ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火(2012年/ロシア) ネタバレあり感想 オカルティックタンクバトルムービー。
ちょっと一旦邦画フェスは休んで、好きな戦車映画の話でもしたいなーって。
『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』
(WHITE TIGER)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
単機で戦車部隊を次々と壊滅させる謎のティーガーⅠ戦車に、破壊された戦車の声が聞こえるスキル持ちで不死身の男が挑む。
■感想
第二次世界大戦の独ソ戦末期、ベルリン侵攻を進めるソ連軍戦車部隊の前に、ティーガーⅠに似た謎の戦車通称ホワイトタイガーが単機で立ちはだかり、ソ連戦車が次々と撃破されるという事態が発生。
ホワイトタイガーの攻撃で全身の90%に火傷を負いつつも奇跡の復帰を遂げた記憶喪失の青年イワンが、専用カスタムされたT-34/85を駆り、強大な敵であるホワイトタイガーに対決を挑む、というのが大まかな内容です。
イワンは火傷の怪我が3日でほぼ完治し、その後に戦車の残骸の声が聞こえるという特殊能力を発現させます。
対するホワイトタイガー、人が操縦しているとは思えない挙動や、オートローダーでも載せてんのかってレベルの連続射撃を見せつけ、しかも一発の砲撃で相手を確実に撃破していく正に化け物のような存在。
このような両者の対決が描かれるので、一見すると独ソ戦を舞台にして能力バトルをやっているようにも思えます。
一方このファンタジー感の強い設定に対して、戦場の描き方や登場兵器のリアリティがやたらとハイレベルで、特殊な要素が介在しているにもかかわらず戦争映画らしさを損なっていない不思議な映画です。
巷ではガンダムっぽいとかよく言われています。わかる。
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CGで車両を再現しているシーンは殆ど無く、実機やレプリカなんかを用いて戦場を描写している感じで、特に戦車の残骸のリアリティが凄まじいです。
あと、やたらと多種多様な戦車が登場するのも、戦車戦目当てで観た人間にとってはぶっささる要素だと思います。
映画で実機のSU-100とかあんまり見れない気がします、そういうレア感も魅力的。
主人公が特殊スキル持ってますしワールドオブタンクス感すごい。
一方、肝心のホワイトタイガーは当然被せモノででっち上げた偽ティーガーなので、特に砲塔周りの形状の違和感が凄まじいんですが、これも異物感が不気味さとリンクして、ホワイトタイガーが普通の存在じゃないって事を感じさせてくれるようなプラス要素になっている気がします。
イワンとホワイトタイガーの二者だけが超常的な性質を持ち合わせている理由は、この映画のラストシーンでなんとなく理解できるかもしれないです。
単純にエンターテイメント性を高める意味でこういう設定を付与しただけでは無く、ホワイトタイガーとイワンは存在すること自体に意味を持たされている、然るべき存在として出現したようなイメージです。
恐らくこの映画は、戦争をある種の現象のように捉えているんだと思います。
目的を持って行っているように見えて、それ自体が本質であるような、そういう頭が疲れるロジックを提示している気がしました。
この映画のラストシーン、荘厳な大聖堂のようなところでヒトラーが、コントラスト効きすぎて顔の見えない鬱陶しそうな髪型した謎の男にインタビュー受けてるみたいな場面があります。
そこでヒトラーは「なんでドイツだけ悪者扱いなのか、この戦争はヨーロッパの理想を求めて始めたのに」的な恨み言を発し、「戦争に終わりも始まりも無い、戦争は原点だ」という言葉でこの映画は締めくくられます。
それはつまり人間がいる限り無くならない現象であって、善悪や勝敗の差異やそれを決める事は根本的に意味は無い、という解釈もできると思います。
独ソ戦の終わりを象徴するように停戦調停のシーンが終盤で登場します。
突然の終戦イベントな上に結構このシーンに時間が割かれていて、ストーリー上の意味が見いだせないんですが、これは逆に停戦調停そのものが無意味である事を暗に示している気がします。
そしてホワイトタイガーとイワンの決着は描かれません。
ホワイトタイガーは戦争という現象を体現した存在として、イワンは戦いの意志を体現した存在として、それぞれ戦場に現れたのかもしれないです。
抽象的な描き方をする映画なので解釈の正解は無いんだと思いますが、僕はこの見方がわりと馴染みました。
■〆
個人評価:★★★★☆
最終的な着地点が戦争を哲学するみたいな部分に落ち着くので、視聴直後の「すごい映画観ちゃった感」は相当なものですが、特殊スキル持ちの主人公と怪物戦車のバトルを中心に描かれるアクション映画という面白さも含むので、不思議な戦争映画だと思います。
最近アマプラでも観れるようになりました。
そのほか以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。