ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(2016年/アメリカ) ネタバレあり感想 他人のふんどしで相撲を取った成功者の話。
『スーパーサイズ・ミー』観た後にこれ観て、複雑な感情に包まれるような戯れ方をしたかった。
『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』
(THE FOUNDER)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
■感想
革新的な手法を導入して、当時ではありえないスピードで上質なハンバーガーやポテトを提供していたマクドナルド。
そんなマクドナルドと出会い商機を見出した男レイ・クロックを中心に描かれる映画です。
タイトルのファウンダー=創業者ですが、これは当然マクドナルド兄弟です。
なぜレイが主役なのかと言えば、それはアイディアに感銘を受けただけの男レイがやがてマクドナルドそのものを乗っ取り、あたかも創業者のように成り代わっていく姿そのものに対する皮肉なんだと思います。
皮肉全開なタイトル。
マクドナルド兄弟が実用化した素晴らしいオペレーションと調理場の構成、レストランとしての拘りなどが描かれ、それに感動し本格的なフランチャイズ展開を目論むレイ。
次第にレイがマクドナルドの名前を使ってどんどん事業を拡大していき、最後にはマクドナルド兄弟からマクドナルドを乗っ取り、自分のものにしてしまうまでが描かれました。
そもそもレイがマクドナルド兄弟と出会うきっかけとなったのが、レイがシェイク用のミキサーの営業マンをやっていたからでした。
そんなレイが、後に兄弟に無断で粉ミルク式のシェイクを全フランチャイズ店舗に導入した事で二者の関係が完全に悪化するのが観ていて悲しくなります。
斬新なアイデアを生み出した兄弟が最後は報われる事も無く、逆にそこに目を付けたただのセールスマンが最終的に会社を手中に収めるという、資本主義らしさに全力だしてる内容ですが、これがおおよそ実際の出来事通りに描かれているというのがより驚きです。
この映画からレイ・クロックという人間に抱く印象は、いわゆる成金そのものであり、世界最大のフランチャイズチェーンを手掛けた成功者という印象は乏しいです。
しかもかなりストレートに嫌な人間として描いた裏に何かしらの理由があるのかと思いきや、成功者の必然として味方や仲間を裏切る結果を招く事はあるから仕方ないよね、みたいなスタンスに終始するので、印象が最悪なまま終わるのが逆に面白かったです。
フラットに事実を映像化した結果こうなったのか、レイを悪人寄りに強調して描いたのか、これはどっちなんでしょうか。
レイが成功を掴みはじめ周りからチヤホヤされるようになってから、それまで彼を支えていた妻に離婚を告げるシーンと、新たに出会った女性との進展を匂わす描写の配置が露骨だったりもするので、個人的にはちょっと悪意込みでレイの姿を描いているようにも思います。
とにかく大企業であるマクドナルドに一切の媚びが無い映画。
レイがマクドナルドを乗っ取り成功者となってから、レイの名刺に"FOUNDER"と文字がしっかり書かれている事を示すシーンがありました。
全国規模どころか世界規模にまでマクドナルドを発展させて尚、創業者では無い自分にコンプレックスを抱き狂って、こういう形ですら周りに自分が創業者だと思わせたかったのかもしれないですね。実情はどうだか分かりませんがレイも人間ですし。
とはいえ、今日当たり前のように見かける多くのファストフード店の基本システムを世界に広めた功績は事実であり、その商才は確かなものだった事も良く描かれています。
しがない営業マンからの成功物語という視点では確かなものが感じられる内容となっています。
だからこそ、レイを純粋に悪人として扱いきれないような心のモヤモヤが残ります。
そしてそんなレイのおかげで世界中に広まったファストフードとそのシステムが、やがて大きな問題を抱えはじめ、『スーパーサイズ・ミー』へと繋がっていくと思うと、また何とも言えない気持ちになります。
■〆
個人評価:★★★☆☆
マクドナルドがどのようにして世界中に広まっていったのか、その内情を克明に描いた映画でした。
店舗名がマクドナルドなので当然創業者の名前も世界中の人間が知っている中、 それを世界に広めた男の功績と、成功の裏にあった非情さが描かれている、ノンフィクションフィルムとしての質がかなり高い内容だと思います。
現在、以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。