ミスト(2007年/アメリカ) バレあり感想 序盤で霧に突入したおばさんと自殺した人達の存在が胸糞エンドに疑問を持たせる。
夏が来るのでホラーをたくさん観ています。
でもやっぱり戦争映画も観ます。
『ミスト』
(THE MIST)
結末の内容を含むネタバレがあります。
■ストーリー
突然街が霧に包まれる。
霧の中に何かいる。
スーパーに取り残された人々はなんとかこの状況を打破しようとする。
■感想
この映画、僕は何回観ても「序盤でスーパーから出ていったおばさん(TWDのキャロル役のメリッサ・マクブライド)が生き残れているのがどう考えてもおかしい」という変な方向でのひっかかりのせいで、あのラストシーンの胸糞鬱エンドがあまり頭に入ってきません。
今回改めて観直しましたが、やっぱりこの人が生き残れるのはおかしいって……。
おばさん以外で霧に突入していった人たちは皆一様に中腰くらいの姿勢までしか身を隠そうとしてませんでしたし、集団でしたし、目立つ分より死にやすいと思います。
だから、もしかしたらあのおばさんは霧に突入して直ぐ匍匐前進でもし始めたのかなとか、すぐにどこかに隠れてしまったのかなとか、偶然にもスーパーを出てすぐ軍に救出されたのかなとか色々考えますが、
どうにもしっくりきません。
仮に軍隊が付近まで来ていたのなら、むしろその軍属たる人間が多数籠城していたスーパーと隣接した薬局まで来てくれるんじゃないですかね……?
流石に居場所くらい予想付くと思います。
そもそもMPがスーパーにいるだろうな的な感じの予想の元、休暇に浮足立つ三人の軍人を見事に見つけ出していますし。
結局のところ、息子を殺してしまった主人公の判断が結果として大間違いだったという胸糞に繋げる為の一要因でしかないと思ってしまうんですよ。
何が言いたいかというと、まるで映画のオチに使われるために霧の中に突入していったかのようなおばさんの存在が物凄い違和感を生んでいてこの違和感でオチのインパクトが霞んでいるという感じの話です。
また、作中で自ら命を絶ってしまうキャラが少なからず存在します。
複数に渡って印象的に描かれる自殺の描写は、ともすれば「霧の中から妙な生物が襲ってくる」という狂気全開意味不明な状況下において、
心の平定を保つための究極の方法として、どこか肯定的な印象を僕は受けていました。
実際そんな状況下に放り込まれたら、発狂してもおかしくないと思いますし。
そうなる前に、人間として死ぬという一つの選択肢のような感じで「妙な生き物に殺されるより、いくらか穏やかな死に方を選ぶ」というのは、どこか理に適っている部分もあるんじゃないかとちょっと考えたりします。
故にラストシーンで、ガソリンが無くなるまで車を走らせ、とうとう霧を抜けられず息子含む同乗者御一行を拳銃で撃ち殺した主人公の行動は、
彼がその時まで観てきた光景と人々の選択を考えたら、理解できると言いますか、
むしろ主人公の自分一人は妙な生物に殺される道を選択するという部分がとても勇気があって、若干こちらの方が胸に来る感じがありました。
拳銃で同乗者たちに安らかな死という選択肢を行使した直後に霧は晴れて、
軍隊が妙な生物の掃討作戦を繰り広げ、序盤に霧の中に消えた異能生存体ばりのおばさんが無事に子供達と再会して優雅に救出されている様を眺めることになる主人公。
その光景を観て発狂しかける主人公というオチは確かに、「なんだこのオチ胸が苦しい」ってなりかけますが、
果たして本当にこれは胸糞鬱エンドなのかと、ちょっと思ってます。
理不尽すぎる不幸な偶然の重なり合いとで胸糞エンドまで駆け足していく『ダンサー・イン・ザ・ダーク』みたいなやつの方が、やっぱりスッとテンションが落ちる感覚があって、個人的にはダメージがデカいです。
結局これは、胸糞の好みの話ってだけかもしれません。
あくまで僕個人の感想です。
■〆
個人評価:★★★☆☆
後悔、やらかしてしまった感で胸糞エンドに持ち込むタイプの映画ですが、
やっぱり異能生存体おばさんが醸し出してしまった違和感と、主人公達自動車で脱出を目指した組のその時点での合理的判断の結果のあのオチという点で、少しダメージが緩和される感じが在ります。
正直言えば、オチ云々よりもそこに至るまでのパニックホラー映画としての出来映えの方に注目するべき映画なんじゃないかと思ってます。
あと宗教おばさんの死に様はいつ見ても爽快。これだけは真実。
ではまた。
↑ 有名な鬱エンド映画三連星。