ザ・マミー/呪われた砂漠の王女(2017年/アメリカ) ネタバレあり感想※noteに加筆修正版を投稿し、記事を移転しました。
感想記事はこちら↓↓↓
『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(The Mummy)
加筆修正前の記事が下記になります。
■Introduction
封印されしエジプトの王女アマネットをうっかり蘇らせてしまったニックは、スーパーパワーを持ったミイラと化したアマネットに執拗に追われる。
そしてロンドンは大騒ぎ。
■感想
ダークユニバースの第一陣を華々しく飾るはずだった本作は、結果としてダークユニバースという一大シェアードムービー企画そのものを停止させるほどの失敗作となってしまいました。
劇場公開当時から中々の不評っぷりで、僕自身もそんな前評判を聞いてしまった事もあり「配信とかレンタル来たら暇つぶし程度に観たらいいやつか」ぐらいの扱いに勝手に堕として観ず嫌いをしてしまいました。
そして一年が経ち、アマゾンプライムに配信が来ていた事を知ってようやく視聴できました。
正直言うと個人的には全然好きな映画でした。
モンスターバトルってのは、なんだかんだ言っても楽しいです。
ただ、叩かれて然りな要素も見えてきましたし、厳しい評価を受けるのも仕方ない部分はあるかと思います。
確かに、映画全体の空気感は少しおかしく感じました。
「一体これは何映画なのか」と、そう問いかけたくなるのもわかります。
まず、本作がリメイク作品であるという部分がそもそもの問題の根幹にあるのかなと少し感じました。
クラシックホラー作品である『ミイラ再生』というオリジンの作品が在り(続編みたいなのもたくさんあります)、
それをリメイクした『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』が在り、
その上での本作という形なので、リメイクの上書きみたいな状態になっています。
※調べたら他にもいくつかリメイクが存在するみたいですが、有名どころとしてはやっぱりハムナプトラシリーズなんじゃないでしょうか。
本作は特に『ハムナプトラ』から演出面で影響を強く受けているように感じます。
砂塵の中に浮かび上がる人間の顔、生者のエネルギーを吸収し肉体を取り戻すボス枠のミイラ、異様に湧き出るムシ、この辺りはモロにハムナプトラから抽出してきています。
つまりオリジン作品では無く、そのリメイク作品から演出面でオマージュを持ってきているという事です。
ここがまず本作の全体のテイストをおかしくしている要因のひとつです。
『ハムナプトラ』と言えば、ホラームービーというより一種の冒険活劇に近いテイストの作品です。
かなりポップな作風ですし(ミイラは全然グロいけど)、笑える要素も多いです。
そんなポップな作品から要素を引っ張ってきている一方で、本作はオリジン作品のようなホラーテイストも取り入れようとしてるように感じました。
しかし、オリジン作品である『ミイラ再生』は、ホラーでありながらも悠久の時を経て尚も王女を想う悲しいミイラ野郎イムホテップのダークな恋愛劇といった、かなり個性的な作風でした。
『ハムナプトラ』でもこの設定は採用されていましたが、本作では恋愛劇の要素は薄いです。
言ってしまえば、申し訳程度にオリジンとすり合わせたかのような形で採用されています。
即ちそれがセテパイやらその辺りの設定なのですが。
その上で最大の問題なのがダークユニバースそのもののスタンスというか、方向性だと思います。
ダークユニバースは、ユニバーサルモンスターを単に現代リメイクするのではなく、それらが一堂に会してのお祭りモンスターバトルを展開させてしまおう!という目的があるみたいです。
ホラームービーの怪物たちでアベンジャーズをやろうみたいな。
要はそもそもモンスターバトルに重きを置いているっぽいんですよ。
本作『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』でも、モンスターバトル要素はかなり強いです。
というかモンスターバトルムービーです本作。間違いなくこれがメインです。自信があります。
終盤、死の神セトさんと憑依合体したニックがアマネットを圧倒する展開はまさにモンスターバトルそのものでした。
そこには確実な興奮が存在してますし、主人公覚醒という展開は王道で最高に昂ぶるパターンなのは事実です。
実際、僕はもうワクワクが止まりませんでした。
ちなみに中盤くらいにさらっと登場するジキル博士も、バトルモードよろしくハイド君を解放して圧倒的変質者パワーを見せつけていたり、総集モンスターバトルへの布石は要所要所に見られました。
ここでチラッとこの映画の本質が見える訳ですが、観ている側としてはこれすら混乱の一要素になってしまうんだと思いました。
つまり、この映画がモンスターバトルがメインだという事が判明するまでの過程に、あまりにも多くの要素が混在しすぎているのが問題なんだと思います。
ホラーや冒険活劇に寄り道しながら、演出面に過去作へのオマージュなんかも投入し狂った結果、中途半端に様々な要素が混在しただけの謎映画みたいな評価が生まれたんだと思います。
なにがしたいのかわからない、というよりもやりたい事をやるまでに寄り道が多すぎる、と思ったわけです。
しかも本作が恐らくやりたかったのであろう映画のテイストと、ダークユニバースの方向性が噛み合ってないという。
しかし、これもバランスの問題なのかと思うと惜しく感じます。
どこかの要素が突出しすぎているのか、或いは薄味すぎるのかそれは分かりませんが、もう少しこれらの要素がバランスよく配分されていたら、評価もかなり変わっていた気がします。
ところで、『ヴァン・ヘルシング』という映画が存在します。
恐らく、恐らくですけど、
ダークユニバースがモンスターバトルでいこうとしていたなら、その方向性の正解が全て詰まっている映画がこの『ヴァン・ヘルシング』だったんじゃないかと思います。
或いは、今後展開していくのであろう各作品でそれぞれ別の要素の映画として小出ししつつ、最後にモンスターバトルムービーとしてデカい一撃を放つ予定だったのかもしれません。
そう考えると、ダークユニバースの初陣を飾る『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』がなぜこれほどまでに混乱した作風になってしまったのか、ちょっとだけ見えてくるかもしれません。
■まとめ
マーベルシネマティックユニバースが大成功し、ヒーロー路線でDCがエクステンデッドユニバースでこれを追走し、
レジェンダリーは怪獣総進撃よろしくなモンスターバースをスタートさせ、いずれも一定の成功を収めています。
シェアードユニバースというスタイルがひとつの大作映画の主流となる中で、ダークユニバースはその出鼻を大きく挫かれ、今では第二作目に予定された『フランケンシュタインの花嫁』のリメイク版の製作も滞ってしまっています。
でも、ダークユニバースは捨て置くにはあまりにも勿体無いと思うんですよ。
『フレディVSジェイソン』や『エイリアンVSプレデター』、日本でも『貞子VS伽椰子』といった作品がヒットしたのは記憶に新しいと思います。
これ、なんでヒットしたのかってのを考えたら、単純に「あの怪物同士が戦うのかよ!?」みたいなところの一点突破に注力したからなんじゃないかと思っています。
あくまで単なる映画好きの僕や僕みたいな層にとっては、それだけで視聴に事足りる要素に成り得ます。
そういう意味でダークユニバースがモンスターバトル路線を目指したのは悪い選択じゃないはずです。
『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』は、終盤までまとまりが無いような印象を受けると思いますが、
見方を変えれば、最終盤でようやく何映画なのか判明する、非常にトリッキー且つ斬新な映画なのかもしれません。
ただ映画全体が混乱しているとは言っても、極端な話アマネットかわいい!かっこいい!かわいそう!だけでも語れるくらいシンプルな映画なので、もっと気軽に楽しむのがベストだと思いました。
ではまた。