IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 (2017年/アメリカ) バレあり感想 実らぬ恋にもめげない転校生のデブ、ベン・ハンスコム少年の話。
夏と言えば戦争映画だよねって言っても何一つ同意されないけれど、
夏と言えばホラー映画だよねって言うと100万イイネくらいされるらしいぜ。
だから俺もホラー映画を観たんだ。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』
(IT)
ネタバレ有りです。
■ストーリー
定期的にデリーの街に恐怖を齎そうとするペニーワイズ。
今回もノリノリで子供達を驚かせに来たら思いの外てこずる。
■感想
ホラー映画版の『スタンド・バイ・ミー』と言われているのがよく分かりました。
ジュブナイルホラーというらしいですがとにかくノスタルジックな情景の中で繰り広げられる少年少女のひと夏の物語感が凄まじいですね。
襲い来るホラー描写も、グロから静寂系からバリエーションに富んでますし、それぞれの少年少女の抱える悩みや問題、子供達に無関心な大人達、デリーの街の秘密の探索といった要素がそれぞれ深く絡み合って一つのストーリーをしっかり形成している点もとても素晴らしいですし最高の映画だと思うんですけど、
そんな事よりも、転校生で速攻いじめのターゲットにされて即ルーザーズクラブ堕ちしてきた性格良いデブのベン・ハンスコムというキャラクターが、あまりにも、あまりにも魅力に溢れすぎていて、哀愁と良心に塗れていて最高だったぜ、という話をこれからしますね……。
もう、しょっぱなでいきなりヒロインのベバリーに惚れちゃうわけですよ。
たまたまベンの音楽の趣味が通じただけ、そして誰も何も書いていないサインページにサインをしてくれただけ、それでもう気持ちを完全に持ってかれてしまう。
そんなベバリーは主人公のビルとなんだか良い感じで、ビルもベバリーに気がありそうな雰囲気が隠しきれていません。
当然ベンはそれに感づいているにも関わらず、二人の間を邪魔しようとはせずに、ビルとはむしろ仲間として上手くやろうとしていくわけです。
12歳の子供がだぜ?健気過ぎて死にそうだよこっちは。
ペニーワイズに浚われたベバリーが、宙に浮遊しながら白目向いて半分死んだみたいな状態になっていたところ、勇気を出してキスして彼女の意識を戻したのがベンです。
これはもしかしたら他の誰かのキスでも良かったのかもしれませんし、キスじゃなくても良かったかもしれない、もっと言えばたまたまそのタイミングと状況で(例えば宙に浮いていたのを引きずり降ろされたからとか)目覚めただけかもしれません。
でもそれはベンにとってとてつもなく特別な何かを感じる瞬間に違いないはずなんです。
そんなベンを差し置いて、ベバリーは宙に浮く自分を放置していたビルの元に駆けより、二人は親密な抱擁を交わします。
ベンの目の前で。
こんな残酷な事が、あってたまるかよ……。
ビルはひたすら頑固です。それはまた別の良さにも繋がる訳ですが。
行方不明のジョージ―を探し出す事、その過程で現出したペニーワイズという存在に対峙する事に徹底的に拘り、それ以外の問題はとにかく二の次にしています。
そんな中、常にベバリーのケアをして彼女の事を思って行動していたのはベンです。
そんなベンが、少なくともパート1である本作では最後まで報われません。
でもベンは拗らせたりしないんですよね。
上級生の異常なおっぱいへの情熱を向けられ酷いいじめにあっても、好きな女の子が自分に振り向いてくれなくても、ベンは最後のシーンまでホント良い奴です。
下手なグロ描写よりもよっぽど残酷。
■〆
個人評価:★★★★☆
ペニーワイズがどうとか無関心な大人がどうとかよりも、
ただ一心ベバリーの事を思って必死に彼女の為に頑張るベンは殆ど報われず、
宙に浮いて白目向いてるベバリーをとりあえず一旦保留してジョージ―の姿に化けたペニーワイズの処理を最優先したスーパー合理的判断力持ち主人公ビルとベバリーの恋だけがただ発展するという、
この人間の悪意の無い無情さが正直一番怖い、というか切なくてそこがとても好きです。
スティーブン・キングの原作も、90年版の実写映画も観ていない為、大人になった彼らの話を僕は知りませんが、きっとベンは報われないでしょうね。
そういう毒として意図して描かれてますし……。
そこがまたいい所なんだと思ってます。
ではまた。
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スティーブン・キングの小説の映画化作品の一部↓