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ビンゴ(2012年/日本) ネタバレあり感想 設定のバカっぽさに対して、真剣に死刑とそれに関わる人々の姿を描いている気がする。

 

リアル鬼ごっこ』で有名な山田悠介の短編集『ブレーキ』に収録された作品が原作。

世界観設定オチの捻り方など、世にも奇妙な物語感が半端なくて個人的に結構刺さる映画でした。

 

ビンゴ

ビンゴ

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 以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

 

 ストーリー

死刑執行の為集められた囚人たちだが、ビンゴで当たらなかった人は生き残り、椅子取りゲームの要領でまたビンゴやっては生存者を決め、そして最後に残った一人は執行を免れるらしいという新システムに翻弄される。

 

 

 感想

設定先行で後から色々とそれらしさを肉付けしているに違いないと確信できるくらい、設定とそれがもたらす状況の面白さが全面に出ている映画でした。

 

 

 

 

死刑囚の命運を握るのはビンゴ。

 

死刑囚たちは、数字の書かれたマス目の上に無作為に座らされ、自身のマスの数字が呼ばれるとマス目が赤く点灯、都合上斜めリーチは存在せず縦横でのビンゴのみが対象となるものの、ビンゴになった死刑囚はその場で一斉に刑が執行されます。

 

死刑囚とはいえ人の命でゲーム、というかこれも一種のデスゲームなんでしょうが、とにかく弄び方が斬新すぎる設定にわりと惚れました。

 

しかもそのビンゴの数字は、死刑囚たちが最後に会いたいと言った人々が別室に集められ、彼らが数字を投票する事で確率が変動するというシステム。

 

そんなわけで呼ばれた被害者家族と加害者家族がいりまじる別室の空気感や、数字を投票する事で自身が死刑を行っているかのようなプレッシャー、ビンゴ死刑を待つ囚人たちは本当に死んで当然なのかどうかなどが、両者の視点から真剣に描かれます。

この辺りはかなり真面目にケアしている映画だと思います。

 

例えば加害者家族で息子を溺愛するおばさんが、息子がビンゴ列確定した際に発狂して投票者全員呪おうとする一方、被害者家族でむごすぎる方法で娘を殺された男は、しかし加害者の罪を償おうとする意識を認めて投票を躊躇ったり。

あるいは自身が実は真の殺人犯ながらも自分をかばって冤罪で死刑確定した恩人を救うために投票する数字を決定する女の子がいたり。

死刑囚だけでなく被害者加害者両サイドの家族や知人それぞれの思考や観点がちゃんと劇中で提示されるのは良い点だと思います。

 

ビンゴなので最終的にランダムに数字は排出されるんですが、とはいえ投票システムの存在で特定の番号が出る確率を大幅に上げる事もできるので、これを利用して自分の知人を守ろうとしたり、逆に積極的に皆に投票させようとしたり、まさかの別室サイドでも攻防が発生していて面白いです。

 

めっちゃ頭悪そうな設定なんですが、本当に真面目にこのビンゴ死刑システムを考えて映像化している感じがいろいろなところから伝わってきて好感持てました。

 

 

 

 

じゃあ死刑囚サイドはどんな感じなのかと言うと、例えば主人公は本当に普通そのものな感じの青年で、彼に絡む陽気な関西弁の兄貴とか眼鏡で冷静沈着系のおじさまとか、絶対いい奴オーラ隠せてない外国人とか、主人公のヒミツを握る謎の男とか、こっちもこっちでキャラが立ちまくりです。

キャラに限らず、自分の犯した罪に対する考え方や償いの気持ち、そして死に対面する時の姿勢など、こちらも心理描写的な細かさはわりとしっかり注力して描かれていたように思いました。

 

彼ら死刑囚は下手に生き残れるチャンスが与えられてしまった事で、殆どの人がバイタリティ全開で、ビンゴ会場が結果的に宴会レベルの盛り上がりを見せ続けるのが、なんかシュールすぎて好きでした。

終始狂気に陥りかけたり天に祈りを捧げたり他の囚人のやったことをバラしてタゲ誘導したり、別室から見ているであろう知人にアピール仕掛けたり、あるいは突然始まったビンゴのシステムを考察しあったり、ビンゴ揃ったら即死亡の状況だからこそのバイタリティ。

 

一方で、執行官がところどころで「苦痛を和らげるため」とかいって投票急かしたり迅速な執行を心掛けたりしてるんですが、そもそもこのシステム自体が無駄に囚人とかその家族に希望を持たせることで結果的に苦痛を与えまくってる事に気づくべきだと誰もが思っているはずです。狂ってんのはどっちだこれ。

 

 

 

 

主人公の青年がマジで普通の青年すぎて、何をやって死刑が確定したのかという点を焦らしながらゆっくり物語の中で明かしていきます。

 

裕福な家庭で育ち何不自由無かった主人公ですが、ある日住宅街でピアノを弾くヒロインに窓越しから惚れて、彼女の家族を全員処刑し、ヒロインを軟禁して家族になろうよしたという、サイコすぎる罪状が発覚する後半の衝撃。

と思いきや、実はそれは建前で実際にヒロインの家族を殺したのは家族から虐待を受けていたヒロイン自身、主人公はそれをかばうために嘘をついて彼女を守っていたというダブルどんでん返し。

主人公の過去回想っぽく出てきた虐待シーンが実はヒロインのそれだったという、ちゃんとしたミスリードにすっかり騙されました。

 

そしてこの連続展開で誤魔化されがちですが、実行犯では無かったとしても結局ヒロインの家の窓越しに彼女を観察していて、彼女が家族を殺し終えた後に抱擁して「俺たちは家族だ!」とか突然言い出す主人公は変質者である事に変わりないはず。

 

最後の一人になった時点で死刑回避なのかと思いきや、その最終決定権はラストワン囚人の呼んだ知人家族サイドにゆだねられているという、この時間何だったの的な追撃が待っていました。これは本当に要らないシステム。

ビンゴ死刑の時間何だったの感が急激に高まりかけました。

しかもヒロインちゃんは死刑を執行させて、結局主人公は愛の中でヒロインちゃんを守り切って死んでしまうという、突然の胸糞エンド。

 

そしてラストカットでヒロインちゃんが「これで救われた」って言って雪の降る町で微笑むんですが、ヒロインちゃんが最後の最後でスーパークソ人間にしか見えなくなってしまって悲しいです。なんだこの、なんだこのクソ人間。

この小娘の罪を全部背負って傍から見たらサイコ野郎みたいになって死んでいった主人公マジで不憫でした。

ヒロインちゃんクソ人間過ぎません?このオチそういう見方で良いんですよね?なんか不安になってきた。

 

 

 

一人だけ生き残れます!っていうシステムの明確な意義と言うかどういう理由があってのものなのかが作中では特に判明しなかったのがちょっと心残りでした。いやでもこの手の映画にそういうところ突っ込む方が悪いか。

 

個人評価:★★★☆☆

わりと真面目に良い映画じゃないこれ?

 

設定こそバカっぽいですけど、その枠組みの中で死刑や被害者加害者の様々な視点や意見、正義を定義する難しさなど、かなり真剣な作りになっている映画だと思いました。

 

「『世にも奇妙な物語』で取り上げられた作品が映画サイズでリメイクされたりしないかな」って昔から思っていたんですが、感覚的にこの映画はまさに映画サイズの世にも感があって、そういう個人的な好みの部分でも結構当たりのイメージがあります。

 

現在、以下の配信サービスで視聴できます。

ではまた。

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