ワールドオブライズ(2008年/アメリカ) ネタバレあり感想 部下に悪事を働かせ自分は高みの見物決め込む上司キャラが、この映画の魅力の根幹な気がした。
(Body of Lies)
予告:
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
現地の協力者や諜報機関を裏切ったり犠牲者を出しながら大物テロリストを追っていたCIAだが次第に空回り始める。
■感想
対テロ戦争でのアメリカの良くないところを描いてみた系の映画。
対テロ戦争のリーダーシップを執るアメリカの、正義の名の元で行われる横暴の数々ですが、CIA長官であるホフマン(ラッセル・クロウ)というキャラが対岸の火事のような態度でそれらを流していくのが、性格悪くオフィスワーカーを弄っていて面白いです。
ついでにホフマンのありがた迷惑で現地で動いていた作戦も台無しになったりと、アメリカの悪いお偉いさん像を一点集中させたみたいなキャラクターにしている印象です。
そんなホフマンに対して、現地で活動する諜報員の主人公フェリス(レオナルド・ディカプリオ)は不満や疑問を抱きつつも、逆らう事も出来ないので仕方なくホフマンに従うような立ち位置にいます。
現地の情報提供者や工作員などの協力者を用済みになったら即使い捨て、更には架空のテロ組織を生み出し事件をでっち上げた際に、善良な一般市民を組織のボスに仕立て上げる等やりたい放題で悪事極まっていてドン引きです。
もちろん誇張している部分は絶対にあるとは思うんですが、それだけ対テロ戦争の正義の名の元にやりたい放題している連中が居るという印象が、もしかしたらアメリカ国内では在るのかもしれません。
そんな中主人公フェリスはホフマンの反対を押し切ってヨルダンの諜報機関と協力関係を結びます。
そこのボスであるハニさんは信用第一の男で、フェリスはその実直さを買われ気に入られるのですが、ホフマンの暴走で結果的にフェリスが嘘や隠し事をすることになり、両者の関係も悪化する始末。
この映画の悪役は多分テロリストたちでは無くマジでホフマン。
騙したり使い捨てたりやらされていたアメリカCIA諜報員であるフェリスは、最終的にテロリストたちに拘束され酷い思いをすることになり、一方信用第一で動いていたハ二さん達が最終的にテロリストを捕らえ、フェリスも救い出して世界のヒーローになるという一見するとコントラストがくっきりしすぎな綺麗なオチが付きます。
ただこれもよくよく考えれば、ヨルダンの諜報機関もまたフェリスに報告せず進めていた秘密作戦の結果であり、CIAが足元を掬われて手柄を取られたような状態だったりもするのでわりと面白い展開でした。
もう全て嫌になっちゃったフェリスはCIAを去る感じで締めくくられるこの映画ですが、やらせていた張本人のホフマンが最後の最後までノーダメージで終わる辺りにビンビンに悪意を感じます。
ホフマンを演じたラッセル・クロウが本当に良い演技をしている映画だと思います。
事在る毎に他人事みたいな態度でフェリスとやりとりしていますし「こういう仕事だから」みたいな割り切りがハッキリしすぎていて、もはやサイコ感すら漂っている気がします。
表情もなんか不気味な感じだったりしますしね。
ラストカットでこそ若干フェリスに対しては情があったような雰囲気を出していますが、それでもここまで徹底的に人員を使い潰していたので、彼に対して人間性は殆ど感じられません。サイコだよホフマン。
■〆
個人評価:★★★☆☆
正義ってなんだろう系の映画でした。
この映画の場合はとにかく悪事が誇張されているような印象を受けます。
悪事を子供の面倒をみつつ平然とフェリスにやらせるホフマンというキャラクターがキモで、彼の存在がこの映画の悪意成分を大いに高めていると思いました。
そう考えたら魅力的なキャラでもあるのかもしれないです。
この映画は下記の配信サービスで視聴できます。
ではまた。