ダークタワー(2018年・アメリカ) バレあり感想 ちゃんと一本の映画として作られてました!
思ってたよりも数倍面白くてもっと早く観にいっときゃ良かったなって。
『ダークタワー』(原題:The Dark Tower)
■ストーリー
ジェイクは毎晩同じような悪夢に悩まされていた。
黒衣の男、巨大な塔、ガンスリンガー、黒と炎に包まれる世界。
夢に見るそれらの光景をシェイクはただの空想とは思えなかった。
ジェイクは世界中で頻発している地震が、夢に出てくる塔と関係がある事を確信する。
そんなジェイクの元に黒衣の男の手先が現れる。
ジェイクは手先から逃げ、廃屋に残されていたポータルを用いて異世界へと向かった。
中間世界と呼ばれるその世界で、ジェイクは夢に見た塔の守り手、ガンスリンガーであるローランドと出会う。
一方、黒衣の男はジェイクが類稀な超能力の使い手である事を知り、ジェイクを捕らえて暗黒の塔を破壊しようと目論む。
暗黒の塔はこの世界を護る巨大な結界の役割を持っていた。
そして塔が破壊されると外の世界から怪物が押し寄せ、世界は終焉を迎えてしまう。
ローランドとジェイクは黒衣の男の、或いはその上に居る存在の企みを阻止するべく旅に出る。
■感想
・本作は一本の映画としてちゃんと纏まっている
スティーブン・キングが生涯かけて書き上げた大長編の映画化で、いくつかの作品と世界観を共有している、
っていう事くらいしか知らない状態で本作を観たんですけど、
一本の映画としてしっかり纏まった作品になっていて良い意味で意外でした。
というか、サイエンスフィクションやダークファンタジーの色が凄く濃い作品なんですね。
ホラーじゃなかった!!
基本的には少年のジェイクとガンスリンガーのローランドの二人を中心に物語が進んでいきます。
ジェイクのストーリーとしては、
夢に見た世界が現実である事を確信して、
その過程で自身がシャインの使い手である事を知りつつ、
最後にはローランドと協力して黒衣の男を倒すといった感じでした。
結構エグいくらいに王道感のある構成になってます。
一方のローランドのストーリー。
父を黒衣の男に殺された事から復讐の鬼と化し、
ジェイクと出会い、彼と行動を共にする過程で塔の守り手として再び目覚め、
最後には復讐心では無く守り手として黒衣の男と対決するという感じ。
こちらもこちらで、発端、困難、結果の流れがめちゃめちゃ分かりやすいです。
そしてこの二人のストーリーは同軸で進んでいくわけですが、
全編通して物語が凄くストレートに描かれている印象を受けました。
要は、今何が起きているのか、目的は何か、この後何をするのか、といった諸要素がとてもわかりやすく且つテンポ良く次々に提示されていくので、
とても素直に映画に引き込まれますし、最後まで楽しめました。
そして何よりうれしいのが、
映画内でメインに取り扱われる出来事の顛末はちゃんとこの一本で完結まで描かれるという点です。
ここが凄く個人的に意外でした。
というのも原作はもうなんか凄い分量らしくって。
しかも原作者のスティーブン・キングがライフワークだと言うくらいのものなので、
映画化もこれまで何度も企画されては頓挫していたらしいんですよ。
原作未読でそういう話だけを聞いて映画を観に行った僕としては、
「まー最後には中途半端に締めの空気に入って、強引にクリフハンガーして終わらせんだろ?」
みたいな考えで映画を観てしまってました。
ところが実際、暗黒の塔をめぐる黒衣の男とガンスリンガーの戦いは最後まで描き切られるわけで。
黒衣の男とか、何か笑えるほどしっかり倒されるから、すっごいスッキリ映画館出てきました。
もちろんシリーズ的な伏線というものは大量に散りばめられていました。
印象的なクリムゾンキングというキーワードであったり、
他の世界や世界の外の脅威であったり。
或いはそれらも他作品とのリンクに関わる要素も含まれているのかもしれません。
そういう意味では、世界観を楽しむ系映画の要素もかなり色濃く含まれているかもしれないです。
・原作やスティーブン・キングの他の作品も観た方が良いのか?
ダークタワーは、いくつかのスティーブン・キング作品と世界観を共有しています。
というか結果論的な感じですが、
多くの作品が言わばダークタワーのスピンオフみたいな感じの立ち位置にある状態です。
故にスティーブン・キングの他作品の要素も相互に関わってくるため、
他のスティーブン・キング作品も最低限読んでおいたり、映像化されているならそれを見ておいた方が良いのか?と考えました。
が、結論から言えばそれは殆ど必要ないかと思います。
もちろん興味を持ったらガンガン手を出すべきですが!
映画でもこの要素は結構ガッツリ出てきました。
それこそ主人公のジェイクはシャイン使いですし。
『シャイニング』で描かれた超能力です。
ちなみに、今作の輝き描写はキューブリックによる映画化作品に準じていた感じでした。
キューブリック版にブチギレたキングが制作に関わったドラマ版シャイニングの描写を知らんので比較もクソも無いですけどね!
また、廃墟と化した遊園地に残されたペニーワイズの名前であったりもそうですね。『it』のピエロです。
とにかく映画版でも、そういった他作品とのリンクという要素をしっかりと描いています。
が、本作が立ち位置的にはシリーズ第一作目に当たるからなのかもしれませんが、
別に他の作品群を知らなくても問題は無い構成になってます。
シャインという超能力に関しても映画内でしっかり解説ありますしね。
そもそも本作は多次元世界をテーマに描いた作品であり、
超能力や廃墟といったものがサイエンスファンタジー的要素として自然に溶け込める世界観になっています。
そこに考察の余地なんかもあるので、そういうのが好きな人は掘り下げて更に楽しめるよっていう、拡張要素みたいな感じで捉えてオッケーなんじゃないでしょうか。
■まとめ
復讐に燃える男と異世界から来た少年が旅を通じてお互いに一歩前に進む物語として観ても良いと思います。
もしくは壮大な世界観とそこに見え隠れする未来的な描写の数々を楽しむことも出来ます。
あるいは、相変わらずハリウッド映画はニューヨークの上空に異変を起こしたがるよねっていう、昨今の大作映画あるあるを楽しむのだってありかもしれません。
物語としてはやりたい事、描きたいことがかなり明確に提示されているので分かりやすいです。
そして全体的にはダークな空気感が漂いつつも、王道にそった気持ちのいいストーリー展開が続きます。
その上で、注視すると様々なキーワードや伏線が散りばめられていたりして、
わりと万人にオススメできる作品な気がするんですよね、僕は。
ぶっちゃけ初日に観に行かなかったのはそこまで期待してなかったからなんですけど、
かなり評価が覆りました。
これはかなり面白い映画だと思います。
スティーブン・キング作品が好きなら足を運んでみて損は無いと思いますよ。
というか意外とスティーブン・キング原作の映画とかドラマって沢山ありますよね。
しかも、ホラー作品以外の映像化作品でもたくさん名作があります。
『グリーンマイル』とか『スタンドバイミー』とか。
『ショーシャンクの空に』の原案にもなってるらしいですし。
そして、真ん中くらいの面白さのドラマを挙げたい時に真っ先に名前が挙がりがちな『アンダー・ザ・ドーム』も、原作はキングの小説らしいですね。
これは知りませんでした。
ま、とにかく一度観てみてください。
ではまた。