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エルカミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE(2019年/アメリカ) バレあり感想 普通の生き方を取り戻す為に普通じゃない事を繰り返したジェシーの最後の物語。

 

大人気ドラマ『ブレイキング・バッド』の続編。

アーロン・ポール演じるジェシー・ピンクマンを主人公に、ブレイキングバッド最終話のその後を描いた映画です。

僕はブレイキングバッドのスピンオフドラマである『ベターコールソウル』は未視聴なのですが、本編だけ知っていれば全く問題ない作りになっていました。

 

 

エルカミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE』

El Camino: A Breaking Bad Movie)

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画像出典:Netflix

 

 

以下、ドラマ『ブレイキングバッド』及びエルカミーノ本編のネタバレを含む感想記事です。

 

 

 

ストーリー

 ウォルターの手によって生きて帰ってこれたジェシー・ピンクマンだが、シャバに馴染むも潜むも難しい事を改めて実感する。

 

 

感想

 

たしかにブレイキングバッドの後日談ではあります。

ただ、そういう体裁でいながらも実際に描いているのはジェシーの物語って感じでした。

 

ブレイキングバッドS5のラストシーン直後からこの映画は始まります。

ジェシーの逃亡劇とウォルター一派の顛末が描かれるのかと思っていたのですが、そちらの線はあまり触れられる事は無く、少なくともジェシーの逃亡劇自体は普通に逃走成功する形で終わったのがかなり意外でした。

つまり、ブレイキングバッド自体のストーリーはやはりS5で完結しているわけで、そこから先を描く意味も無かったんだと思うんです。

そうなるとジェシーの物語として構成されるのは妥当というか当然なのかもしれません。

なぜならブレイキングバッド本編で唯一、最後まで振り回される側として描かれ続けたのがジェシーだったからです。

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そんなジェシーがようやく誰かに振り回されるのではなく、自分の足で新たな道を見つけるまでを描いたのが『エルカミーノ』なんだと思います。

とても良い映画でした。

 

 

 

ブレイキングバッド本編を視聴していた当時は、僕はウォルターもジェシーも双方おかしい人間だと思いながら観ていた事を思い出しました。

ジェシーもウォルターも、家族のため仲間のためと言いながら好き勝手に自己中心的に行動して、その結果が正にタイトル通りブレイキングバッド(道を踏み外すという意味のアメリカ南部のスラングなんだそうです)していくわけです。

これはシーズン5の最後でウォルターがこの事を独白していて本人も自覚していたことがわかります。

 

5シーズンすべての内容が基本はこのフレームで構成されています。

僕自身も当時はそこで思考が止まっていて「こんな事態に陥っているのはウォルターもジェシーも頭がおかしいから」というところで納得していました。

良い大人が何やってんだよ……みたいな、呆れにも似た感覚。

 

ただ、ジェシーの年齢に自分の年齢が追い付いてきた今、改めて思い返すとジェシーってめちゃくちゃ普通の青年だったんだと思う事が多く、このキャラクターの見方が変わりました。

その行動やイリーガルでサグなライフスタイルは一見すれば非凡さの象徴、アウトローの典型みたいな風に見えますが、きっとそうじゃないんですよ。

ジェシーは大人でありながら大人になり切れていない、自立する事が出来ない人間としても描かれていました。そこを僕はあまり注目して観ていなかったのですが。

そして、そういう若者は(僕含め)意外と世の中には多いんだなって思います。

 

高校時代の教師とその教え子が中心のドラマという事を考えると、自立という要素は重要なものだったんだと今更ながら気づいた次第です。

そしてブレイキングバッド本編では結局ジェシーの自立の物語は完結していないわけですね。

 

大人になりきれていない大人、というのは実はウォルターにも当てはまっています。

ただウォルターの場合は、余命あとわずかという状況をある意味では免罪符にして、自分自身の願望と欲にのまれていき、意地でも突き進むしか無くなってしまったわけですが。そして最終的に間違った自立の方向性を見出して命を落としています。

ジェシーはそうではありませんでした。

ある種の客観性を持っていました。メタっぽく言えばウォルターの異常性を際立たせる為のキャラクターでもあったと思います。

冷静に状況を見れる人間だった点がウォルターとの違いなんじゃないかと思います。

だからこそジェシーはウォルターとは違い、自分では無く他人に降りかかる不幸だけはなんとしてでも避け、道を誤らないように行動していました。

そんなジェシーのキャラクター性は今作でも良く描かれていたと思います。

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警官(のフリをしたチンピラ)二人を殺せる状況でも銃を下ろして拘束される道を選ぶジェシー。ここがウォルターとの違いだと思います。

 

エルカミーノ』でのジェシーはその平凡さが相変わらずというか、普通の人なんだなと思わされるシーンが多々あります。

ジェシーは馬鹿な若者では無く、平凡な若者だからこそ、ふりかかる難題を平凡さで突破するしか選択肢が無いんです。

ウォルターと違い平凡だからこそ、その瞬間その瞬間でギリギリの選択を取り続けるしかないキャラクター。そこがとても魅力的だと今では感じます。

だから今作でも、警察の張り込みにも気づかず、掃除屋(ブレイキングバッド本編で出てきた諸々の犯罪の証拠や過去の経歴を消してくれる存在)との駆け引きにも対応できず、再び裏の世界に戻る事もできないわけです。

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掃除屋が表の世界でも掃除用品の店を営んでいるという面白さ。エルカミーノは笑える小ネタが沢山あります。

 

ジェシーは悪化する状況から抜け出そうと必死だっただけなんですよね。

ウォルターが居ない『エルカミーノ』では、状況は悪化の一途を辿らず、ジェシーが生きる為に行動する事で少しずつ状況が良くなっていくのが面白いです。

諸悪の根源はやっぱウォルターなんだなって。

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回想シーンではウォルター出てきます。ドラマのいつ頃に当てはまるのかは分かりません。この回想シーンでウォルターがジェシーの将来について話しているのが、中々グッときますよ。

 

 

 

西部劇を意識した撃ち合いのシーンはとてもシュールで面白くて好きです。

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ジェシーが掃除屋に自分自身の経歴をクリーンスレートしてもらい新たな人生を歩む為の資金を稼ぐため、溶接工場に踏み込みます。

そこでまさかのガンマンファイト。

ここでジェシーは命を捨てる覚悟があるように見えるんですが当然そんな事は無いんですよね。

西部劇らしく、ジェシーは確実に勝つための仕込みを加えてこの場にやってきました。

それは鉄板を胸部に仕込むとかそういうものでは無く、ポケットに拳銃を隠し持っていつでも撃てるようにしていたわけなんですが、結果これで窮地を脱しています。

生き延びる為に命を賭けなきゃならない矛盾に対して、ズルかろうがなんだろうが生き延びる事を優先させるところもジェシーらしいっちゃらしいと思います。

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最後は溶接工場を爆破してフィニッシュ!!爆破させる意味。

 

 

 

 

回想と共にジェシーのその後が描かれた『エルカミーノ』。

そのラストシーンでは、ジェシーは掃除屋の手を借りて無事に別人となり、アラスカにやってきました。

つまり、過去の経歴なども含めたこれまでの全ての人生を放棄したという事です。

ただ、同時にこのラストシーンが、ジェシー自身が初めて自分の道を見つけて見定めた瞬間でもあるんだと思います。

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冒頭の回想シーンでジェシーとマイクが、やり直すならどこで人生をリスタートするか話していました。マイクの答えはアラスカ。アラスカはアメリカ最後のフロンティアだと。

これから全くの別人として生きる事は寂しそうですが、最後のジェシーの表情は柔らかくて穏やかです。

ようやく自分の人生を始める事が出来るからこその表情なんでしょうね。

凄く静かに終わります。そこがいいね。

 

 

 

 

そんでトッド太り過ぎじゃない????

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回想シーンでトッドの出番があるわけですが、ドラマシリーズと同一時間軸上の存在とは思えないほどの太りっぷり。

 

 

個人評価:★★★★☆

 

ジェシーというキャラクターを再確認できた点で、ドラマシリーズからここまで期間を開けての後日談というのは僕個人としてはかなりフィットする部分がありました。

自分自身が大人になってしまった今だからこそ、ジェシーの平凡さとその魅力に気づかされた感じですね。

 ジェシーが過去を切り捨ててしまってでも自立する、やり直す様を描いたこの映画は個人的にかなり好きです。 

 ブレイキングバッドを観ていた人なら絶対に楽しめると思いました。

 

ではまた。