ブレードランナー 2049(2017年・アメリカ) バレあり感想 今年観た映画の中で一番好き
観た直後の今の状態で正常な評価するの無理だこれ。
だって俺はこの映画一番楽しみにしてたし実際めっちゃ良いと思ったからね!!!
国外での先行評価意外とよろしくないんですよね。
でもめっちゃ”ブレードランナー”してたじゃないですか!!
ホント思ってたより100倍くらい良かったですよ。
観た直後のこの妙に上がったテンションの感じを味わうの久しぶりです。
『ブレードランナー』(原題:Blade Runner 2049)
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品は今年公開された『メッセージ』もとても良かったです。
もう俺このおっさんのファンになるわ。
■あらすじ
かつてタイレル社によって製造された人造人間であるレプリカント。
彼らは人類の宇宙植民地進出を初めとする拡張戦略の中枢として、人類の奴隷として使役される為に生み出された。
しかしタイレル社のレプリカントは次第に人類に反目し、次々に事件を起こすようになっていた。
そして2020年の大停電(ブラックアウト)事件が決定打となりレプリカントの製造が禁止されたタイレル社は失脚、社で製造されていたレプリカントは全て”引退”、つまり処分される事になる。
しかしその後、タイレル社を買収したウォレス社によってレプリカントの製造は再開される事になる。
ウォレス社のレプリカントに対してタイレル社のレプリカントは旧型と位置付けられた。
旧型の引退の手引きを行うのは、通称ブレードランナーと呼ばれる専門捜査官達だった。
ロス市警のブレードランナーである通称”K”はある事件の調査の為に郊外の農場を訪れた。
そこには殺風景な農場に枯れた一本の大木、そして男が一人いるだけだった。
この男、サッパーは旧型のレプリカントであった。
Kはサッパーを処分した後、大木の近くにケースが埋められている事を発見し、本部でこれを調べる。
この女性の遺体を調査すると、帝王切開の痕跡が見られ、出産直後に亡くなった事が判明した。
だがKと彼の上司であるジョシ警部補は、遺体をより入念に調べある事実を知る。
この女性の遺骨にはシリアルナンバーが刻印されていた。
それは彼女がレプリカントである何よりの証拠であった。
生殖能力を持たないはずのレプリカントが、子を授かったという事実が明るみになれば世界が大混乱に陥る事を察知したジョシは、Kに新たな任務を与える。
それは、どこかで生き延びているであろうこの女性レプリカントの子供を探し出して処分するというものだった。
■感想
・魂や人間性に対するテーマは健在
健在どころか更に発展させてました。
まず、主人公がレプリカントです今作。
前作もデッカードがレプリカントである可能性を示唆するバージョンが存在しますが、あちらはあくまで可能性の提示でした。
今作はもう明確にレプリカントです。
スキンジョブ(皮被り)とかいうクソ失礼なあだ名まで付けられて署内でも虐められてます。
さて、そんなレプリカントのKには恋人がいるんですが、
その恋人は実体としての人の肉体を持たないAIのジョイちゃん。
Kの前に現れるときはホログラムで登場します。
右がジョイちゃん。
上のYouTubeの予告最初観た時は意識もしてなかったんですが、どう見ても恋人。
流石にKとジョイちゃんがエッチする時は人間の女の子にホログラムを同期させてました。
どんな気持ちで観たら良いのか全くわからない迷シーンでした。
割と感動的なシーンなんですけどね。
ジョイちゃんはAI技術が現実のものになった現代だからこそ投入された新要素だと思いました。
人造人間には果たして人間性が宿るのかという所から更に進んで、
人工知能には人間性が存在できるのかみたいな領域まで一気に来た感じ。
アンドロイドとAIが恋人っていう設定と描写がいきなり『ブレードランナー』で提示したテーマそのものを表してる感じがして面白かったです。
より現代的な解釈が多様に含まれていると思いますし。
そして、人間と人造人間の差は何なのかという部分も、より明確に提起してきました。
ネタバレ含みますが(タイトルにある通りバレあり感想記事です許して)、
今作のストーリーをやんわり書くと
Kがレプリカントの子供を探す為に調査を開始する。
→調査で見つかった謎の日付の刻印と、Kの幼少期の記憶にある木馬の玩具にあった刻印が一致。
→色々調査進めていって「俺がそのレプリカントの子供なんじゃないか」とKが勘繰りはじめる。
→結局自分はレプリの子供じゃない事がわかる。
こんな感じな訳ですが、
この過程の描写がもう中々拘ってます。
主人公Kを観てる側の僕ら観客に彼はどう映るのか、それを絶対に意識したであろう極めて人間的な描写が多数でてきますし。
そもそもレプリカント(人造人間)の子供という要素が魂や人間性に対するテーマそのものを表現してますよね。
そしてこのレプリの子供が今作の話の軸でもありますし。
ストーリーの基盤に作品のテーマをしっかりと置いていて、そこに対しての問いかけも盛り込んであります。
・世界観やビジュアル面、音響辺りについて
前作ではロサンゼルスの街しか出てこなかった訳ですが、
今作はロス市街以外に郊外や産業廃棄区域なんかも出てきます。
『ブレードランナー』で確立されたと言っても良いサイバーパンク的ビジュアルは勿論今作でも登場します。
相変わらず一部訳のわからない日本語とかも出てきました。
デッカードがDNA調査を行うシーンで、
DNAの解析をする機械から無能ボイス(VoiceTextで検索ゥ!)みたいな不思議な発音の日本語が聞こえて笑いました。
そう言った人気の要素は勿論、予告でも見られるようにディストピア感丸出しの郊外の描写もたくさんありました。
デッカードが住んでる街や、ロス郊外の孤児院など、ロス市街とはまた違った雰囲気でそれぞれが描かれています。
この作品の世界がどんな事になっているのか、よりイメージとして分かりやすくなってます。
ただ相変わらず宇宙側の描写はありませんでした。
植民地惑星とかの描写があるのって『ブレードランナー ブラックアウト 2022』だけなんですよね。
機械類や乗り物あたりのデザインもかなり面白い事になってました。
劇中時間でも前作から40年経っている訳ですが、意外と進歩してないっていう。
カメラズームする時のジジジ……みたいなあの独特のSEすらも健在。
放射能汚染とかで結構な地域が壊滅してたりするので当たり前っちゃ当たり前なんですけどね。
カメラとかに向かって「拡大」「更に拡大」って発声命令するやつもしっかりやってます。あれ好き。
ズームの処理速度は流石に遥かに早くなってました。
そして音響に関してですが、
マジでえげつねえ。
これはもうホント、ホント劇場で聴いて欲しいです。
マジでえげつねえ。
これ以上の表現が見つからねえ。
・ラストバトル要らなくねって思ったけど実はそんな事ないかも
Kは最後ウォレス社の新型レプリカントのラブさんと猛烈な戦いを繰り広げる事になります。
で、このラストバトルなんですが
前作を越えようとも並ぼうともしてない感じでした。
むしろ全く別の描き方というか、Kもラブもレプリカントである点が活かされるようなバトルシーンだと思いました。
というのも、ラブちゃんはこの時点までに新型のレプリカントとして徹底的にその性能が描かれてました。
めっちゃ強いしある程度の柔軟性がある(嘘を付ける)上にウォレス社の命令を絶対順守する、言わば理想的なレプリカントとして描かれていたように思います。
一方のKはこの時点ではもう自分は特別な存在では無いただのレプリカントであると分かってる状態です。
それにも関わらずラブに勝負を挑み、救わなくてもいいはずのデッカードを救い出し、
偽装工作をしてデッカードが娘に会えるようにしてあげます。
これまで以上に極めて人間的な部分が表現されてます。
また、前作のネクサス6型レプリカントであるロイ・バッティとネクサス8型のラブの対比として観ても面白かったです。
この対比を一番明確に表す意味で、このラストバトルは必要だったのかなって思いました。
あと、
二人が必死に戦ってる間映像端で必死に溺れまいともがくデッカードが、プカプカたまに映り込むのが若干シュールで面白い。
デッカード今作でもそういう感じなのを貫いてくれて嬉しいけどさ。
最後にはレプリカントに助けられるっていうシチュエーションも含めて。
・前作でやんわりとしていたところに解釈を与えていた
というかレイチェルに関してですが。
前作の時点でレイチェルは他のレプリカントとは違う特別なタイプとされていましたが、
何が特別なのかは明示されませんでした。
劇中描写などから、ネクサス6型のように極端に短い寿命が無いという点が特別であるというところに落ち着いていましたが、
今作で、子供を産む事の出来るレプリカントであるという点が特別出会った点が明らかに。
なんなら、デッカードに恋したのもタイレルじいさんの思惑によるものだったという事になりました。
この部分なんとも言えない気持ちになりました。
デッカードへの恋心は レイチェルの人間性を表す要素として描かれていたように思っていただけに、
今作でこの設定が登場した事で前作のレイチェルのあれこれに対する解釈というか見方が良くも悪くも変わってきますね。
・その他
折り紙おじさんことガフさんが、信じられないくらいおじいちゃんになってた。
ていうか出てくるとは思わなかったです。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画『メッセージ』の感想記事の時に、
この伏線すっげえええみたいな事書いたと思うんですが、
今作もその手腕は健在でした。
観客にもK自身にも、最後の最後まで彼がレプリカントの子であると思わせて(というかもうそれ前提みたいに話を進めて)最後で裏切って来たり、
本物のレプリカントの娘であるステリンが、Kの記憶を見た時の描写だったり、
とにかく仕掛け方が今作も上手いです。
■まとめ
あのブレードランナーの続編なので、
どんな方向性で攻めてくるのかと楽しみにしていました。
結果としては個人的に期待を遥かに上回ってました。
テーマとしては前作同様に人間と人造人間の境とは何ぞや?ってところをしっかりと今作もフォーカスしつつ、更に新たな要素を盛り込んでいました。
ビジュアル面音響面共に前作を意識しつつもパワーアップしてます。
個人的にレイチェルに与えられた新設定以外に嫌いな部分が見つからないんです。
強いて言えば前作同様、退屈に感じるシーンが多いかもしれないんですが、
あれも”ブレードランナー感”を演出する為にわざとやってるって直ぐ気づくはず。
また、今作は微妙にではあるのですが、更なる続編を意識したような描写も散見されました。
レプリカントのレジスタンスたちが立ち上がる正にその瞬間がこの映画のクライマックスですし、ウォレス社の社長さんは結局どうなったのかとか描かれませんし。
続編は個人的に無くても良いと思いますが、やるならぜひやってほしいです。
とにかくオススメです。
あと、これから観に行くなら前作『ブレードランナー』は視聴済み未視聴問わず絶対観ておいた方が良いです。
その方が話がスッと入ってきます。
また、今作の前日譚にあたるショートフィルムが三作品、こちらはYouTubeで視聴できるので観てみるとより楽しめると思います。
むしろこれ前提みたいなところある。
※2017/11/01追記
考察崩れな記事も書きました。
長いわりに大したこと言ってないんですけどね。
この映画は、下記の動画配信サービスで視聴する事が出来ます。
ではまた。