エリジウム(2013年/アメリカ) ネタバレあり感想 意外性ゼロのストーリーだけど近未来感の演出にしっかり力入れてて好き。
金かかってそうなSF映画に弱い。
『エリジウム』
(ELYSIUM)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
宇宙に逃げた金持ちが独占する富を強制再分配。
■感想
環境破壊が進んだ22世紀の地球は荒廃、人類は宇宙に巨大な人口居住区域エリジウムを建設し、富裕層のみがそこで幸せに暮らす事ができる、という世界観。
そんな世界観なので当然主人公は貧困層出身で元犯罪者の日雇い労働者です。
仕事中に致死量の照射線を浴び、寿命は残り5日程度である事を悟り絶望した主人公マックス・ダ・コタ(マット・デイモン)は、責任を取るどころか自身を強制解雇した会社に復讐を誓います。
ここに同じ地球市民で裏社会の大物スパイダーの思惑や、エリジウム側に汚れ仕事を任されがちな傭兵クルーガーの反乱などもろもろが加わり、大方の予想通り最後にはエリジウムと地球の格差是正が、高度な医療マシーンの提供という形で描かれ幕を閉じます。
貧困層が反乱により革命を起こし勝利を掴む、というプロットも主人公が最期に死ぬという結末も、序盤でほぼ察する事ができる物凄く素直な映画。
ストーリーが素直なら、他の部分で差別化して個性を出してくるだろうと思っていたら、この映画の場合は上記のストレートなストーリーの肉付けが中々凝っていて楽しめました。
マックスが致死量の照射線を浴びる→パワードスーツを着用する→雇い主のお偉いさんの脳から重要なデータを盗む
→クルーガーと戦闘→クルーガーから逃亡→クルーガーによってマックスがエリジウムに連れていかれる
→エリジウムで捕らえられるも脱出に成功→後からやってきたスパイダー達と協力してエリジウムの基幹システムを造り変えようとする
→クルーガーと最終決戦→マックス死ぬ代わりにエリジウムのリブートに成功→ハッピーエンド
といった流れでした。
複数のストーリーを主人公を中心に描く映画なんて山ほどありますが、この映画の場合それらの見せ方がとても整っていると思います。
テンポも良いですし、誰が何を目的としているのかが分かりやすく中弛みもせず最後まで一定の面白さが維持されるイメージです。
ストレートな作りの映画なので突出した面白さや意外性というものは楽しめないですが、そういった内容の肉付けと時々の展開の面白さでずっとテンションが持続する感じでした。
作中に登場するドロイドや飛行艇のインダストリアル感全開なデザイン、エリジウムと地球の露骨すぎる技術・物質的な貧富の差の演出、主人公マックスの装着するパワードスーツの無骨さ。
個人的にはそういった要素の方がストーリーより楽しめました。
何とも言えない絶妙な線を攻めた、実際に将来使ってそうなリアリティある構造物やデザインのマシーンなんかが沢山登場します。観てるだけで楽しい系のアクションSFだと思います。
この映画の監督は『第9地区』で一気に売れたニール・ブロムガンプです。
その為、デザインセンスやSFと現実のすり合わせの上手さは流石の手腕だと思いました。
『第9地区』よりも予算をふんだんにかけている事は目に見えて明らかです。
『第9地区』が大ヒットした後、よく言われてた「この監督にもっと金かけさせたら一体どんな映画が出来るんだ?」を実現したのが本作『エリジウム』だと思うんですが、その結果生まれたのが素直なストーリーで無難に楽しませつつ、雰囲気や視覚の方面でたくさん盛り上げ所を作るというベクトルに進んだわけで、個人的にこれは大歓迎でした。
結局のところ、近未来アクションSFはエンターテイメントしてなんぼだと思ってます。
■〆
個人評価:★★★☆☆
予想内の無難なストーリーで内容面は及第点を狙いつつ、デザインや雰囲気作りに注力して近未来SF感そのものを楽しめるような作りになっている映画だと思います。
好みの差はあると思いますが、僕みたいなメカメカしいものが好きだったり宇宙に浮かぶ巨大な人工構造物が好きだったりする層はかなり楽しめる映画なんじゃないかと思います。
この映画は以下の配信サービスで視聴できます。
ではまた。