キュア ~禁断の隔離病棟~(2016年/アメリカ) バレあり感想 ビジュアルやドキドキ感を楽しみたいならアリ。張り巡らされた謎と結末を楽しみたいならナシ。
この邦サブタイトルはAVみたいで印象良くないと思う。
『キュア ~禁断の隔離病棟~』
(A Cure for Wellness)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
社長がバカンスから帰ってこないので、連れ戻しに行かされたロックハート社員が謎の療養施設で翻弄される。
■感想
約2時間半という大長編サイズで、スイス山脈の中にひっそり存在する居城を改築した療養施設の謎を描いた映画。
主人公ロックハートは自分の会社の社長をNYに連れ戻す為にこの施設にやってきますが、たまたま事故でケガを追いこの施設の患者としてしばらく過ごす事に。しかし施設での治療が始まると、ロックハートは奇妙な体験に遭い次第に施設の闇を知るようになる、というのが大まかな話の筋です。
ミステリー色のとても強いサイコスリラー/ゴシックホラーって感じの作風です。
スイス、アルプス山脈の一角に佇む古城を改築した療養施設を舞台に、主人公ロックハートが幻覚と現実の狭間で何が事実なのか次第にその境を見失いながら真実を探ります。
奇妙な現象の数々がロックハートに襲い来る中、200年前にこの場所で起きた男爵とその妹の悲劇的な物語と、現代の療養施設としての表の顔との関連性が次第に明らかになっていく流れはとても惹きこまれます。
そこにアルプス山脈や古城等の情景の美しさ、老人達が過ごす日常風景に潜む違和感など、ビジュアル的な緩急も加わり、独特のじわっとしたドキドキが楽しめました。
確かにそういった部分でとても楽しめたので僕は肯定的に捉えてはいるんですが、
メインディッシュに当たるミステリーとその結末という映画の根幹を成す要素が微妙に思えたのも事実です。ていうかそういう要素を期待して観た訳で、そこがスカされた感じもありました。
だいたいこんな感じの話↓
この施設の所長でもあるヴォルマー医師は、実は200年前に妹と結婚して焼かれた男爵その人であり、その顔は実はフェイスマスクで中身はデッドプールみたいな感じでした。彼は長年の研究の結果、この土地の特殊効果付きの水でウナギを育成し、そのウナギを人間の体内に送り込み、ウナギを宿した人間から採れるエキスに不老不死効果がある事を発見し、それを用いる事で200年もの間生き続けていました。劇中にヒロイン的に登場するハンナちゃんは男爵の実の娘であり、彼女もまたウナギエキスで100年以上も生き続けています。
↑を要約すると、療養施設は実はウナギエキスを生成する為の施設だった、という事です。
根底にあるのが不思議な水って段階でちょっと「ん?」って思わせてからの、
それをダイレクトに人間に与えると毒だがウナギを経由するとあら不思議!で「なにこれ」と思わせ、
トドメに「僕たち実は百年単位で生きてました!」と堂々と言い放つヴォルマー医師で僕は完全にこの映画を諦めました。
ロックハート社員はヒロインのハンナちゃんと協力して男爵を倒し、会社から迎えに来た役員たちも無視してハンナちゃんと逃避行してハッピーエンド!!って事なのかもしれませんが、ぶっこみ方が雑すぎてついていけません。
途中までロックハートは本当に気が狂ってしまっているのかどうか、というところでスリラーやっていたので、ロックハートはやっぱりマトモだったという事が分かると同時に不老不死やらなんやらも諸々現実のものだった、という風に繋がるのは理解できるんですが唐突な印象はぬぐえませんでした。
それと、施設にやってくるのはいずれも世界的な富豪や成功者の老人ばかりである理由に関しては結末を観ても分かりません。
老化止めのウナギエキスは金持ちからしか抽出できないとか?でもそれだと老人である意味も分からないし……。
ウナギエキスの研究資金を治療費から調達する為だったからとかでしょうか。
2時間半という長さに全く必要性が感じられませんでした。
とにかく無駄に思えるシーンが多かった印象です。
ロックハートが水中で治療されてるシーンで、お付きの男性スタッフが後から突然やってきた女性スタッフに突然誘惑され突然ヌきはじめてロックハートが溺死しかけるのを見逃すシーンとか、要らないオブ要らないでしょ。
■〆
個人評価:★★☆☆☆
こういった多くの謎と伏線を張り巡らせるタイプのミステリアスな映画のオチにしては強引すぎる落とし方をしているので、それについては星1ですら生ぬるいと思いました。
ただ、そこに至るまでの過程が楽しい映画ではあるんですよ。
中盤までの雰囲気や情景等はとても楽しめましたし、ドキドキさせるような演出も結構凝ったものが多くてそこは本当に好きです。
判断に困る映画でした。
この映画は以下の配信サービスで視聴する事が出来ます。
ではまた。