ジグソウ:ソウ・レガシー(2017年/アメリカ) バレあり感想 人体破壊だけの映画シリーズでは無かったことを、少しだけ思い出させてくれた。
いつの間にか新作が作られていて、いつの間にかアマプラで配信されてた。
あのSAWシリーズの最新作。
(Jigsaw)
ネタバレ有りの感想記事です。
■ストーリー
ジョン・クレイマー主催、死のゲームの模様をお届け。
■感想
第一作目の『SAW』はシチュエーションスリラーの名作です。
見知らぬバスルームで目覚めた二人の男、アダムとゴードン医師。
脚には枷が付けられ、手ノコが二本。バスルームの中央に横たわる老人の遺体。
突然放り込まれた意味不明な状況の中、仕掛人たるジグソウからゲームのルールを言い渡される二人。
二人はゲームに従い、命を賭けるのではなく、生存の道を探し知力を巡らせ奮闘する、そして一方、警察もジグソウを追って捜査の手を詰めている、
という概枠の中で展開される心理戦とサスペンス。衝撃的すぎるラストシーン。
シリーズ化されて以降もこの第一作目を超えるものは登場しなかったと僕は思っています。
二作目以降のSAWは、続編に進むたびにサスペンス的な要素は控えめになり、グロテスクな人体破壊要素が強く前に出るようになります。
スプラッタ要素、グロテスクな人体破壊の数々は、本来SAWの見所では無く、言うなればおまけだったはずです。
それがシリーズを追う毎にどんどん人体破壊への追及を突き進め、いつしかグロテスクな映画の筆頭のような扱いを受け、そんな印象を大多数の人々の中に残したまま、シリーズは7作目で幕を閉じました。
そして、劇中時間では『ソウ ザ・ファイナル』からおよそ10年ほど経っている時代を舞台にした新たなSAWシリーズの第一作目が本作『ジグソウ:ソウ・レガシー』です。
現実世界でも7年という休止期間を経ての再始動ですが、7年という歳月は人間に冷静さを取り戻させるのに十分な時間であるという事が、本作を観るとよく分かります。
SAWシリーズ全体の印象として強く残されてしまった人体破壊という要素もそれなりに用意しつつも「死んだはずのジグソウがなぜ死のゲームを再開したのか」という謎を大きくフォーカスした作りになっています。
死のゲームが再開された謎を追う検視官や捜査官達と、ゲーム参加者の二つの視点で進められる本作。
死のゲームの参加者たちと検視官たちのシーンは同一時間軸の物語では無く、実はゲームのシーンは10年以上前のジグソウが最初期に行ったゲームの光景だった事が明かされます。
検視官たちの時代に起きていた死のゲームは、まさしくこの最初期のゲームの再現を後継者の男が行っていた、というオチです。最近アメリカの人気SFドラマで見たやつだ!
過去と現在の時系列をあたかも同一時間軸上の話である風に描いてミスディレクションさせるというやつです。
ジグソウが実は生きていた、という最高に萎えるオチでは無くこういう仕組みを利用してジョン・クレイマーを再登場させたのは上手いと思います。
しかし、死のゲームの内容で少し気になったものがあります。
過去作でジョン・クレイマーは一方的な殺戮となるような、生存性の殆ど無いゲームを否定しています。
しかし、今作で描かれるゲームの中に一つだけ明らかに助かるヴィジョンが見えないゲームが存在していました。
これです↓
ジョンの甥を間接的に殺してしまった男に課されたゲーム。
赤い螺旋上のブレードが高速回転する中、中吊りの身体はゆっくりとこの円筒の中へ降ろされていきます。
円筒の中央にバイクのブレーキがあり、これを握り込むことでブレードの回転は止められるという仕組みのようです。
ブレーキを握り込む為には身体が円筒の中深くに入り込んだような状態になる必要があるのですが、作中では明らかにブレーキに手が届かないような位置に男が差し掛かった段階で身体を切り裂かれて絶命してしまっていました。
最初期のゲームという事もあり、ジョンの設計ミスの可能性もありそうですが、兎に角このゲームだけ頭一つ抜けた理不尽さを持ち合わせています。
そこが少し気になってしまいました。
また、クライマックスでジグソウの後継者として真の姿を現したローガン検視官が、捜査官ハロランにしかけたレーザーカッターのゲームも理不尽です。
そもそもローガンが装着していた装置は偽のレーザーカッターであり、最初からこのゲームに命がけだったのはハロランだけだった、というのはお粗末さが漂います。
こういうのは意外性とはちょっと違うんじゃね?
ついでにローガンはハロランの事を殺す気満々でこのゲームを仕掛けているっぽいですし、前述したジョンの否定する生存性の殆ど無いゲームそのもののように思えます。
ローガンが実はジグソウの仲間だったというのはとても衝撃的な展開でしたが、
一方しか命のリスクは背負っていませんというゲームの内容が、これを相殺しにかかっていたように思います。もったいない。
■〆
個人評価:★★★☆☆
人体破壊のバリエーションの多様性がシリーズの見所になっていた事は間違いありません。
今作も人体破壊に謎の拘りを見せてくれるシーンは多々ありますが、グロとサスペンスの比率はとても良いバランスに仕上がっているように思います。
少なくとも、内容が無いグロ映画では無い、という事です。
ではまた。