テラフォーマーズ(2016年/日本) ネタバレあり感想 真剣にバカな事をやる面白さみたいなのってあると思う。
原作の面白い部分を実写化したタイプのやつ。
『テラフォーマーズ』
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
火星テラフォーミング計画で送り付けたゴキブリを駆除しに火星に向かったら、超進化したゴキブリとの戦闘になった。
■感想
原作漫画がそもそも真剣にバカやってる系のおもしろ漫画なので、そこを変に更にシリアスにしてみたり感動路線に走ろうとせずに、あの空気感にわりと近めな雰囲気のまま映画化されていたので個人的には謎の安心感がありました。
池田秀一がもはや隠す気も無いくらいしっかりしたシャアの声で世界観解説や昆虫説明ナレーションを決めてくれるだけでもう面白いですよ。
この実写版テラフォーマーズ、小吉と奈々緒の二人の地球での暮らしを描いたシーンがちょくちょく登場します。
その日本の描写がサイバーパンク全開、というかリドリースコットが『ブレードランナー』で確立した"サイバーパンクっぽい都市”のイメージをなぜか殆どそのまま再現したような街並みになっていて笑いました。
テラフォーマーズにそんなサイパン要素無いと思うんですが、もしかしたら海外目線を意識しての遊びだったのかもしれないですねこれ。一部の登場人物がやたらサイケな感じの風貌に変更されていたりしますし。
火星の過酷な環境の中で異常進化したゴキブリ”テラフォーマー”に対抗する為、人類はバグズ手術によって昆虫の能力を駆使できる人間を生み出し、この二者のバトルが魅力のひとつだった原作漫画。
実写版もやっぱりこの部分は大切にしていて、特に手術を受けたバグズ二号の乗員たちの変身シーンは、露骨に変身ヒーローっぽさを意識した描写や変身バンクまがいのカット、そして変身後の見栄切りなどを存分に盛り込んでいました。
ベースとなった昆虫の能力解説要素もしっかり踏襲されています。
超強力なゴキブリをトリッキーな固有能力で圧倒する瞬間の面白さと、逆にゴキブリのパワーの前に能力が通用せず返り討ちに遭う絶望感という、原作でも意識されていた両者のパワーバランスや関係性の要素も描かれていたと思います。
とはいえ、そんな原作漫画に寄せたからこその魅力以外には、特に惹かれる要素は見当たらなかったというのが個人的な感想でした。
実写版テラフォーマーズも面白いんですが、その面白さって原作漫画の面白さのそれであって、そこから実写版だからこその魅力を開拓できていたようには思えませんでした。
リアルな人間が演じるからこそ、その表情や動き、雰囲気で演出できるものがあるはずだと思いますが、この実写版はそこは切り捨てられたように、漫画のキャラクターを演じる事に終始している印象です。
むしろ実写にしてしまった事でシュールさだけが強調されるシーンが増えていて、ちょっとした雑コラ感すら覚える事もありました。
原作ではインドのITベンチャー企業社長の息子だったテジャスに相当する手塚というキャラが、メダカハネカクシのガス噴射能力で車両を加速させ、テラフォーマーの大群から逃げるシーンが特に絵面が雑で笑ってしまいました。
■〆
個人評価:★★☆☆☆
小太りで悪意ある不細工顔にデザインされた蛭間を山田孝之に演じさせたチャレンジ精神は好きです。
テラフォーマーズのバカバカしいけど真面目にそれをやる面白さは引き継がれています。
ただ実写にした意味はちょっと見いだせない、そういう意味では少し勿体無い映画だとも思いました。
現在、以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。