28日後…(2002年・イギリス) バレあり感想
これをゾンビ映画と呼んでも良いのか俺にはわからない!
『28日後…』(原題:28 days later)
■あらすじ
イキり動物愛護団体が調子に乗った結果、激ヤバウィルス持ちのチンパンジーを隔離していた檻の外に出してしまう。
そのチンパンジーの一匹が人間に噛みついたので激ヤバウィルス、レイジウィルスがそこから人間の間で拡散する事に。
それから28日後、病室で目を覚ますジム。
病室を出て誰も居ない街をさまよう。
■登場人物
・ジム
前半はひたすらゾンビアポカリプスに放り込まれた被害者。
後半はこれが一転して、軍人相手に無双するバーサーカー。
主人公。
・セリーナ
ストイックなヒロイン。
自分ルール主義者。
ヒロイン。
・マーク
メインキャラクターかと思ったら割と序盤でセリーナにストイックに殺された。
・ハンナ
ロリコン向けヒロイン枠。
薬で頭がおかしくなったりする以外普通の女の子。
・フランク
感染の仕方がかなりアホくさくてかわいそう。
・ヘンリー・ウエスト少佐
人間の屑。
・ウエストの部下達
人間の屑の集まり。
■感想
・ゾンビ映画として観ると
冒頭、ウィルスが拡散するきっかけとなる事件が軽く描かれた後、
病室で目覚めるジムのシーンになります。
状況が既に始まったどころか煮詰まった状態から物語が始まる訳です。
『TWD』の始まり方はこれにかなり影響受けてそう。
本作はゾンビ映画、と言って良いのかわかりませんが、
その道のパイオニアであり伝説でもあるジョージ・A・ロメロのゾンビ三部作なんかと比較してみると面白いです。(ロメロ監督今年亡くなってしまったんですよね……)
特に後半です。
軍隊のやつらに匿われて以降この映画は人間関係に起因する物語への影響の比重がかなり高まります。
これはロメロ作品、特にゾンビ三部作の一発目である『NIGHT OF THE LIVING DEAD』に見られる要素で、尚且つ他のゾンビ映画だと実はあまり見られない要素でもあります。
ただロメロのゾンビ三部作で当てはめると、この映画は『DAY OF THE DEAD』(死霊のえじき)に当たる状況になってますけど。
また、28日後にはダッシュするゾンビ(ゾンビというか感染者なんですが)が出てきます。
これは2004年にロメロの作品をリメイクした『DAWN OF THE DEAD』でも取り入れられていて結構話題にもなりました。
本作の方が公開早いんですよね。
少なからず影響を与えてるはず。
そんな感じで、ホラー映画同士で持ちつ持たれつな関係があるのがちょっと面白いと思いました。
・テンプレもしっかりある
ゾンビ映画、サメ映画、そういったジャンルの映画作品には少なからずテンプレというものが存在します。
観る側はそのテンプレを楽しみにしている節すらあります。
何度も書いててアレですが、本作をゾンビ映画と言っていいのか分かりませんが、
本作にもゾンビ映画テンプレみたいなのはしっかり取り入れられています。
ゾンビアポカリプスの真っただ中に放り込まれた人間がどうなるか、みたいなものはかなり多くの作品で力を入れて描かれる部分です。
特に、この手の目覚めたら状況に放り込まれてたみたいなパターンのやつ、
だいたい主人公が家族を探しに行こうとして、それを仲間に止められるみたいなのは入ってきます。
『TWD』は助けに行って家族と再会までしちゃいますが。
生存者達のコミュニティがあるという情報を得て、そこに向かおうとする展開もテンプレですね。
そのコミュニティは既に崩壊してるという展開まで含め。
『アイ・アム・レジェンド』ではマルチエンディングの内の一つに、ヒロインとその息子がマジで機能してる生存者コミュニティに辿り着くというハッピーエンドのパターンとかもありますが、これはテンプレありき。
この生存者コミュニティというテンプレが出てくるとほぼ確実に「治療法があるに決まってる」「そんなものないんやで」みたいな問答が楽しめます。
あとは、「規則その1~(生き残るための自分ルール)」みたいなセリフが出てきますが、
これも結構なゾンビ映画テンプレのような気がします。
最近の映画だと『ゾンビランド』なんかでもこの自分ルールがくどいくらい出てきました。
というか『ゾンビランド』と『ショーン・オブ・ザ・デッド』観ておけば大概のゾンビ映画テンプレは楽しめますよね。
・個人的に好きなシーン、小ネタ
僕個人が勝手に面白いと思っただけなんですが。
露骨すぎるペプシの宣伝とかさ。
そう言えば『ワールド・ウォーZ』のクライマックスで、一難去った後にブラピが勢いよく飲み干すのもペプシだったような気が。
なんかわからんけど、このペプシを飲むシーンってのが映画に出てくると、
どれもやたら勢いよく飲むから笑っちまうんよ。
あとは恐怖演出のはずなんですが、なんでか面白くみえちゃうシーンも。
危険だから地上を行こうというジムに対して、近いからトンネル抜けようって言って強引にトンネルを行くフランク。
トンネルの中でテンション上がっちゃって無茶しちゃう精神年齢大学生のフランクのせいでタイヤがパンクし、
更にテンション上げて車を走らせていたので爆音がとどろいており、
それに引きつけられて感染者達も集まってくるという。
パニックホラーの王道を行くコントスタイル。
こういうの好き。
ハラハラさせたいはずのシーンなのに結果コントになっちゃってるみたいな。
他には無人のスーパーで買い物するシーンも好きです。
でも一番好きなのはこれ。
イギリス人はどんな状況下に於いてもお茶を飲むことを忘れない。
砂漠のど真ん中でパスタ茹でて水不足になった大戦時のイタリア軍に引けを取らないイギリス国民の極限の拘りっぷり。
・この映画は後半からやばい
この映画、軍隊が生存者を集めてる基地に辿り着くまでが前半、それ以降は後半としてかなりくっきり映画の構成が分かれてます。
で、前半に対して後半は更におかしくて面白いです。
特にジムがね。
ジムがもうすげえ。
この映画、前半は感染者から逃げるのがメインですが、
後半は生き延びた人々が狂っていく姿を描くのがメインになる二部構成です。
・フランク無駄死に
生存者コミュニティである基地に到着するも、やっぱりそこはもぬけの殻状態。
そんでフランクがひょんな事で感染してしまいます。
すると物陰から突如姿を表し、フランクを射殺する軍人の皆さん。
いやさっさと保護してたらそんな事にはなってなかっただろ。
何隠れて様子伺ってんだよ。
そんで何食わぬ顔してお茶の用意をしつつジム、セリーナ、ハンナの三人を保護する軍隊の皆さん。
あのさぁ……。
これは後半で、彼らが生存者を募っていた真の理由が明らかになると合点行く展開ではありますが。
簡単に言うと、基地のリーダーであるウエスト少佐は部下に女を与えて安息させるために、生存者を募っていたので男は無用という。
・散りばめられるフラグの数々
ジム達は保護され、ちょっとしたいちゃつきも挟みつつ、
ウエスト少佐から状況を聞く事に。
基地から少し移動した先の施設を要塞化していて、
感染者が襲撃しに来ても安心だよみたいな内容です。
もうこの施設がこの映画のクライマックスの舞台になる事がまるわかりな露骨なフラグ説明。
更に、施設内には研究する為に感染者が一人鎖で繋がれて生け捕りされてます。
コイツきっかけでパニックになるんだろうなってすぐわかる。
この辺りはパニックホラー映画のテンプレでもありますね。
・ジムがバーサーカーになるまで
基地で安息の日々が送れるのかと思いきや、
女を寄越せと言い出す軍隊の皆さん。
これに抵抗したジム(と唯一良識的だった軍人の一人)は殺されそうになるものの、
ジムだけは上手く逃げ出す事に成功します。
そして施設の外でジムは飛行機が飛んでいるのを見ます。
割と重要なシーン。
そしてここから物語上の視点が変わります。
今までジムの視点で進んでいた物語が、ここから軍隊側からの視点に切り替わります。
そしてジムと戦うという展開になりますがこれが個人的にこの映画で一番好きな点です。
ここから先のジムは、まるでこの映画のメインの敵であるかのように描かれていきます。
特に、軍隊が一人ずつひっそりとジムに殺られていく描写とか。
そして案の定、基地内に生け捕りされていた感染者のせいで(というかジムが逃がすんですが)基地内でパニックが始まります。
後半のジムのバーサーカーっぷりったらほんともう半端じゃない。
ほんとどっちが敵なのかわかりません。
半裸で軍人を殺して回る姿は、ウエストが言っていた「殺しは人間の本質」みたいなセリフを体現してるのかもしれないです。
レイジウィルスの感染者は本能のまま殺しまくる訳ですが、
ジムもこの時点で対外的に見たら感染者とやってる事はほぼ変わりませんし。
なんならセリーナたちにすら、ジムが感染者なのかまだまともなのか判断が付かなかった為に、この二人からも攻撃を受けますし。
・エンディング
基地を脱出するも重傷を負ってしまうジム。
フラッシュバックと共に彼を一生懸命助けようとするセリーナたちの姿が描かれた後、
ベッドで目覚めます。
そんで、最後は救助隊の飛行機に向けて、地上から布を繋ぎ合わせて文字にしたメッセージを送ってエンドロール。
この手の映画で最後は希望のある終わり方ってのは、少ない訳では無いですがやっぱり良い気持ちになります。
本作みたいな明るい未来を想起させるような終わり方となると新鮮さもあります。
つっても続編の『28週後…』があるので希望も糞も結果的には無い訳ですが。
ちなみにこの映画、マルチエンディングです。
もう一つのエンディングでは、
基地脱出後のジムの治療シーンが少し詳細に描かれていて、
セリーナの奮闘むなしくジムは死んでしまうというもの。
これからどうする、と問うハンナに対してセリーナは「生き続ける」とだけ答えてエンドロール。
こっちはどちらかというとバッドエンドですね。
■まとめ
基地脱出後「28日後…」ってアイキャッチ的に時間経過が表示されるんですが、
これがなんかゲームのロード画面みたいだなと思いました(KONAMI)。
前半では、状況に突然放り込まれた主人公の視点から、
彼のサバイバルを追体験するような形式、王道のホラームービーです。
ところが基地に辿り着いてからは、まるでシチュエーションホラーのように全体の状況が描かれる形式にシフトする可変映画です。
後半のジムのバーサーカー状態の前では感染者は舞台装置と化します。
これは良い舞台装置化だと思いました。
無理やりでも不自然でも無く、必然性のある形で後半も感染者は活躍しますし。
なぁウォーキングデッドさんよ。
この手のホラーの王道要素はしっかり盛り込みつつも、
特に後半オリジナリティが随所に発揮されていてとても楽しめる映画です。
ちょっとしたギャグシーンみたいな小休憩もあるので観ていて疲れる事は無いと思います。
また、個人的に劇中に使用されている楽曲も結構気に入ってます。
アンビエントな感じのものから、いかにもイギリスらしいロックのものまでバリエーションが豊富です。
エンディング曲も好きです。
ゾンビ映画、というよりこれは恐らくモノとしてはウィルスパニックとかそっちな気もしなくもないですが、
とにかくこの手の映画の中ではかなり楽しめる部類です。
続編もありますし良い暇つぶしになります。
この映画は、下記の動画配信サービスで視聴する事が出来ます。
ではまた。