キャビン・イン・ザ・ウッズ(2012年/アメリカ) バレあり感想 何かが起きている事は分かっても完全に理解はできない、それが齎す不安定な感覚を楽しむ映画。
『アルカディア』という映画を観ようと思っていたところ、映画ブロガーのビックル三十郎さんからアルカディアの前身に当たる本作を教えてもらい、こちらを先ず視聴しました。ありがとうございます!
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[オーガナザイズド]
あの名作映画『キャビン』の原題と同じタイトルを邦題に冠して盛大に釣ろうとしているけど全く関連性は無い別の映画です。
あとパッケージがだいぶ嘘ついてます。
『キャビン・イン・ザ・ウッズ』
(RESOLUTION)
予告: ×
関連映画『アルカディア』の感想記事はコチラ↓↓↓
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
マイクは薬物中毒者のクリスを助けるため辺境の奥地へやってきてクリスを軟禁し一週間過ごす事にするが、二人の身に奇妙な出来事が次々と起こり始める。
■感想
ジャンキーの親友クリスから異常な動画が送られてきたので、彼を救うために添付されていた地図を頼りに奥地へやってきたマイク。
しかしクリスはそんなものは送ってないと言い張り、ついでに彼が住んでいた小屋周辺はインディアンの居留地で小屋自体も所有者に無断で使用していたことが後に発覚、しかもジャンキー仲間から狙われています。
マイクはクリスを一週間軟禁して無理やり薬物依存から抜け出させようとします。
色々とおかしな状況の下、クリスを拘束した小屋とその周辺で二人の身に巻き起こる奇妙な現象と謎を描いた映画です。
淡々とした中に一定の緊張感が漂い続けるホラーです。ドゥームメタルみたい。
映画が始まってしばらくは、過去に撮られたであろう奇妙な内容の写真や映像ファイルをマイクが時々発見して、二人でそれを確認するという出来事以外は特に動きが無いです。
中盤以降で二人が見る映像などが次第に二人自身を映したモノになり、やがてそれがリアルタイムの内容になり、まだ起きてない出来事まで映すようになります。
この不気味さは中々のものですが、それらが何を意味しているのか分かるまで、そして二人が動き始めるまでは単調に感じました。
ただ、そういう能動性の薄い内容をカバーするかのように高頻度で会話劇を繰り出してきます。二人の関係性や、何が起きているのかのヒントを織り込んで上手く退屈させないような作りになっていると思います。それでも僕は会話の多さに少し退屈してしまいましたが。
あと、マイクが自己中心的な偽善者すぎて、クリスとの会話シーンが描かれるたびに好感度下がっていきました。筋金入りのジャンキーであるクリスよりもマイクの方がよっぽど人間としてダメな感じがします。狙っているのでしょうか。
終盤で得体のしれない何者かの存在が浮き彫りになっていき、最後にはこの存在の視点を通して視聴者は二人の物語を観ていた事が分かります。
やたらカメラワークが単調で雑に思える箇所や謎の定点長回しにはちゃんと物語上の理由があったんですね。
作中ずっと妙なタイミングで画面にエフェクトがかかる瞬間があって謎だったんですが、この事が分かった時は結構ビックリしました。そういうのアリなんだなって。
そしてこの映画の結末、得体のしれない上位の存在が二人を襲う(っぽい感じで終わる)んですが、直前にマイクが「やり直させてくれ」と言っていたのがとても気になりました。
そもそも彼らは終盤入った辺りでは自分達が誘導され、物語を作らされている事を察していました。
マイクが出会ったキャンピングカーに住む老いたフランス人も、意味深に"はじまり・中盤・結末"というキーワードを繰り返して呟いてました。フランス人のシーンには他にも合わせ鏡が登場してましたね。
つまりこれ、もしかしたら初めての出来事では無いのかもしれないんじゃないかと。
他にも色々と意味深なシーンがあるんですよ。
真夜中に窓の外に立っていた謎の少女やマイクが洞窟で見た壁画、白シャツの三人組、そして「ここに来る人間は皆超常的な存在を探している」というフランス人が語っていた説など。
というかそもそも、何故あの得体のしれない超常的存在は二人を襲ったのでしょうか。
それまでずっと二人を眺めながら時々写真や本や記録映像でヒント的なものを与えていたのに最後には殺してしまうなんて。結末がお気に召さなかったんですかね……。
とにかく、深読みや考察の余地がとてもたくさん残る意味深すぎる終わり方をする映画でした。
■〆
個人評価:★★★☆☆
モヤモヤするけど何故か面白いと思いました。理解を超えた存在とそれが齎す混乱という性質の作品が僕の好みのひとつにあるからなのかもしれません。
不気味な出来事が起こりますが、その意図や理由は殆ど分からず翻弄される感じの映画。
ただ最後まで全て意味不明なまま終わらせず、あえてその一端を明かす事で人知の上に位置する事象・存在を意識させる事で、手に負えないヤバさみたいなものを描いているように思いました。
要はコズミックホラーのそれ。
この映画はアマゾンプライムビデオや下記の配信サービスで視聴できます。
ではまた。