われません。
更にこの後、安心させておいてご褒美的に配布されたアイスキャンディの当たりくじで、真の生存者が決まるという展開があり、そこでくじ引きに外れたいちかと半モブ生存者二人が唐突に死亡し、最後は神の子と崇められる瞬と天谷の二人のカットで映画が終わってしまうんです。いやいや……。
結局死人出すなら、ファイナルゲームでわざわざとびっきりのスカしを決めなくても良いんじゃないでしょうか。
多分ですけど、そういうのはどんでん返しの面白さとは程遠い意味も無いはったり以下の逆張りでしかないんじゃないかと僕は思います。
全く好きじゃないですこの終盤の展開。全く好きじゃないです。
■〆
個人評価:★★☆☆☆
ファイナルゲームのせいで限りなく★1に近い★2って感じです。
設定世界観はかなり日本的なデスゲームの面白さを楽しめますし、デスゲームの内容や見せ方描き方も良いモノは本当に良いので、好きな要素もある映画でした。
いやほんと終盤の展開はもっと、もっとなんとか出来たんじゃないかって僕は思いました。
現在、以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。