グラビティ 繰り返される宇宙(2018年/アメリカ) バレあり感想 宇宙ヤバい系無限ループ映画だけど、設定的な面白さ以外にも沢山魅力が詰まった素敵映画。
「邦題のグラビティってなんだよ」って観た後に思いましたが、この映画で一番驚かされるたった1シーンにだけグラビティ要素が確かにありますね……。まさか強すぎる重力で空間が歪んでいましたみたいな意味合いでは無いでしょうし。
ちゃんとした映画にはちゃんとした邦題をつけた方が皆しあわせになると思う。
『グラビティ 繰り返される宇宙』
(ATROPA)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
時空の歪みが尋常じゃない宙域に入り込んでしまった宇宙船が無限ループに突入。
■感想
時空がゆがみ過ぎて空間が無限にロールアップされ時間の渦が出来てしまったような宙域に入り込んだ宇宙船とクルー達、そして現れた一人の男が協力してなんとかループから抜け出そうとする映画。
70分という短い上映時間の中でその設定を描き問題解決に奔走するキャラクター達の姿を描き、ついでに主人公コールの過去回想まで描く超高密度な作品でした。
ちなみにループ自体が描写として登場するのは冒頭とクライマックスの二回だけです。
何度も繰り返してゴールを目指す系では無く、何巡もしている内の1パートを中心に描くタイプ。
なので途中までは観ている側も登場人物達も、これが初めてのループなのか何度か繰り返しているのか分からないままです。
中盤あたりで死にたくない一心で逃げたクルーの一人が乗る脱出ポッドが、近くの惑星の重力に引かれ、その惑星の環を形成しているのが実は全て脱出ポッドだった事が判明します。
この事で今まで無数にループしていた事が分かるのと同時に、クルー達がこのあと過去の自分達に衝突され死ぬ運命が確定してしまうような絶望感も一気に味わえて、
とても印象に残る良いシーンだと思いました。
画像引用元:『グラビティ 繰り返される宇宙』予告 https://www.youtube.com/watch?v=DLZRlciu3Ro
この手のループモノはループの仕組みや設定といった発想の一点勝負になりがちなイメージがあります。
この映画の場合は、コールの過去の出来事とその後悔をループ要素に上手く絡めていて、物語そのものの質もしっかりケアしているところが個人的に凄く好きなポイントでした。
コールはかつて刑事だった頃、妻モイラの弟でもある同僚を事件の捜査中に殺されてしまい、この出来事がキッカケでモイラと別れました。
時空間が繰り返される状況の中、コールはこの取り返しのつかない失敗と後悔を再開したモイラに語っていました。
その後悔の念が、無限に同じことを繰り返している宇宙船アトロパの運命の環から脱却してやろうという執念に繋がっているような印象を受けました。
コールは同じ事を繰り返さない為、何かを変える為に行動し続けます。
ループモノの多くは、最終的に誰かの為に主人公が何かしらを犠牲にするタイプの物が多いんですが、本作もこのパターンで結末を迎えました。
過去と現在の時空が再び重なり始め、過去の自分がアトロパへやってきた(=時空的には冒頭のコールのシーンそのもの)ので、コールは妻モイラを脱出ポッドで一人過去から来たコールの元へ向かわせます。
そして生き残ったもう一人のクルーであるサンダースと共にアトロパを"本来のループよりも早く"爆発させ、二人は船と共に犠牲になる事でループを終わらせることに成功します。
ただこのやり方だと、時空それ自体の歪みを解決している訳では無いため時間逆行が起きる状況は変わりません。というかそれを変える事は不可能だと劇中で念押しされてましたね。
物理的(っていう表現が正しいのかどうか)には変える事は出来なくても、運命の環からは脱却できたぞっていう、中々良いオチだったと思います。
そして、宇宙を舞台にした色々な作品の感想記事でこれまで再三に渡って言い続けてる事なんですが、宇宙空間と人工構造物の組み合わせは本当に最高だと思っています。
画像引用元:『グラビティ 繰り返される宇宙』予告 https://www.youtube.com/watch?v=DLZRlciu3Ro
この映画は船内を舞台にしていながら、わりと外の景観とかもよく見せてくれるので、とても良いです。しかもCGのクオリティも半端じゃないと思います。
しかもこの映画、宇宙船自体のデザインもかなり個性的かつリアリティのあるものになっていて、そういう細かい部分でのSF的なイメージへの拘りみたいな部分もしっかりしていて好きです。
そしてトドメにコールの過去回想で描かれる未来の地球の描写も、遠い未来の世界ながら丁度良い雰囲気を上手く演出していて、そこも好きでした。
総合力が高い映画ってイメージです。
■〆
個人評価:★★★★☆
発想の面白さと、そこに上手く物語を絡めて短い時間の中バランスよくまとめていたと思います。
ストーリーだけでは無く細かい設定や景観、デザインに至るまで全てにこだわりを感じさせてくれる良い映画です。
クルーの退場のさせ方や暴走のさせ方に、船内パニックを無理やりでも描いておこうみたいな強引さを感じますが、それ以外は全体的なまとまりもしっかりしていて、とても好きな映画でした。
この映画はアマゾンプライムビデオはじめ以下の配信サービスで視聴できます!
ではまた。