ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(2019年・アメリカ) バレあり感想 怪獣バトル路線こそ怪獣映画の本懐。俺はそう確信した。
モンスターバース第3作目。
『GODZILLA(2014)』で不満点として挙げられていた点が諸々改善された結果、怪獣プロレス大好き人間達へ向けたラブレターのような映画に。
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
(Godzilla:King of the Monsters)
映画 パンフレット ゴジラ キング オブ モンスターズ 通常版 GODZILLA KING OF THE MONSTERS
ネタバレありの内容です。
■ストーリー
良かれと思って眠っていた怪獣を無理やり起こしたら世界が破滅の危機へ。
■感想
ゴジラシリーズ、というか怪獣映画というジャンルが好きな層に向けた作りになっているこの映画、怪獣映画に期待する要素次第で好みは分かれそうです。
≫結局のところ怪獣映画に何を求めるのかって話。
正直、話の構成と内容に関してはかなり大味な印象を受けました。
人間が勝手な理屈で眠れるギドラさんを無理やり起こした結果、世界が破滅の危機を迎える今作。
ラドンとギドラ、そしてゴジラが戦う場面に対して人間が採ったアクションが新兵器オキシジェンデストロイヤー(初代ゴジラのアレと同じ効果を持つと思われます)を弾頭に積んだミサイルでみんな殺しちゃえ!という凄まじく病んだ作戦でした。
結果、宇宙生物で異常な再生能力も併せ持つ今作のギドラに対してはあまりダメージを与えられず、地球由来のゴジラは瀕死になってしまい、
地球サイドのゴジラを一方的に人間が葬りかける事態に。
しかしギドラを止められるのはゴジラだけだという事がいよいよ確定付き、なんとかゴジラを復活させるためゴジラの棲み処である海底に沈む古代人の遺跡へ芹沢博士が核弾頭片手に突入、貴重な古代人の遺跡と芹沢博士の命を引き換えにゴジラは復活します。
ついでに芹沢博士が気合を入れ過ぎてバーニングゴジラ化、ギドラを圧倒して最後は体内放射と放射火炎によって文字通り粉砕して勝利する、というお話でした。
つまり人間の勝手な都合で瀕死に追い込まれたり強制復活させられたりするのが今作のゴジラ。
『ゴジラVSキングギドラ』におけるゴジラの扱いに近いものがあります。
それでも人間とは今のところ敵対する気はなさそうなハリウッドゴジラの懐の深さよ。
これに合わせて、ギドラ復活の原因を作り出したエマさんをはじめとしたラッセル一家の苦悩と前進が描かれる、いわゆる人間パートの話も絡んできますが、今作のゴジラの作風と噛み合っていないような印象を受けます。
僕はそれでもこの映画はかなり楽しめました。
自分の中での評価はかなり高めです。
僕は怪獣が暴れ狂う映画を期待して観に行ったからです。
小さな人間の命の価値など微塵も気にせず、ひたすら街を破壊して回って、気に食わないライバル怪獣と死闘を繰り広げる、そんな作品を求めてこの映画を観たからです。
で、今作は正にそういう映画な訳ですよ。
怪獣プロレスがまず一番にあって、それを大金つぎ込んで描く事に意義と価値があり、ストーリーは二の次で良いと思うんですよ。
実際、怪獣バトルが前提にあると考えると、このバトルを描く為にストーリーを後から肉付けした映画という印象を覚えると思います。
で、予告でもさんざん煽っていた訳じゃないですか。
今作はたくさん怪獣出ますよって。
その予告や事前情報を知った上で、あえてストーリーを求めてこの映画を観る人って多分そんなにいないんじゃないかと思います。
というかストーリーを中心に考えるというスタンス自体が怪獣映画に対するスタンスとしてズレてしまってる気すらするんですよね。
人の業の側面を描いた第一作目に対して、第二作目『ゴジラの逆襲』で怪獣プロレス路線というものが登場し、これ以降のゴジラシリーズのスタンダードな形式になりました。
この怪獣プロレスがゴジラシリーズの個性であり魅力の一つだと僕は思っています。
他のモンスターパニックとは一線を画すこの要素が、今作『キングオブモンスターズ』では前面に押し出されていて、それが気に入るかどうかでこの映画の評価は大きくかわるんじゃないかと思います。
≫歴代ゴジラシリーズに対するオマージュの数々と、"ゴジラらしさ"の強調。
逆にビックリしましたよこれ。今回そういう感じで来るのか!っていう良い意味の驚き。
歴代ゴジラシリーズ、というか東宝怪獣のテーマ曲なんかをアレンジしつつも使用している点がかなりテンション上がりました。
やっぱこれだろ!!感。
前作にあたる『GODZILLA(2014)』では、世界観の一新とゴジラのニューオリジンであるという印象を強く持ってもらうためなのか、いくつかのゴジラらしさが排除されていました。
印象的なゴジラのテーマは終始流れる事無く、ゴジラの鳴き声はヤンキーの車から漏れ出すウーハー効かせた低音にリングモジュレーターをかけたみたいな声に変更され、登場するライバル怪獣はムートーという新規怪獣でした。
そしてゴジラの登場シーンは映画全体の中でもかなり短い時間であり、
ギャレゴジは怪獣映画というよりも怪獣の出現という危機的状況の中で家族の絆が試されるという部分がメインの、準怪獣映画って印象でした。
それでも十分面白いし好きですけどね、ギャレゴジ。
それが今作ではもう完全に吹っ切れてますよね。
もはやゴジラシリーズを知っていて、東宝怪獣歴代作品も全て観ていて当然だよねと言わんばかりの歴代作品オマージュの数々と圧倒的なやってやった感。
今作の監督であるマイケル・ドハティがゴジラシリーズのファンである事も一因であはあると思いますが。
まず、ゴジラの鳴き声を日本のゴジラの声に準拠したもの+ギャレゴジの声といった感じに変更していましたね。
ハリウッド版のムキムキムチムチなゴジラも、馴染み深いあの声で咆哮するとやっぱゴジラだわコイツって思えます。
バーニングゴジラはVSシリーズ最終作の『ゴジラVSデストロイア』でメルトダウン寸前になっているゴジラの状態を呼称したものです。
今作のゴジラは芹沢博士に放射線で気合入れられすぎたのと、ギドラによって空中から放り投げられ熱を帯びた事、あとモスラからも多分パワー注入してもらっていたっぽいんですが、この三要素によって一時的にこのバーニングゴジラになったっぽいですね。
なんにせよ異常なパワーを得てギドラを圧倒していました。
しかも、ギドラを攻撃する時に体内放射を使っているんですよね。
『ゴジラVSビオランテ』 と『ゴジラVSキングギドラ』での使用が印象的なこの奥の手的な技でギドラに決定打を与えているのが中々かっこいいというか、バーニング形態の体内放射とかいう完全にファンの妄想する最強攻撃みたいなノリがシンプルに好きです。
こうして見てみるとVSシリーズ要素が濃いめな感じなんですね今作。
しかし、登場怪獣のチョイスからするとベースになったのは『三大怪獣 地球最大の決戦』です。
この『三大怪獣 地球最大の決戦』で有名なのがモスラ、ゴジラ、ラドンの三者が会議をするシーンです。
怪獣達の会議内容を小美人が人間に通訳するという、なんともエキセントリックなこのシーンですが、
怪獣と人間の異種間コミュニケーションという要素は今作で登場する重要なアイテム、オルカに引き継がれているんじゃないかと少し思いました。
てかオルカって名前もちょっとCG円盤怪獣のアイツっぽいよね。
そしてギドラですが、歴代最強クラスの強さでしたね。
設定ベースとなったのは恐らく『モスラ3 キングギドラ来襲』のグランドギドラだと思われます。
他の怪獣をマインドコントロールしている感じとか。
平成モスラ三部作からもネタ拾ってきてるって相当アレな人だと思いました。良い意味で。
今作のモスラは、その平成モスラ三作っぽいデザインになっている気もしますね。
好みが分かれそうですが、優しそうなモスラというよりもツンツンした感じで攻撃力ありそうな今作のモスラも結果的にかわいいからアリです。
あと、今作でモスラがゴジラの盾になるシーンは『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』でモスラがギドラを守ったシーンを連想させますね。
これはマジでシリーズ屈指の名作。ちなみに監督は平成ガメラシリーズの金子修介さん。
元ネタと守護対象の逆転が起きているのが面白いです。
他にも元ネタと立場が変わっているオマージュシーンがあります。
モスラが倒れるゴジラにパワー的な何かを与えているかのようなシーンがありますが、あれ多分『ゴジラVSメカゴジラ』で、ファイヤーラドンがゴジラにエネルギーを与えていたシーンのオマージュなんじゃないかと思います。
今作のラドンさんは粋な立ち回りで悪役道を歩んでいるので、その役割を担ったのがモスラだったんでしょうね。
そして、逆転という点で一番印象深いのが、芹沢博士とゴジラの関係ですね。
≫キャラクターとして飛躍的に魅力が増した芹沢博士と、ゴジラとの関係。
芹沢博士は、『ゴジラ』でオキシジェンデストロイヤーを作り出し、自らの命と引き換えにゴジラを倒した人物です。
一方ギャレゴジに登場する芹沢博士は、名前だけを借りたキャラクターでポリコレに配慮したアジア人俳優枠みたいなポジションのキャラでした。
何をしている人物なのかもよくわからず、感情の読めない視線で何かをじっと眺める枠とでも言うべきでしょうか。
とにかく存在意義があまりなさそうなキャラクターだったんですよ。
ところが今作でこの芹沢博士が本当にキャラクターとして物語の中心に入ってきました。
怪獣の存在に理解を示しつつも、モナークの目的である怪獣の管理、或いは殲滅という部分も視野に入れた行動を選択せねばならないという難しい立場の人物です。
怪獣に対するアクションの取り方も大胆かつ慎重で、いざという時は自分の命を引き換えにしてでも目的の達成に邁進するという、かなり魅力的な人物である事が判明しました。
そんな今作の芹沢博士、オキシジェンデストロイヤーのせいで瀕死のゴジラを救うために命を落とします。
放射能たっぷりの核弾頭をゴジラの寝床へと届け、放射線でゴジラを一気に回復してもらってギドラを倒してもらおう作戦で、ゴジラの基に向かう事を自ら決意する芹沢博士。
前項でも元ネタとの逆転について触れてますが、一番印象的な逆転が起こっているシーンはここだと思います。
芹沢博士、初代ゴジラではオキシジェンデストロイヤーという凶悪な破壊兵器とゴジラの存在という二つの人類の業を背負い死んでいったわけですが、
今作の芹沢博士は、人類のせいで瀕死に追い遣ったゴジラを、人類の為に再び復活させるために命を落とします。
これもある意味で人類の業を背負っているようなものですよね。
身勝手な話です。
つまり初代ではゴジラを殺した人物が、ゴジラを復活させるために今作では死ぬんですよね。
しかもその手段が核爆発という、これまたなんとも荒れそうなチョイスで。
今作でゴジラの前に立つ芹沢が、核爆発の直前にゴジラに対して"Good bye,old friend"的な事を言っていましたが、露骨に意識してますよね、初代芹沢。
■〆
個人評価:★★★★☆
歴代ゴジラシリーズに対する無数のオマージュとリスペクトを作品に散りばめつつも、本筋と怪獣の存在意義は平成ガメラシリーズ路線なのが面白いですよね。
いやもうマジでせっかくのモンスターバースなんだからガメラも参戦させてしまえばいい。
東宝と大映とレジェンダリーのトリプルクレジットで世界中の怪獣映画ファン熱狂させようぜ。
ではまた。
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