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時をかける少女(1983年/日本) ネタバレあり感想 今では色褪せたからこその魅力がある。

 

ここからが本当の邦画祭だ。

 

筒井康隆の小説を原作に、未だにリメイクや派生作品の展開が続く人気作品。

大林宣彦監督による、この83年版『時かけ』は特に、未だに根強い人気を誇ります。

というかむしろ時代を重ねるごとにどんどん魅力が増すタイプの映画だと思います。

 

 

時をかける少女

時をかける少女

時をかける少女

 以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

 

ストーリー

ラベンダーの香りが時空を超越させ、少女が恋する。

 

 

感想

牧歌的ですらある空気感やテンポ、登場人物達のフィクション感や演技、良い意味での古さが今では魅力として際立っている映画です。

今の創作物ならフックとして使われそうな事件もさらっと流される展開手法の違いも結構あって、例えば大地震の後、堀川吾郎の家の裏で火災が起こる事件で、火災で主要キャラが大変な目に遭うとかそういう事は一切なく、それは主人公芳山和子が自分がタイムリープしている事を深町一夫に裏付ける為の展開に留めてたりします。

 

一部は当時でも既に古さを感じる手法や演出をあえて取り入れていたそうで、であれば83年版『時かけが狙っていたある種の懐古的魅力は、制作から40年経った今ではその色が更に強まっている感じがするはずです。

 

それとは別の、純粋に当時最先端だったはずの手法や演出も、今の目で見ればかなり古臭くて正に色褪せた映画なんですが、その当時感すらも魅力的に感じてしまうのが不思議です。

 

タイムリープという要素に異物感はさほど感じません。

SF要素がスッと受け入れられるのって、そもそもこの実写版の描いた世界自体がわりと虚構らしさを漂わせているからな気がしました。

 

街並みも日常の風景も人の姿も、何もかもが今とは違いすぎるんですよね、実写版の時かけの世界。

今から40年前とはいえそれでも既に80年代が舞台ですし、あんなイメージの中の日本みたいな町は相当少なかったんじゃないかと思うんですけど、どうなんでしょうか。

 

その違和感と言うか、知らないはずなのに懐かしさを覚える空間を舞台に、少女がタイムリープしながら日常を過ごして過ごし直して、恋するっていう、それだけの映画です。

それだけの映画なのに、魅力度がとても高い映画です。

 

原作はもちろんド世代のアニメ映画版とか、他にも色んな派生やフォーマットでの時かけを観ましたが、この83年の実写版は、やっぱりちょっと異質な感じがします。

 

 

 

未来人である深町一夫a.k.a.ケン・ソゴルが、過去の世界で植物採集をする為に皆の記憶を改変していた事が分かって尚、主人公の芳山和子は一夫の事を好きだと告白します。

この感じが本当に、もうピュア死ぬ。

思い出の中の一夫は虚構だったけど、この好きになったという気持ちだけは本物だ的な、ワンチャン哲学まで飛躍しかねない恋愛の不思議がよく描かれています。

 

なぜ好きになったのかなんて分からないし分析する理由も無いあの思春期ならではの感覚と、その好きな相手と離れ離れになるしかないという悲しさもストレートにぶつけてきます。

 

そういうピュアな恋愛劇をSF要素を介して描いた映画なんですが、一方で完全な恋愛映画とも言い切れないバランスの映画だと思います。

個人的には日常系ジャンルだと思ってます。思春期の子供の日常の中に在る恋愛や不思議な体験みたいな、そういうベクトルの作品って印象です。

 

 

 

尾美としのり演じる堀川吾郎(原作の浅倉吾郎)が個人的にめちゃめちゃ好きです。

陽気だけど変にちょけたひょうきんキャラでも突然キレだす系でも無く、日常感満載な本当に良く居る気さくな男子って感じで、あの世界において一人だけ猛烈なリアリティを醸し出しててめっちゃ面白く映るんですよ。

もはや吾郎目当てで観ても良いまであるよ。

 

芳川和子と深町一夫a.k.a.ケン・ソゴルの二者が、ウルトラトレンディ清純キラキラ青春恋愛モノ感を死ぬほど醸し出したキャラ付けされてるだけに、吾郎が映え方が本当に突出している気がします。

 

 

 

個人評価:★★★★☆

割とマジでこの映画の舞台になったような町に住んでみたい。

 

現在、以下の配信サービスで視聴できます。

ではまた。

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時をかける少女 (角川文庫)

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