寄生獣(2014年/日本) ネタバレあり感想 原作のコンセプトを踏襲して単純化させた事が上手く嵌ってる印象。
(漫画原作の)邦画を鍛えたいシリーズ。
ここ数年の漫画原作実写映画の中でも今のところ個人的にはかなり好き。
『寄生獣』
続編の感想記事もあります↓↓↓
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
パラサイトに乗っ取られた人間と右腕だけ寄生された青年がバトル。
■感想
原作漫画の寄生獣は僕もかなり好きなので、どうしても原作に触れたいし原作との比較をしたかったんですが、あまりに長くなりすぎたのと、ここに至るまで既に4回感想記事書いては消してを繰り返してもう脳壊れそうなので寄生獣が映画という別物になった事を踏まえての、あくまで映画単体の出来について感想を書くことにしました。
この実写版に対して批判が多かったっていうのも分かるんですよ。
例えばキューブリック版『シャイニング』とかエメリッヒの『GODZILLA』とか、あるいは『ドラゴンボール EVOLUTION』でも良いですけど、そういう原作から大きく改変された映画は日本に限らず今まで沢山あって、やっぱりある程度原作ファンからの批判は飛んでるんですよね。
ただ『シャイニング』も『GODZILLA』も、それはそれで別種の魅力が詰まった映画として再構成されている訳で、なにも作品テーマや作風をダイレクトに踏襲せずとも、映画化っていう地味に制約も自由度も低い特異性のある映像化に当たっては、原作のコンセプトを踏襲する事でリビルドするというのは、別物として上手く納まる事もある、と個人的には思っています。
上記した3つの映画で言えば、めちゃめちゃ上手く納まったどころか評価も凄まじい事になる『シャイニング』タイプ、
ファンからの視線は冷たいけど別ジャンルとして普通に楽しめる『エメゴジ』タイプ、
そして別物としても楽しめず見せ糞以下の地獄と化す『ドラゴンボール EVOLUTION』タイプ、
って感じで、原作のコンセプトや設定を踏襲しての実写化作品は、だいたいこのどれかに類似している気がします。
で、多分この実写版『寄生獣』はエメゴジと同じようなタイプの作り方になっているように思います。流石にエメゴジみたいにデザインベースから改変はしてないですが。
SFホラーアクション全開の作風でした。
ある日どこからともなくやってきた寄生生物(パラサイト)、これに寄生された人間は外見は一見宿主と同じながらも、首から上は実はとんでもない化け物になってしまいます。
主人公泉新一(染谷翔太)もまたパラサイトに寄生されてしまうものの、なんとか右腕で食い止めた結果、右腕だけがミギーとして意志を持った存在に変質してしまいます。
この設定的な面白さをそのままに、新一とミギーの関係性は大きく軟化し、頼れるパートナー的な立ち位置になっていた印象です。
映画の尺都合的な意味でも、突然パラサイトとの戦闘に巻き込まれる新一にとっての頼れる存在としてミギーの立ち位置を単純化したのは、個人的にはアリだと思っています。
見た目は異質でも次第に人を理解していくミギーと人間離れしていく新一という二者の変化も、原作のそれとはニュアンスがかなり異なっているんですが、逆転するキャラクター像の面白さは分かりやすくなったと思います。
ホラーらしさを具体的に説明するのはマジでしんどいんですが、雰囲気作りであったりとか日常パートからの急展開急転換とか、そういう作り方の部分がものすごくホラー映画っぽいんですよね。
主人公の通う学校に寄生生物がやってきて、暴走してクラスメイトを殺しまくってしまうという原作にもあるエピソードが、より恐怖演出重視で改変されていたりしますし、主人公の母親が寄生生物に寄生されて襲いに来るという新展開もなんかホラーらしい悲惨さを感じるんですよね。
また、愛情がひとつのテーマになっている印象もあります。
実写化に当たって新一の父親は故人となり、新一は母の愛に素直になれないものの心の底から母を愛しているという、高校生ならではのキャラクター像が強まった感じがします。
そして唯一の肉親である母がパラサイトに寄生されてしまった事で、新一はパラサイトの駆逐を決意します。
この辺りの動機も単純化されて分かりやすくなっていました。愛ゆえに復讐に燃える高校生。
母親を意識する描写がめちゃめちゃ多いんですよね今作。
多分それは寄生生物ゆえに家族や愛の概念を持たないパラサイトと、家族愛から復讐に燃える主人公という比較構造にもなっていたからかも知れないです。
寄生生物サイドの大物である田宮亮子(深津絵里)が実験と称して子育てしようとしているなど、生物的な価値観の違いをフォーカスしつつそこに焦点を当てたようなキャラクターもしっかり存在しています。
総じて分かりやすく単純化され、エンタメ性が高まった内容になっている印象です。
これを良しと捉えるか厚みが無くなったと捉えるか、この辺りが評価が割れている部分の根幹なんだと思います。もう評価云々の話はいいか。俺は好き。
あと個人的に新一役の染谷翔太の、ビビったり怒ったり悲しみに狂う時の演技が、日常パートでの感情の起伏そんな無い男子モードとのギャップがえらいことになっていて、しかもリアリティがある演技してて本当に驚きました。
村野里美役の橋本愛も、里美っぽさはあんまりないんですけど、日常パートを担うキャラクターとしての、日常感というかもはや生活感が凄く感じられる演技していますし。
この二人が特に、良い意味で日本の俳優っぽくないリアリティがあって、正直その辺りも個人的に評価が高い点だったりします。
■〆
個人評価:★★★★☆
日常の中に潜む寄生生物との邂逅と恐怖、そしてミギーと共にそれらに立ち向かうという主人公というバトルアクション要素、これらが上手くホラーの範疇で整えられている映画だと思いました。
原作の内容をエンターテイメント性を高めて映画として再構成している印象が強く、たしかに原作漫画ほど考えさせられるような出来事は多くないんですが、これはこれで別種の面白さがあって僕は好きです。
言いたい事が上手くまとまらない、とにかく良い映画です。映画として僕はこれ好きでした。
現在、以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。