フォース・カインド(2009年・アメリカ) バレあり感想 宇宙人関係の映画の中じゃわりと異色?
モキュメンタリー調なんですが、ちょっと他のモキュメンタリーとは違った面白い手法が使われていてどんなテンションで観たらいいのかよくわからない映画でした。
『フォース・カインド』(原題:The Fourth Kind)
■概要
タイトルであるフォースカインドとは、J・アレン・ハイネックが提唱した接近遭遇の3分類という考え方を元に、一部のオカルト研究家なんかが提唱するUFO或いは未知の存在からの誘拐を指す第4種に由来しているそうです。
そんなタイトルがついてるのでこの映画、当然ですが宇宙人関連の映画という事になります。
舞台はアラスカ州ノーム。
ここでは謎の失踪事件が多発しているそうです。
この映画では、その失踪事件の謎に迫るような一面もあります。
全編にわたって、実際の記録映像と一部を再現したVTRを組み合わせて、宇宙人に遭遇した人達の顛末を描くみたいな感じ。
なので『仰天ニュース』や『アンビリバボー』の1コーナーを長編化させたみたいな感じです。
■感想
・モキュメンタリー作品としてはちょっと個性的
再現も何も全部フィクションなんだけどね。
モキュメンタリーは観ている側に本当に起きた事なのだと思わせるように色々仕込んで映画として形にしていくわけです。
モキュメンタリーと言えば有名なのが『ブレアウィッチ・プロジェクト』ですが、
ブレアウィッチ・プロジェクトの成功はその後の映画界に大きく影響を与えたと個人的に考えています。
低予算映画ならではの手法を一つの撮影方法として確立させた点。
POVという手法で撮影される映画がこの作品以降数多く制作されています。
POVという手法自体はモキュメンタリーに限らず、普通の映画の中でも頻出するようになりましたし。
ただこの一人称視点に関しては、FPSゲームの世界的流行も相互的な影響があるので全てが全てって訳では無いですが。
また近年はVRの登場で、より一人称視点というものがフォーカスされてきているので、POVという手法を用いた映像作品はますます増えるような気がします。
VRで手ぶれブレブレのあれを観たら余裕でゲロ吐きそうですが。
映画の形式自体もブームになりました。
『ブレアウィッチ・プロジェクト』以降『パラノーマル・アクティビティ』のようにファウンドフッテージ物が多く登場します。
そういう流れというか、背景があった事を踏まえて『フォース・カインド』を観てみるとちょっとそれらとは違う形式のモキュメンタリーなんですよね。
再現ドラマ(という体の)パートでしっかり有名どころの役者を使いつつ、実際の記録映像(という体の)パートを組み合わせる事でモキュメンタリーとして成立させるっていうごり押し感、俺は嫌いじゃない。
わざわざ映画の冒頭で、主演のミラ・ジョボビッチに「○○を演じたミラです」みたいな事を言わせて、念押ししているのも面白いです。
・内容はちょっとオカルト的なものが好きな人はかなり楽しめるかも
この映画は、要は「宇宙人に誘拐された人達」の記録映像(という体のフェイク)を追っていって、信じるか信じないかはあなた次第的なことをやるためだけの映画です。
ですが取り扱ってるのはそれだけじゃないです。
シュメール人は実は宇宙人だったみたいな部分であったり、
所謂古代文明が栄えた背景には宇宙人なんかが関与してるみたいな説ってかなり人気の高い俗説なんですよね。
作中でもちゃんとその辺りの説の一部を取り上げていました。
というか作中では古代文明(ここではもろにシュメール文明ですが)はそのまま宇宙人がダイレクトに関係した文明であるというのがほぼ確定する形になります。
この辺りを取り上げているというのは結構意外で面白かったです。
が、作品そのもののメインテーマにはそこまで絡んでないという。
古代文明の背景には宇宙人がいる説を取り上げたこと自体は面白いですが、
「宇宙人に誘拐される人間たち」を描いたモキュメンタリーにこれをぶち込むならもうちょっとうまいやり方あった気がしました。
・フクロウ
どんなに視力悪くてもどんなに頑張ってもグレイ型宇宙人はフクロウには見えねえから。
とか言ってますけど、実際作中でフクロウに似ているとされる宇宙人はグレイ型とかじゃないかもしれないですね。
でも、そもそもこの序盤から出てくる「フクロウの夢」って要素は、ちょっと無理やり謎を張り巡らそうとしていたような感じがして好きでは無かったです。
それも中盤どころかわりと序盤で「実際はフクロウじゃない」事を早々に明かしてしまうので、その点を予想しながら観るっていう楽しみ方があまりできませんでした。
・その他
記録映像に出てくるタイラー博士の外見が作中一番のホラー要素。
■まとめ
一風変わった作風のモキュメンタリーです。
宇宙人にさらわれたタイラー博士へのインタビューと、実際の記録映像という体のフェイクと、再現パートから成る映画ですが、ちゃんと起承転結の構造の中に納まった作りになっています。
ちなみに僕はこの映画初見ではマジで起きた事なんだと完全に信じて途中まではワクワクが止まらなかったことを覚えてます。
流石に終盤のタイラー博士宅で、警察官に監視される中宇宙船がタイラー博士の家に飛来するシーン辺りから「これフェイクだ」って気づいちゃいました。
保安官のオーガストがあまりにも察し悪すぎてな!!!!
タイラー博士も監視してた警官も「宇宙船が来て娘さらった!!」って言ってるのに、それでも最後まで博士は妄想に取りつかれてると信じて疑わない無能。
そして、映画が公開されてからしばらくして、「全ては嘘だったんだよノームの街のみんなも勝手に巻き込んでごめんね」みたいな声明が発表されて更にがっかりした思い出があります。
でも多分、映画観た後に変にググったりしなければ信じ切れるだけのクオリティにはなっているはずです。
この記事読んでくれたって事は変に調べちゃったって事ですが。
ただ、モキュメンタリーの一手法としてはドラマパートと記録映像という形式は面白いですし、クオリティも低くは無いので楽しめますよ。
ではまた。