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サイレン 〜FORBIDDEN SIREN〜(2006年/日本) ネタバレあり感想(考察) 別物として楽しむというスタンスならアリ。ただセリフボソボソでSE大音量大爆発みたいなの本当にやめろ。

 

この映画の原作になったのはSIREN2ですが、初代SIREN共々未プレイの人のほうが確実に楽しめるであろうタイプの、ダウンサイジングされ色々と簡略化されたタイプの実写映画化がされているやつでした。

 

監督は堤幸彦トリックシリーズで有名な方です。今作でもらしさ全開。

 

そしてSEとセリフの音量調整をこれでもかと言うほどミスし狂った一作。

 

『サイレン 〜FORBIDDEN SIREN〜』

サイレン FORBIDDEN SIREN

サイレン FORBIDDEN SIREN

 

以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

 

 

 ストーリー

病気の弟の治療をするために離島にやってきただけなのに、奇妙な出来事の連続に錯乱寸前。

 

 感想

うんうん、それもまた、サイレンだね!くらいの、広く受け入れる心さえあれば楽しむことには困らない一作。

 

主人公の女の子が父親と弟と共に離島に向かいます。

それは弟の病気の治療の為だったのですが、離島での暮らしが始まってすぐに気持ち悪い虫との戦闘が発生したりご近所さんや住民さん達の態度が不気味だったり、変な儀式を目撃しちゃったり謎の言い伝えを知ったりと、ヤバそうな所に来てしまった事を体感する主役の女の子(市川由衣)。キャラ名は……既に忘れた……!

 

物語が進むにつれ、島に鳴り響くサイレンと共に奇妙な現象が頻発するようになり、やがて島民は屍人と化し、主人公の女の子は全力でファイナルガールらしく逃げまどいます。

 

サイレンが鳴っていたと思われる鉄塔へ上り、サイレンの発信源を破壊して全てを終わらせたと思った女の子ですが、しかし実はその音は女の子にしか聞こえておらず、弟は半年前に死亡しており、彼女が見ていた屍人や夜の赤い海など、全てが彼女の妄想であり幻覚であったことが判明。

ショックで女の子は身投げするも奇跡的に生還。

 

しかし、病院のベッドで目覚めた女の子は、未だ鳴り響くサイレンの音と共に島民の抹殺を始める、というのが大まかな内容です。

だいたい全部主人公の妄想オチでした、という原作とは全く別ベクトルの設定に大改変されており、全ての謎の根幹を成すのもまた妄想というパワー系のホラー映画という印象です。

 

 

 

 

原作ゲーム2作品やリメイク版の大まかな設定やストーリーとの比較をしたいところですが膨大な情報と設定が存在する上多くはあくまで推察込みでの定説という形ですし、なにより原作ゲーム最大の魅力が正にその世界や出来事の謎そのものに在るタイプのゲームである為、こちらにはなるべく触れずに感想を書きます。

SIREN

SIREN

  • 発売日: 2003/11/06
  • メディア: Video Game
 
SIREN2

SIREN2

  • 発売日: 2006/02/09
  • メディア: Video Game
 

初代サイレンはPS4でリメイク版が出ているみたいなので今でも遊べますが、サイレン2は流石にもう厳しいですよね。

 

 

 

この映画版サイレン、大オチである「全ての怪奇と弟の存在は主役の妄想でした」という部分を踏まえることで、むしろ新たな疑問が出てくるというちょっとややこしい映画です。

最初から弟は存在しなかったというものを確定の設定とすると、劇中で度々登場する謎の赤き衣を身に纏いし少女が、弟君を認識していたような描写に疑問が残ります。

赤ずきんちゃんも妄想上の存在とすると、今度は主人公ちゃんの父親が赤ずきんちゃんを目撃したシーンと整合性が取れなくなります。

 

島民に関しても謎が残ります。

主人公ちゃんは中盤で30年前に撮られたと思われる大量の島民の写真を発見し、そこには隣人やお医者さんの写真も含まれていた事と、30年前の島民消失事件を知った事から、主人公ちゃんは彼らが既に死亡または怪異となっているとして、実際に目の前に現れた屍人状態の島民や父親から全力で逃げる事になります。

 

しかし終盤でお医者さんが屍人に見えるという主人公のシーンがありますが、直後の演出や気絶した主人公の傍らで彼女の症状について語るお医者さんと父親の姿が描かれる様に、屍人の存在もまた彼女の妄想であると考えられます。

しかしそうなると、劇中度々登場した視界ジャックを意識したようなシーンの説明がつきません。

写真の日付と主人公ちゃんの視点外で描かれた描写とも矛盾してしまいます。

 

他人の視点を妄想したってこと?

30年前の日付が書かれた写真は何?

 

 

 

感想と言うより考察に近い内容になるんですが、個人的には以下のような感じで一応落としどころを付けました。

 

・主人公ちゃんの妄想は、弟の存在と30年前の日付が書かれた島民の写真と、儀式する島民達の姿と、屍人を含む村が異界みたいになる状況そのもの。

赤ずきんちゃんは実在する怪異のような存在で、劇中で存在が示唆されているセイレーンの末裔かその本体。

・ところどころ印象的に登場する気持ち悪い姿の虫が、実は寄生虫のような存在で、これに接触する事で脳内でサイレンが鳴りやまない激ヤバアッパーモードになってしまう的な感じの『ひぐらし』路線。

 

こんな感じでしょうか。

赤ずきんちゃんが弟を認識していたようなシーンですが、これは特殊で赤ずきんちゃんがセイレーンだから超常の力で他人の妄想も見えていたとかそんなんで良い気がしてきました。

虫は無視しても良い気がしたんですが、父親が書斎で電話してるシーンで謎に虫を意識させるシーンがあったので、何かしら役割が在るはずだと思ってこういう形にしてみました。

 

30年前に島にやってきた男(阿部寛)が、主人公ちゃんと同様に脳内サイレン鳴りまくりアッパーモードになり島民を全滅させた、というのが事件の真相で、この男が調査資料として残した逸話や伝記(都市伝説ネタが多数採用されていました)全て勘違いによるものだと推測できます。こっちサイドに対するスリード要素。

 

であれば、島外からやってきた人間が、脳内サイレンモードになるという共通項が見えてくるので、これの理由付けとして虫による風土病的な路線を考えています。

現地民は耐性を持っている的な都合の良さが無いと説明つかない強引さですが。

父親の書斎に虫が現れたような描写も、多分その辺りに絡めればお後が宜しいはず。

 

お医者さん(ココリコ田中)を除く、主人公ちゃんの前に現れた全ての島民が妄想だった可能性もあります。

父親がお医者さん以外の島民と対面するシーンは島にやってきた序盤意外に存在しない事から、こちらの可能性も捨てきれません。

 

 

 

この、結末まで知って尚謎が残る、という作り自体はとてもサイレンっぽい感じがしますが、いかんせんこちらは情報量が圧倒的に少なく、完璧に謎を読み切る事が構造上不可能なのがとてつもなくもどかしく感じます。

 

 

 

終盤の、例のアレMADも失笑レベルの大音量音割れサイレンとか、主人公ちゃんの携帯の着信音とか、環境音とか、そういうSEの音量に対して、役者さん達のセリフの音量があまりにも小さすぎて本当にどうしようも無いレベルで驚きました。

父親役の森本レオの声すらまともに聞こえないのは正直どうなんだろうって思います。

もしかして、もしかして、音で驚かせようとか、そういう安直な路線だったりするんでしょうか。まさかね、そんなね。

 

 

 

個人評価:★★☆☆☆

 

一連の展開を全て妄想にするなら、それなりの覚悟と理由付けと整合性を持ってやってほしいと、妄想オチ苦手の俺はそう言いたい。

 

現在、以下の配信サービスで視聴できます。

ではまた。