イベント・ホライゾン(1997年/アメリカ) バレあり感想 人知を超えた"何か"との邂逅と恐怖を描いたコズミックホラーの傑作。
SFとしてもホラーとしてもオススメできてしまう、あまりにも強すぎる一本。
(EVENT HORIZON)
予告:https://youtu.be/3Eki-5JQiRg
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
消息不明だった宇宙船イベント・ホライゾン号の信号が7年ぶりにキャッチされた。
船の設計者でもあるウェアー博士は、救助艇ルイス&クラーク号のクルーと共に、調査のためイベント・ホライゾン号へ向かう。
だが程無くして狂気が人々を襲い始める。
■感想
監督は実写版バイオハザードシリーズの人ことポール・W・S・アンダーソン。
この監督って今はアクションばっかり撮ってるイメージですが、90年代末に制作された本作『イベント・ホライゾン』に関しては、ゴリゴリにSFな世界観でコズミックホラーをガッツリやっていて面白いです。彼のキャリアの中でも異質な一作だと思います。
ビックリするくらいちゃんとしたコズミックホラーです。映画の世界では実は珍しい作風。
アメリカの小説家H・P・ラヴクラフトが提唱したジャンル、というか最早概念ですが、それがコズミックホラー。
この広い宇宙の中で人類は無力であるという、どうしようもないヤバさみたいな感覚を根底にした、超常の存在に対峙してしまった者の恐怖を描くジャンル。
ラヴクラフトはクトゥルフ神話の始まりを作った人と言えば、なんとなくどういうものかイメージできるかも。
(小説等の映像化作品も含め)コズミックホラーと呼べる作風に強く影響を受けた作品なら多数あります。
それら多くの作品と本作イベントホライゾンの最大の違いは、超常的な存在が怪物として登場せず、あくまで事象そのものとして恐怖が描かれている点なのかなと思うんですよ。
イベントホライゾン号が7年間なにをしていたのか、乗組員は生きているのか、それらを調査する為に船に乗り込む救助艇のクルーとウェアー博士。
彼らは次第に幻覚や幻聴に苛まされ、次第に追い込まれていきます。
クルーが未知の恐怖に直面する様も中々に見応えがありますが、恐怖以上に狂気という要素が魅力の根底にあると思いました。
船に憑りつかれたかのように次第に狂っていくウェアー博士が一番顕著ですが、他の乗組員たちも、己のトラウマや根源的恐怖に囚われ、それを船に利用され発狂しかけるシーンが何度も登場します。
そして、SF映画としての側面にもとても力が入っている点がたまらないです。
たとえば『インターステラー』で見られた、紙を折り曲げてペンを刺しワームホールとワープの原理を説明するシーンがあります、というかこっちが先と言った方が正しいのかも。
近未来の化学技術を感じさせるキーワードは他にもたくさん出てきますし、船体や内装の意匠も、今の時代から地続きである事をイメージさせてくれるようなリアリティのあるインダストリアルデザインが堪能できます。
というか最早この映画の特撮への力の入れ様そのものが狂気的とすら言えます。
無重力状態から重力が発生する瞬間の液体や浮遊物の挙動、0気圧での人体の変化、船外活動シーンetc……。
この映画の作風を考えたら、そこまで力を入れる必要は無い部分なはず。
近未来SF宇宙モノとしてのクオリティも、僕個人としてはほぼ完ぺきなレベルだと思っています。
■〆
個人評価:★★★★★
SF要素とコズミックホラー要素を、異次元を経由する事で宇宙の何処へでも行ける新技術という部分で繋げ、ひとつの作品として完璧なバランスで完成させた映画。
グロテスクな描写もそこまで多くは無く(後半はちょっとラッシュ入りますが)、基本的には宇宙的恐怖そのもので殴る作りになっていて、僕はとても好きな映画です。
イベントホライゾンは以下の配信サービスでも視聴する事ができます。
ではまた。
そういえばクトゥルフTRPGのルルブが新しくなっていました。
欲しい。
↓こっちは従来版。
クトゥルフ神話 TRPG (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
- 作者:サンディ ピーターセン,リン ウィリス
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
- 発売日: 2004/09/10
- メディア: 単行本
↓クトゥルフ神話好きにオススメ