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セッション(2014年・アメリカ) 初見バレあり感想 凄い映画を観た気がする……

 

僕は長い事バンドやら音楽やらと一緒に生きてきました。

実家はピアノ教室で僕も母からピアノを教わっていました。

高校生になってギターに手を出したものの挫折してまいましたが、その後はボーカルとしてバンドに参加してました。

 

大学生になってベースを始め、そちらで本格的にバンド活動をしてました。

今じゃそのバンドは活動休止中なんですけどね。

大学を卒業した今でもベースはずっと弾いてます。

 

さてそんな中、この映画を観ました。

なにせ音楽と長年生きてきたので、この邦題には惹かれるものがあった次第です。

 

 

『セッション』(原題: Whiplash)

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この予告の最後に「ラスト9分19秒~」みたいなの出てきてますが、

実際はもっと前の段階からイカれてますし、全編にわたってかなり日本人には楽しめる内容になってます。色々な意味で。

 

もちろん音楽に興味が無い人でも楽しめます。

その理由は後述します。

 

 

 

 

 

概要

■タイトルに関して

まず初めに、原題の"ウィップラッシュ"とは、ハンク・レヴィが1970年代に発表し人気を博したジャズミュージックの有名な曲のタイトルです。

 

この楽曲は、劇中でも練習曲/発表曲として用いられています。

また、ウィップラッシュとはそのまま「鞭打ち」も表しています。

というのも、鞭打ちはドラマーの持病と言ってもいいもので、今作の主人公はドラマーなんですね。

この原題は内容を表した良いタイトルに思います。

邦題のセッションも、実はこの映画の終盤にかかってくる、かなり捻りの効いた両タイトルだったりします。

 

ちなみにこれがウィップラッシュって曲です。

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カッティングギターがめちゃめちゃかっこいい。

そう、この曲は所謂ロックジャズに近い曲なんです。

ファンクジャズとも言うのかな、よくそのあたりは分かりませんが。

 

 

■映画の内容に関して

この映画、一言で表すなら「スポ根リベンジ映画」って感じです。

日本人なら楽しめるっていうのはつまりそういう事ですね。

学生時代にキツイ部活動に参加していた人や、アルバイト先なんかでキツイ仕事をやっていた人にとっては特に、この映画で描かれる教師と主人公の関係性には理解を示しやすいと思います。

 

そして、音楽に全く詳しくなくても問題はありません。

実際僕も今作がテーマに用いているジャズに関してはあまり知識はありませんが、そこは全く問題になりません。

話の主軸はあくまで主人公とその教師の関係性にあります。

 

 

あらすじ

主人公アンドリュー・ニーマンはアメリカ最高峰の名門音大に通う19歳。

ある日、この音大で最高の教師である指揮者のテレンス・フレッチャーに声をかけられ彼の擁する学内のスタジオバンドに参加する事に。

 

そこでアンドリューを待ち受けていたのは、それまでのどこかぬるく、気の抜けた音大生生活とは全く違う、地獄のような練習の日々だった。

 

と、まぁこんな感じのお話です。

地獄のような練習の日々なんて書きましたが、実際地獄なのは練習よりもレギュラー争いの方で、映画内でもレギュラー争いはかなり濃密に描かれていました。

 

 

感想と考察

■結局どんな内容の映画だったのか

この映画の主軸は主人公のアンドリューと教師のフレッチャーの二人の関係性に終始しています。

ドラマーとして成功したいと願うアンドリューに、教え子達を音楽の世界で成功させたいと願うフレッチャー先生。

 

こう書くと、この映画の二人の関係性はとても温かく、信頼し合っているように思えます。

 

そんな映画ではありません。

 

物語が進むにつれ、アンドリューの中ではフレッチャーに対する憎悪の感情が高まっていきますし、一方のフレッチャーも度を越えた教育方法をお構いなしに炸裂させ続けます。

 

そして、映画の最終盤、それがお互い爆発する事になる訳です。

 

この映画は、結局のところ二人の男ががお互いに大人げなく相手に復讐し合う話です。

 

 

■色んな意味でリアル

この映画は、中盤までは主人公アンドリューの学生生活がメインになっています。

恋人を作ったり、憧れのフレッチャーのバンドに入れたり途中まで順風満帆です。

 

ところが、練習に参加してフレッチャーにボロクソ言われて自身のドラムプレイを更に高めようと自主練に精を出すアンドリュー。

その過程で折角作った恋人に別れを告げます。

分かれの言葉も「俺は偉大なドラマーになりたいんだけど、君が居ると将来邪魔になるから別れてくれ」といった内容。

 

ストイック過ぎます。

 

そしてストイックに練習を続け、なんやかんやあって主奏者にもなるアンドリュー。

 

コンテストに向けて更に精を出しますが、

コンテスト当日に交通機関の遅延やトラブルにより中々会場に辿り着かないアンドリューは焦ります。

レンタカーを用いてギリギリ会場に着いたアンドリューですが、フレッチャーは既に代役を立てていました。

 

その事が気に食わないアンドリューはフレッチャーに喧嘩を売ります。

フレッチャーからは「一度でもミスしたらお前はずっと譜面めくりだ」と告げられます。

急きょ借りたレンタカーの中に忘れてきたドラムスティックを取りに行き、会場に戻る途中に事故に遭い大けがをします。

それでも尚会場に向かい、血だらけでステージに立つアンドリュー。

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ケガの影響でまともに叩くことが出来ずに演奏は結局中断。

フレッチャーから「もう終わりだ」と告げられ、アンドリューは逆上してフレッチャーに掴み掛ります。

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この出来事がきっかけで、アンドリューとフレッチャーは双方大学を去る事になります。

 

どうですかこの報われなさ!

 

リアルなんですよね。

別に恋人を捨てたらビッグになれる訳でも無いのに、ストイックさを追い求めている余り周りが見えなくなってしまっているという状態がとてもリアルです。

 

だからこそ救いがあったら気持ちが良いんですが、この映画では残念ながらアンドリュー君の努力は報われません。

 

その後、ふとした所でアンドリューとフレッチャーは再会します。

が、この時点でフレッチャーがアンドリューに上記の件で復讐を企てているとは思いもしていません。

すっかり過去の事、過去の関係のような雰囲気で打ち解けたように話すアンドリュー君がまたリアル……。

 

そしてフレッチャーにそこでフェスに参加するバンドのドラムを頼まれます。

プロへの道が開いたような気がしているアンドリュー君。

思わず自分から振った元カノに連絡とかしちゃいます。

 

この辺りもまたリアル。

元カノには既に彼氏がいる上に、彼氏を口実に誘いを断られるのもリアル。

そしてアンドリュー君はこの先も報われません。

 

何だこの映画後半からおかしくなってきたぞ、そう思いつつ観ていました。

 

そして噂のラストへ……。

 

 

■ラストの展開について

 

映画の最終盤、フレッチャーに騙され、本来ステージで演奏するはずの楽曲の譜面を受け取っていなかったアンドリューは、碌な演奏が出来ませんでした。

アンドリューは一度そこで心を完全に折られ、ステージから逃げ去ろうとします。

 

ところが、ステージ外で出迎えてくれた父に抱きしめられ「帰ろう」と言われるとアンドリューの中で何かが変わります。

意を決した訳でも無く、本当に淡々とした様子でステージに戻ったアンドリューは、意外そうな視線でそれを見つめるフレッチャーを他所に突然ドラムプレイを始めます。

 

アンドリューの合図でベースも演奏に参加し仕方なくそのままステージを続ける事に。

フレッチャーはそのアンドリューの報復とも取れる行為に怒りを露にしつつも、スターとした演奏は止める訳にもいかず、指揮を続行します。

 

そして曲が終わる、かと思いきやアンドリューの演奏は止まりません。

いよいよブチ切れそうになるフレッチャーに対して「合図する」とだけ言い放ち、そのままドラムソロを続けるアンドリュー。

 

 

ここが本当に良いシーンだと思いました。

なにせこの時点でアンドリューとフレッチャーの双方とも、演奏が楽しくてステージに立っている訳じゃないですからね。

 

まず、フレッチャーは自身を辞職に追い込んだ(と思っている)アンドリューに復讐を果たしたかっただけで彼を呼びメンバーに加えています。

この少し前にフレッチャーの発言で、このステージで失敗したら音楽家としての道は途絶えるも同然、という旨の話がバンドメンバーの皆に伝えられているからです。

だから、本来の演奏予定曲をアンドリューに伝えなかったんです。

つまり、私怨の為だけに、アンドリューを潰す為だけにこのステージに立ってます。

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この密告というのは、

アンドリューが大学を退学になった後にフレッチャーも大学を辞めさせられているんですが、それの原因がアンドリューにあると思っている訳です。

 

 

一方のアンドリューも、フレッチャーにハメられた事を知って一度はステージから去ろうとしますが、彼は帰ってきます。

それはフレッチャーに報復を行うために他なりません。

フレッチャーのステージを邪魔しぶち壊す為にアンドリューは帰ってきます。

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自身のステージを汚され激昂するフレッチャーに対してのアンドリューのこの表情。

ざまぁ全開です!

 

こうしてお互いに相手を潰す為にステージに立っている訳です!

 

ジャズはもはやその為の道具に過ぎません。

 

■セッションとは

 

しかし、アンドリュー君はステージで演奏しているうちに、まるでゾーンにハマったかのように次第に自身のドラムプレイに没頭していきます。

フレッチャーの邪魔をする為に吹っ切れてステージに戻ったものの、そう言った感情が次第に消えていっているようにも見えます。

 

そしてそのドラムプレイにいつの間にか合わせるように指揮を行うフレッチャー。

お互いに目を合わせ、呼吸を揃え、演奏は遂にクライマックスを迎えます。

 

セッションっていう邦題は本当に上手く付けたもんだなって思いました。

セッションというのは、「音楽で会話をする事」と例えられる事があります。

ある程度の枠組み、コード進行などは決めておいて、後は各々が自由に演奏をするのがセッションです。

 

ラストシーンのフレッチャーとアンドリューはつまり、あの演奏の中で会話をしていると思いました。

 

それがかみ合っていき、最終的に最高の演奏に辿り着いて、映画は終わりエンドロールが流れます。

 

この瞬間のカタルシスたるや!!

 

既に本作観た人なら分かるはずです!!

なんだよあの気持ちよさ!!

 

結局のところ、この映画の序盤から中盤にかけてのあの窮屈さ、碌な成功体験も無く努力も報われないアンドリュー君の鬱憤が最高潮に達した後に爆発するあの感覚。

 

もう一度見直したくなる映画でした。

 

■感想

 

序盤、中盤、終盤とそれぞれストーリー上のテーマは違いますが、全体を通して観てみると非常に良くできていると思います。

 

特に印象に残るのはやっぱりフレッチャー先生。

 

フレッチャーみたいなブチ切れ教師いたなぁって思って観ていて、でも本当は良い奴なんだろうなぁと予想していたら↓のシーンで、

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やっぱり本当は良い奴だったパターンじゃん!

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と思ってたらこれですからね!!

本当に私怨で復讐したいだけの屑!!

 

こういう大人げないリアルさのある映画好きです。

 

良くも悪くもお気に入りなのが、序盤のシーンで、

フレッチャーが管楽器隊のメッツ君を「音程がずれている」として練習室から追い出すシーン。

フレッチャーに「お前だな」と追い詰められ、自覚は無いものの仕方なく「はい」と答えて追い出されてしまいます。

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この感じがまた何とも言えない。

僕もたまにありますもん、自覚は無いけどめちゃくちゃ責められて仕方なく認めちゃうこと。

 

そしてこの後のフレッチャー先生の発言がこちら↓

 

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もう無茶苦茶だよフレッチャー先生!!

 

 

 

 

 

 

とにかく、大人向けのスポ根って感じです。

オススメですよ。

何かわからないですが、所々に差し込まれるリアリティが堪らないんです。

 

 

フレッチャーの意図

フレッチャーがプロとして活躍できる人材の育成を行おうとしていたのは間違いないと思います。

劇中の会話で度々出てくるチャーリー・パーカーの逸話から、折れない人間、諦めない人間が成功者になると考えていて、そういった強い気持ちを持つ人材を探している訳です。

 

だからこそ学生に強く当たり続けます。

ですが、この方法にはゴールがありません。

例え、そう言った諦めない心の持ち主が現れても、その人物を追い込み続ける事になります。

 

その結果、かつての教え子がうつ病で自殺した事を知って、フレッチャーは涙を流したのではないかと思いました。

 

一方、ジャズバーでのアンドリューとの会話で、アンドリューに「一線を越えた」と言われ、

それに対してフレッチャーは後悔している様子は見せていません。

実際には、フレッチャーはもうこの方法以外に何もできなくなってしまっているだけなんだと個人的には思います。

 

そして、主人公のアンドリューは心の折れない、折れても諦めず帰ってくる人間です。

ラストシーンでフレッチャーが笑顔を見せているのは、きっとそう言ったフレッチャーの心情や方針も関わっているのかと思いました。

 

 

 

まとめ

 

子供の頃、尊敬の目で見ていた教師という存在は、実際には完璧じゃないし教師もまた人間であるという事を教えてくれる映画です。

そして、一生懸命取り組んだからって報われる訳じゃねえぞって事もビンビン伝わってきます。

 

あとは、音楽は会話にも復讐の武器にも用いる事の出来る凄い発明なんだって点くらいでしょうか。

 

 

 

ではまた。

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